草書【Ⅰ】
稲生紅衣メメ虎屋ダルヴァの主
女の話をしよう
眼を開いた時から 少女は衆目を集めていた
虫も殺せない可憐さで 少女は青い矢を朱に染める
身の丈に合った力を! いかにもそいつは素晴らしい
無駄なき選択を! 成程そいつは聞こえが良い
待っていたのは計算地獄
無垢なるものこそ残酷だ
眉目秀麗 品行方正 ...なのにどうしてこうなった?

・ピザトラップダンジョンズでのピザの頼み方
①ハ〇チンコ店に併設されたコンビニでの手順
手順1:店員に注文して頂きお会計を済ませてください 整列券をお配り致します
手順2:店員が本店に連絡し出来立てのピザを配送致します(衛星通信ポケベルにて連絡します) 平均10分程度お時間をいただきます
手順3:ピザを店員が受け取り整理券の番号をお呼びします
お待ちいただいている間に店内に併設されたドリンクバー・ホットスナックが無料で飲食できますのでどうぞご利用ください
イベント
|ピザ容器の蓋でチャンスを掴め!≪ハズレ無し!≫|
ピザ容器の蓋に1~5等のくじが印刷されています 配送の際に確認し速やかに景品をお持ちいたします
5等:ハ〇チンコの玉 1000発分の引換券
4等:次回お好きなピザ1枚無料券 ※サイズ トッピング問わず
3等:その場でお好きなピザ3枚無料券 ※受け取り拒否不可
2等:お好きなハ〇チンコ筐体1つプレゼント! ※新品をお持ちいたします
1等:ピザ一年分プレゼント!※最大サイズのピザを一日三食分必ずお持ちいたします
ここから最寄り チェイテ支店
「先輩 このチラシは...ハ〇チンコとは一体!?」
白の陣地にて町へ向かう途中であったカルデア一行は 強風に煽られてひらひらと飛んできたチラシに目を通していた
「ハ〇チンコは18歳以下は入っちゃいけないから良くは知らないけど...アンデルセンが言っていたのはこのチラシのお店の事かな」
「恐らく そうじゃのう」
"三人"はチラシを幾らか見てまた歩を進めながら話すことにした
だがその談笑はそう長くは続かなかった というのも
「ようやく繋がった!無事かいマスター君 マシュ!?」
穏やかな平地であったのだがカルデアとの通信状況が随分と悪かったのだ かなり慌てていたのかダ・ヴィンチちゃんが復旧したての通信に繋いできた
「はい 先輩も私も...そして"稲生さん"も無事です」
「...えっ誰?」
通信越しに見えるダ・ヴィンチちゃんが口をぽかんと開けている
「誰とは...?今ここにいるのはカルデアから来た"三人"のみです
はっ!?もしや敵性反応があるのですか!?」
「必要ならば索敵した方が良いかのう?ますたー?」
マシュとマスターそして稲生が戦闘態勢を取る ダ・ヴィンチちゃんは頭を抱えているようだが...三人にはどうにもその理由が分からないままだ
少し時間を遡りカルデア一行が拠点を出る前にアンデルセンに一つを質問していた
「はぐれ者達の中で特に気を付けるべきなのは誰か」と
アンデルセン曰く...『稲生ひよ乃』と『シーカー・ダルヴァ』
「俺が探るにあたってあの性悪が真っ先に出した名がこの二つだ
ダルヴァという男は恐らく頭脳とその思想が原因だろうが...稲生とかいう女は目的遂行能力と『嘘』が下手くそだが押し通せるMug【アホ】だからだろうな」
詳しく聞けば能力が『言い放った言葉なんであれを自他ともに信じ込ませる』といったものの様である
思い込みを魔術なり言葉なりで丁寧に解さねばならないのは先日の空白地帯にある拠点の話でよく分かっている
アンデルセンの顔から「絶対に面倒事を持ち込むなよ!!」というセリフがにじみ出ていたが...拠点に帰った時が大変そうである
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _
──カルデアのマスターが来る以前の事である
カワキはアンデルセンと共にある紙を見ていた
「彼らは一体何がしたいんだ?」
「ピザの配達だろう それ以外になにが?」
紙にはこうある
『世界初!キノコを燃料にしたロケット発射予定!
目的はピザの配達を実現するために宇宙衛星を打ち上げるためである
阻害した陣地には 毎日欠かさず影も無くなるほどの光る変態を送り込み!火炎瓶と腐った魚を送り付け!細菌兵器と毒ガスをばら撒く!
阻害しなければ後日ポケベルをお送りしピザの配達を開始します』
どうやって印刷したのか このビラを全ての領地に大量に空からばら撒いてきたのだ
受け取った者は大抵首を捻っていた
彼らはどうにも真面目にこの世界の盤面に立っているとはカワキには思えなかった
この世界をチェスで例えるのであれば陛下や叔母をキングと例えられるだろうが
"はぐれ者"はたまた"エ〇トラップダンジョン"と駒には当てはまりそうにないオカシな連中である
「彼らはどう見たものかな...」
いやそもそも真面目にやっていないのだから見なくても良い気がするが
そうしているとアンデルセンが手の内に何かを隠して何も置かれていないチェスの盤面を指さした
「今手の中にあるこの駒は以前1aから8aまで一息に移動した この駒は何か」
要は7マス真っすぐ進む駒だが 候補は二つルーク(戦車)とクイーン(王女)
「斜めには進めるかな?」「少なくとも今回の移動に関しては 答えはNOだ」
斜めの位置に駒が無い状態で斜めに進めないとなると答えは決まる
「なら ルークだね」
一体何の意味があってこんな問答をしているのか さて アンデルセンが手を開く
「不正解だ 正解は『人生ゲームの駒』だ 人生ゲームのルールに則って7マス進めた人生ゲームの駒だ」
「...?いや そうはならないだろう」
引っ掛け問題ではなくこれでは難癖だ 正解なんて出来るはずもない
「奴らに王(キング)はいない チェスのルールから放逐され車一つだけ戦場に放り出されて放浪しているわけだ...ルールから解き放たれ前方不注意でゴールへ暴走している
こう例えるくらいが丁度いいイイカゲンさだろうな」
まあいい 要塞に引きこもってピザの配達をするだけならそこまで特筆して警戒する物でもない
仮に何かあればその時はその時だ
カワキはそう考えながらその場を後にした 今になって思えばなぜ世界をチェスでのみ例えようとしたのかは...未だ分からず仕舞いだ