茶と団子 付け合わせの『記憶』

茶と団子 付け合わせの『記憶』


シーカ―・ダルヴァ

「隊長~!そこで何してるんですかーっ?」

用事の為に隊舎の外に出ていた乱菊の前に何やら草を眺めて物思いに耽る日番谷冬獅郎がいた

「なんですかこれ...ネギ?らっきょう?」

「ちげぇよ 『ノビル』っていう野草だ」

美しい花でもない正直雑草のような植物を隊長が見ていてことが乱菊には少し不思議だった

「えぇ...隊長ならその辺の野草食べなくても良いお給料もらってるはずじゃないですか 檜佐木副隊長みたいに使い込んじゃったんですかー?」

「んなわけねぇよ 昔食った時の事を思い出しただけだ」

日番谷がおばあちゃんと居た頃から知っている乱菊からすればそれでもやはり不思議である おばあちゃんは野草にも詳しかっただろうか?

「昔...3区に雛森に連れられて遊びに行った時の事だ」

「デートじゃないですか~!!」

揶揄われたためか話すのを渋ろうとした日番谷隊長を宥めて...だめだったので今日だけでもマジメに働くことを条件にデートの詳細を話してもらった


「色々買ったね シロちゃん!」

「おかげで財布の中身が当分寒くなりそうだな」

西一区「潤林安」から離れて三区に買い物に来た 服や小物 お土産色々買ってもう両手は埋まっている

少なくとももう遊ぶ分の金は無い そろそろ帰りたいが小腹も空いている...

「見てシロちゃん!あそこお茶と団子とおまけがついて150環だって!」

「...どう考えても碌なもん出ねぇだろ そこの茶屋」

明らかにボロボロの外観に伽藍洞な店内 そもそも店員がいるのか怪しいレベルだ

「とりあえず入ってみようよ!」

「やばそうなら俺は頼まねぇからな」

雛森に手を引かれて妙に草の匂いのする店内に足を踏み入れた


外観に反して店の中は多少整っていた 異常があるとすれば店員が爆睡をかましている事だろう

「あんまりにも人が来ねぇから店員が寝てんじゃねぇか」

当の店員は大分若く見える...それでも少なくとも日番谷たちよりは年上の16歳くらいだろうか

「おぉ...?お客さんかい?ご注文はお決まりですか...と言っても団子と茶しかないんじゃがな」

見た目に反して少し年寄りじみた喋り方をし始めた店員に少し驚いたが流魂街ではたまにある事だ

「お茶とお団子のセット2つお願いします!」

...雛森は問答無用で俺の分まで頼みやがった まあ度胸試し程度に食ってみるかそう思って止めることはしなかった

「団子は店主が作ったのを出すが茶とおまけは儂チョイスじゃからな 席に着いておくと良い」

店員は寝るのを止めて厨房に向かい始めた 俺はここでようやく店員が隻腕なのに気づいた

とはいえだからどうということは無い 問題は料理である


「茶と団子...儂は面倒なので詳細は言わぬが 片方でも当てられたらおまけをつけてやるぞ」

出てきた団子は透明感がある図体をした物に黒蜜がかかっている食べ終わり自分の記憶を頼りに当てようと頭を傾げていた

団子を食べるが随分団子にしてはつるりとした食感だ 砂糖のほのかな甘みがある

茶も大きな特徴は無いが美味い...どこかで飲んだことはあるはずだ 確か...

「団子は分からねぇが...茶はドクダミだ 調子が悪いときに飲まされたことがある」

「正解じゃ お主なかなか見込みがあるのう では儂の一押しのおまけを振る舞うことにするのじゃ 時間はかけん そのまま座して待つと良い」


店員を待つついでに雛森と団子の正体について話し合っていたが結論が出る前に店員は料理を持ってきた

「これは『ノビル』という野草じゃ 今時期はそこらのラッキョウなぞより美味いぞ  酢味噌をつけて食べると良い」

湯通しなど下処理をしたらしいラッキョウのような植物が出てきた

もはやここまで来て味への不信感は無い 雛森と一緒に味噌を合えて食べる

湯通ししたことによるものなのか辛みは控えめで甘みがあり酢味噌とよく合う

思ったより数はあったはずなのだが思ったより早く二人で全て食べきってしまった


会計をすませ店を出る 居眠りをしていた割には会計後に見送りをする店員に対して気になることを聞いた

「結局団子は何が正解なんだ」

「葛餅を団子状にしたものじゃよ 店主が食いやすく美味しい葛餅をと妙なこだわりと共に提供をさせてもらっているんじゃ」

そう店主を貶しているのか褒めているのか分からない返答を返された後

「それでは どうぞ今後ともこの『シーカー・ダルヴァ』を御贔屓に」

店名ではなくなぜか自身の名を告げて帰る俺たちを見送っていた


「それで3区に行くときは必ずその店に立ち寄るようになった...これで話は終わりだ松本」

「なんだか聞いていたらお腹すきましたね隊長...あっそうだ!今から葛餅を食べに」

「『今日は一日真面目に仕事する』忘れたとは言わせねぇぞ」

...しかし日番谷自身少し食べたくなったので仕事をしっかりと終えてから乱菊と共に瀞霊廷内の茶屋で葛餅を食べた


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