草蛇と毒蜥蜴

草蛇と毒蜥蜴

前編

動かせない身体をヤトウモリたちによって洞窟の奥へ引きずられていく。奥へ行くほどに、あの甘い刺激臭が嗅覚をくすぐる。ある程度引っ張られていると急に投げ出された。エンニュートが一瞥するとヤトウモリの群れはそそくさと出ていく。対峙する二匹、静けさだけの環境がこの緊張を煽る。ツタージャが注意深く、動向を伺っていると、ふいと一気に目と鼻の先まで近づかれた。驚いて身体を反らせようとしたが、それより早く腰に手を回され捕えられる。振りほどこうと身動ぎするが微動だにしない。何をされるかわかんない恐怖のまま、顔を見上げるとバッチリと目が合う。その後、ゆっくりと首元へ鼻先を近づくと勢いよく噛まれた。皮膚が破ける音と吸われていく感覚が小さな身体の中に響く。痛みに苦しむ彼女とは対照的に洞窟の主は、新鮮で若々しい血を楽しんでいた。ゆっくりゆっくりと啜り、味と反応を楽しむ。そのうち、荒かった息も絶え絶えになっていく。その様子を見ていた毒蜥蜴はあることを思いついた。

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