蕩ける夜 1
女ふたなり、カントボーイ注意あぁまたこの日か
と藤丸立香は大きくため息をついた。実を言うと彼女は、自分を除けばカルデア職員と医療班にしか知らな特異な体質をしている。しかもソレは女の子としてはどうしても隠しておきたいものなのだった。
「ダヴィンチちゃん、アレ来ちゃったんだけど」
「あっちゃ〜こんな時に?分かった、こっちで色々手配するから心配しないで」
通信後、マイルームのベッドに腰を掛けてそっとスカートを捲る。柔らかそうな、しかし筋肉のついた太腿と、豊満なヒップを覆うショーツが不自然に膨らんでいた。
(ホントいやになっちゃうな、月イチでこんなの生えてくるとか)
普段は慎ましやかなソコは月に二・三日ほど男性器の様な形になってしまう。それに加え性欲も増えてくる厄介な恒例行事は普通に生活していたときすらキツかったのに、極限状態な今起きてしまうのは勘弁してほしいと頭を抱えてしまうことだ。さらに今、立香はこの体質がバレてほしくない人がいる。もし相手が知ってしまえばと考えるとゾッとしてしまう。
「…それにしても、遅いなぁ」
ダヴィンチに頼んだのは下着の他、体臭をごまかすためのデオドラントスプレーや性欲を抑える薬など、コレを隠すために必要なものばかりなため始まってしまったらすぐに用意されるのだが、今日に限って数時間以上待っても届いてこない。他にトラブルでも起きてしまったのだろうかと考えていたところ
コンコン
とノックが聞こえてきた。
「はーい、なんかあったの?ダヴィンチちゃ」
「…サーセン、俺っス」
そこに立っていたのはこちらが待っていた技術顧問ではなく、彼女と戦うサーヴァントの一人であるマンドリカルドだった。
最悪なことに、彼は冒頭で言っていたこの体質がバレてほしくない人、絶賛片思い中の相手であった。
まずい、ぱっと見ではバレることはないだろうが今自分が履いているのは丈の短いスカートだ。屈んだり座ったりした際うっかり見えてしまうことを考えると一緒の部屋にいられるのはこちらとしては勘弁して欲しいことだ。それなのに
「その、ちょっとプライベートな内容なんで、部屋入って話していいっスかね?」
やめてくれ、そっちはちょっとした内緒話に来ただけかもしれないがこっちは内緒にしたいことがバレないか冷や冷やしてるんだ。というか何その目そらし色っぽいねじゃなくて何かやらかした?などと言えるわけもなく、彼をマイルームにあげ静かに戸を閉めた。
「……で、話したいことって何?」
と声をかけたところ、また目をそらしもじもじと俯きだした。これは相当やばいことに巻き込まれただろうと察し付いた時、ようやくマンドリカルドは声を出した。
「あの、今一部のサーヴァントの霊基に異常が出てて…」
「ああ〜ダヴィンチちゃんが来てないのそういうことか」
最悪なタイミングに当たったなと思いつつ彼を見つめる。…普段と違うところはどこも見当たらないように感じた。
「で、マンドリカルドもそうなっちゃってるってことでいいの?けど変なところとかないと思うけど…」
それを聞いた瞬間ビクリと体を震わせた彼は、暫し(だが長め)黙りこくった後意を決したような顔で立香の手を取り、泣きそうな声でとんでもないことを言い始めた。
「〜ッ今、俺、下半身女の人みたいになっちゃってて、どうすればいいか困って…」
「………え?」