落花情あれども流水意なし。
「射精しなくてもイけますよね?♡
だってあなた雌犬ですもんね?♡」
と明らかにイってる最中である震えを気にも止めずに引き続き耳に息を吹きかけたり、さわさわと肝心なところは焦らして乳輪を撫でたりする。
たったそれだけのことで切なげにヒンヒン鳴いてくるのだからもう笑みが止まらない。
こんなクソザコ雌に今まで僕は翻弄されてたのか?とそれこそ一周回って燃えてくるくらいに。
今までディルド扱いしてた僕に逆襲される気持ちはどうですか?
そんな僕のこと、ちょっとだけでもいいので意識してみたりしてみませんか?
なんて、伝えられないんですけど。
あ、8回目。またイった。
「ねえロレ公、なんで声、聞かせてくれないの?」
カイザーにはひんひん喘ぐのに?あんあん媚びるのに?
あーダメです。よくないよくない。怒りっぽいのは治せってカイザーにも言われてるのに。加虐心と虚しさが膨れ上がってきた。
1回目も2回目も全然声を出してくれなくて、好きな人のこと考えとけって言ってきて。またがってきて本当に自分勝手。
僕はそんなに器用な人間じゃないから。
自分とSEXしてる子のことを意識してしまうんですよ。ねえロレ公。ねえ。
「っ♡……ふッ、ぁ。汚い声、出すなって。言われて………」
いつもの低めな声が首を絞められたせいか、それとも単純に先刻までカイザーと激しいSEXをしていたかで掠れてて、それも色っぽく思えて。
毒牙に咬まれた哀れな生贄のように、ああ僕も末期だなぁと熱に浮かされながらもどこか冷めた頭で思ってしまう。
そして、どこまでもこの男は歪んでて削れてて異常で愚かで妖艶で、そしてそんな言葉をいくつ並べても100分の1にすらならないほどに宿痾に囚われてるのだなと思った。
今、彼がどんな顔をしてるのか純粋に気になった。
あぁ、膝の上に乗せるんじゃなかった。対面座位がしたいのに、顔を合わせてくれない。快感をえる度に僕の肩口に頭をグリグリと擦り付けてきて快感をありありと伝えてくる。
見たいけど、でも、それと同時に見えなくてよかったとも醜い嫉妬で思った。どうせ今、過去を思い出してる。
どうせ今、僕じゃない人のこと考えてる。
「ねえ、ロレンツォ。僕が誰か分かる?」
「ぇ♡、ネス、坊?」
「だめ。アレクって、呼んで。」
僕を見て。
「あ、れく♡」
「うん。そう、アレク」
僕のこと知って。
「あれく」
「アレク。僕はただのアレク。君はただのドン・ロレンツォ。覚えていて。覚えて。」
僕を認めて。
「……?」
「………好きって、言って。」
僕を好きになって。
「す、…き?」
「もっと」
僕を好きになって!
「すき」
「足りない」
僕を好きになって!!
「好き」
「もう一度」
僕を好きになって!!!
「……好、き」
思いっきりうなじを噛んだ。
僕の跡がつくように。
僕を思い出してくれるように。
「ねえ!僕のこと好きだって!言ってよぉ…」
あ、9回目。イってる時の振動が、快感を知らせる高鳴りが、こんなにも虚しい。
「あ゛ぁ〜♡やだ、だめ………♡
はは、ごめ、ん♡萎えるよな、気が効かなくてごめんなさい。
ぁ、あんあん。あーきもちー。
とか言ったほうが、んん♡いいの、OK?
アレク、mi piaci♡」
こんな中身のない好意で、強制した言葉で大きくなってしまう僕の愚息が恨めしい。
「…ッ!はは、ロレ公、ロレンツォ。」
やりきれない気持ちの八つ当たりに、うなじにキスをした。
ぺろぺろと噛んだところを舐めて、鉄の味と塩の味がして、普通に不味いなと思った。
「Ich liebe dich。」
なんてきたない僕の本心は、
僕の口の中で転がした言葉は、
きっと、君には届かないのでしょう?
5000万、それが君にとっての僕の価値なのでしょう?