蕩けるように(水遣いサイド)

蕩けるように(水遣いサイド)

黒庭勇者さん

『み、みずつかい、さん、わたし、その…はえ、ちゃった…』

 勇者様の寝室の隣。魔力を使って、そっと勇者様の夢を操る。悪いことをしているという自覚ないというわけではない。けれども、それ以上に我慢ができなかった。

「大丈夫ですよ、勇者様。ほら、身体を預けてください」

 甘い言葉を投げ掛けては、夢に直接変更を加える。勇者様が襲ってくるように、少しずつ淫欲の魔力を注いでいく。

『はぁ、はぁ、みずつかい、さん…♥️』

 興奮した勇者様が夢の中で私に襲いかかる。覆い被さるように、大胆に私に身体を擦りあわせる。

「っ…♥️」

 現実世界で発してしまいそうな媚声を抑えて、勇者様の夢をどんどん操っていく。

「いいですよ、勇者様。たっぷり、出してください」

『あっ、そんなの、そんなの、だめぇ…♥️』

 夢の世界で勇者様が達する。その瞬間、幻覚の快楽が私自身を襲う。

「ん、ぅ…♥️」

 必死に声を抑えて、勇者様に気付かれないようにする。これで、勇者様はまた一段と感じやすくなったはずだ。

 力なく地面にぺたりと座りながら、扉越しに勇者様の様子を伺う。

「みずつかい、みずつかいっ、あ、あぁ…♥️」

 くちゅくちゅと水音が響く。媚声を抑えることなく勇者様が自慰に耽る姿を扉越しに感じる。

 しかし、扉を開けることはできない。それをしてしまったら、私の計画が崩れてしまうから。筋肉がついて引き締まっている勇者様だって、れっきとした女の子。甘く蕩ける時間があっていいはずなのだ。とろんと、甘い媚声を出して甘えている時間を増やしてもバチがあたることはないはずだ。

 だからこそ、私は勇者様の抵抗感をなくしていく。いつか、私が触れてもいっぱい蕩けられるように、自分で快楽を求められるようにしていくんだ。

 ……でも、勇者様の媚声を聞いていると自分でするよりも濡れてしまうのも、事実だ。普段かっこよくて、しっかりものな勇者様が、抑えることなく欲望に蕩けている。見えてなくても、ぞくぞくしてしまう。

「だ、だめです、がまん…っ」

いますぐ勇者様の音を聴きながらしたい気持ちになるけれど、ばれないようにそっと部屋を立ち去る。そして私はひとりの部屋で、シーツを片手に秘処に触れた…



 勇者様から相談が来たのは数日後だった。恥ずかしそうに、相談してくる勇者様の姿を見るのは自作自演だとしても、嬉しかった。

「誰しも、抑えられなくなってしまう時はあるものです。そういうときは、我慢しない方が楽になりますよ」

 そうアドバイスして、勇者様に素直になることを教える。いいんです。勇者がどんなことを、していても。裏側で自分を慰めていたとしても、寂しい思いをしていたとしても、女の子らしさに不安を持っていても、勇者様は勇者様なのだから。いっぱい甘えて、楽になっていい。

 誰でしているか聴いたときに恥ずかしそうに言葉を止めた勇者様の姿が愛おしかった。 知ってるんです。勇者様が私でしていることは。けれど、私も勇者様でしているから、その、おあいこなんです。

 微笑んで、新しい夜が来るのを私は待った。



 次の夜、大胆にいっぱい夢を見せようと思った。現実でできないこともたっぷり、楽しんで、気持ちよくなってもらおうと新しい魔法も用意した。それは『夢想の入れ替わり魔術』だ。お互いを想っているもの同士が、夢の中で入れ替わることができる不思議な魔術だ。勇者様が気持ちよくなるために、私も練習した。

 目を瞑り、夢の中に意識を持っていく。夢の中の私は『勇者様』になっていた。しっかりとした筋肉で、すらっとした身体。すべすべで、凛々しくて、目付きがきりっとしている憧れの勇者様の姿だ。

「あれ、わ、わたし……水遣いさんに……?」

「勇者様、入れ替わっちゃいましたね……♥️」

 夢の中全体に広がる、甘い魔力でどんどん気持ちが高まっていく。我慢ができない。唇を、合わせる。

「だ、だめっ、いま、からだちがうからっ…♥️」

 勇者様が『私の声』で喘ぐ声を抑える。その仕草が可愛らしくって、もっといじめたくなる。

「遠慮しないで、勇者様が望むように、『私』らしく気持ちよくなってください…♥️」

「水遣い、らしく…?」

「勇者様が見たい水遣いさん、ですよ」

 その誘導に誘われるように、勇者様がゆっくり媚声をあげる。

「ゆ、ゆうしゃさまっ、ゆうしゃさまぁ、しゅき、しゅきでしゅ…♥️」

 大胆におっぱいを揺らしながら、快感を貪るように、『私』が動いていく。大胆で、蕩ける仕草。『私』でもあり『勇者様』でもある、その行動に心が奪われる。

「いっぱい、あまえて、きもちよくなってね…♥️ えんりょしないで、とろとろに、なって…♥️」

「はいっ、はいっ…♥️ ゆうしゃさまにあまえますっ…♥️」

 めいっぱい秘処を合わせ、お互いがわからなくなるくらいぐちゃぐちゃになる。

「きもち、いいのぉ、もっと、もっとぉ…♥️」

「イく、イっ、ちゃ、あっ、ひぁぁぁぁあ♥️♥️♥️」

 私が勇者様?勇者様が私?そんなのはどうでもよかった。一緒に気持ちよくなって、とろとろになって、いっぱい愛し合える時間がある。それが幸せなことが感じられたから。



「…っ、あ、ぁぁ…♥️」

 現実に意識が戻って、自分が横たわっていることに気が付く。地面がびしょびしょだ。今日、夜営をとっていなかったら今頃宿屋は騒ぎになっていただろう。

 ゆっくりと、意識をはっきりさせて、幸せを噛み締める。夢の中でも勇者様とひとつになれた。それが幸せだった。

 いつか、現実でもこんなことをしてみたい。勇者様にリードされて、いっぱいとろとろになりたいな。そんなことを考えていたら、キュンと身体が疼いてしまった。

「きょうは、ねむれないかもしれません…っ♥️」

 私は勇者様のことを考えながらゆっくりと横たわった。

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