落ちたあの日
──あの日の事は今でも鮮明に覚えている。
全てを失ったと言っても過言じゃないあの日を。
守るための力を求め始めたあの日を。
そして、心に深く深く傷を付け、今もなお突き刺さっているあの日を。
「その日は、よく晴れた1日だったんだ」
「祝日だったけど、両親の1人は仕事でいなくて、もう1人と一緒に家で家事の手伝いをしていて。」
「「今日は早帰りだから、そろそろ帰ってくるね」って言われて、鼻歌を歌いながら料理の用意をして。」
「帰ってきて、さぁ食べようかって時に、ふと気付いたんだ。」
「青く澄んだ空の端に、なにか光ってるものが近付いてきているって」
「それを両親と三人で見ていて。」
「───次の瞬間には気を失っていた。」
(沈黙)
「目を、覚ましたときには、腕が4本、首に巻き付いていて」
「その、先には、さきには、さき、には。」
(啜り泣く音が暫く聞こえる)
「両親だったものの、肉片が」
(吐瀉物がバケツに排出される)
「……何処まで、話したんだっけ」
「あぁ、肉片がこびりついていたところだったな。」
「……実を言うと、ここから先は殆ど覚えていないんだ。」
「連邦生徒会の人達が来て、保護してもらって、暫くしたらD.U.の仮設住宅に移されて……」
「そこで、SRTの先輩たちの活躍をテレビで見て、志願して、リハビリも受けて……」
「───あとは、知ってる通りだ。」
「こんなところでいいか?」
「……いやまぁ、気分はよくないけどさ……あんまり思い出したくない話だし……」
「……あとで焼き肉、奢ってもらうからな。小隊の皆も含めて」
「あぁでも、遠く離れてる私であれほどだったんだ」
「爆心地に近いシン先輩が生き残っている、しかも五体満足でだ。」
「……あの人、運命にでも呪われているんじゃないか?」