芸術家と劇作家の変化
「……先生……ストロ先生……」
「……Zzz……」
「マエストロ先生!」
「うおっ!?……ヒルデガルト……?」
「おはようございます!少々よろしいでしょうか?」
「……おはよう……どうしたんだ?日曜の朝早くに……」
「私の頭上を見てください!」
「頭上?……は?……いやいや、そんな筈……見間違いじゃない、本物だ……」
「何ですか、コレ?9629号にもありますけど……」
「……ヘイロー。だが、しかしこの色は一体……」
「ああ、確かに私の、『黄金』ですね?何ででしょう?」
「……『ヒルデガルト』という名前の影響か?……いや、ソレはない。『生徒』が『聖徒』になる……其の事が起こると仮定しても、なるとしてもシスターフッドの個体だろうな」
(ただ、黒服は言っていたな。『死を恐れる恐怖』がヘイローの顕現なのだと。しかし、その時、先生は違うと言っていたと聞いた。『愛情』なのだと。……まさか……な)
「……今は私は『謎』だと言っておこうか。後でゲマトリア内で議論しよう。皆の下へ向かうか、ヒルデガルト?」
「はい!分かりました!」
……………………………
「おはよう、ゴルコ……ンダ?」
「……おはよう、マエストロ。息災か?」
「そういうこった!」
「……貴様か、フランシス。何用だ?」
「私も『裏』で見ていて、気になった。ただそれだけだ」
「そうなのか……?」
「マエストロ先生。この方は?ゴルコンダさんではないようですが……?」
「おはようございます……うわ!?誰ですか?!ゴルコンダ先生……ではありませんよね?」
「フム、いい機会だ。自己紹介しよう。私の名はフランシス。デカルコマニーの持つ『絵画の人格』の一人だ。お前達の事はずっと『裏』で見ていた。貴様が917号、『芸術家』のヒルデガルト。そして、貴様が1920号、『劇作家』のチャペックか。よろしく頼もう」
「そういうこった!」
「……何か、怖い、ですね」
「……貴方の事は何と呼べば良いのでしょうか?ゴルコンダ先生と同じく、フランシス先生ですか?」
「いや、私は貴様に何か教えてはいない。よって、フランシスさん、で良い」
「分かりました。フランシスさん」
「それで、気になった事は何だ、フランシス?」
「マエストロ。『芸術家』はお前に会った当初、武器を持っていたか?」
「……あの時は確か……AK−46だったか?」
「……はい。あの時は生きることに必死で銃の種類なんて、何でも良かったです。今は持っていませんが」
「フム。では、『劇作家』よ。お前のアレは拳銃か?」
「……そうです。私も生きるのに必死でしたから。自殺しそうになってる所に現れたのが、ゴルコンダ先生とデカルコマニー先生でしたから」
「フム、そうか」
「フランシス、貴様の気になった事はソレか?」
「ああ、『この《キヴォトス》という地において、自衛の武器を持たないで良いのか』という事だ」
「……フランシス。確かにそこは、『持った方が良い』という事になる。しかし、彼女達のトラウマになるかもしれない、という事で、黒服の2機は持っているが、ヒルデガルトと1920号には持たせていない」
「……自分と同じ顔を持っていた者を……か。2人はそうなのか?」
「いいえ。私は違います。『不良品』という事で、カイザー社に捨てられました。銃は、同じく捨てられた、CPUの機体から奪った物です」
「実を言うと、私もカイザー社に捨てられたのです。拳銃は私の自作。弾は、拾って、再利用してました」
「……という事は、トラウマになっていない?」
「なってはいませんが、傷つけることに抵抗が……」
「……私も同じくです。あの時、ゴルコンダ先生に『戦闘職』だと言った事は、半分本当で、半分嘘です」
「……いきなり、こんな事を言うのはアレだが、武器には二面性がある。『傷つける』事と……『守る』事だ」
「そういうこった!」
「『自衛』という事になれば、話は別だと思うぞ、マエストロ?」
「……確かに、納得できる意見だ。しかし、私はあくまで、彼女達の意思を
「そういう事でしたら、私は所持することを肯定します!」……え?」
「同じくです。自衛のためでしたら、持っていて、損はないかと」
「……そうか」
「一旦、私は『裏』に帰ろう。それではな、3人共」
「……全く、彼、とんでもない事をしでかしてくれましたね?武器といわれても……」
「お帰りなさい、ゴルコンダ先生。私に考えが」
「何です、チャペック?」
「お二人が制作して頂けませんか?」
「ブフッ!?」「ゴハッ!?」
「どういうこった!?」
「良いですね、1920号!お願いします、マエストロ先生!」
「……先生に許可を取ってくる」
「私も同じく……行ってきます」
「そういうこったぁ!!」
…………………………
「……という事だ、先生。どうだろうか?」
“朝から急に何だろう、と思ったら、そういう事ね。実物は?”
「……えっ?」
“良くも悪くもここは、キヴォトスだから。自衛のための武器なら認めるよ”
「……そうか。ありがとう、先生」
「では、後で持たせた彼女達を行かせる、という事にしましょうか?」
「そういうこった?」
“別に良いけど”
「恩に着る」
「同じくです。さて、帰りましょうか?」
「そういうこったぁ!!」
………………………………
「先生!来ました!よろしいですか?」
“どうぞ~”
「お邪魔します」
“917号のは……えっ?コレ、ヒエロニムスの?”
「はい、『剣』と『聖遺物』です!システム上は同じらしいです!」
“大丈夫、ソレ?即死ギミックあるんじゃ?”
「いえ、マエストロ先生がパワーを抑えたので、スタンさせる位の威力になっているそうです!」
“……気になるから、後でテストかな。1920号は……コ、コレは?!”
「『スパークガン』らしいですが、説明聞く限り、オリジナルの『光の剣』の小型版では?」
(“某カードゲームの装備カードを実現させたか〜……ゴルコンダらしいな〜”)
“こっちも能力チェックするね”
その後、基準をクリアし、『ゲマトリアらしい』特殊な武器を2人は貰ったのだった。
「所で、先生。ヒエロニムスのアレは良かったのか?いや、まあ、作った本人が言うのもなんだが」
“完全な『聖徒の交わり』化じゃないし、良いかなって。それに、威力も気にならないから。それと、ずっと持ってるんじゃなくて、必要になった時に現れるのが良い設計だね”
「……ありがとう、先生」
ーオマケー
「そういえば、マエストロ。少しばかり耳に入れたいことが」
「何だ?」
「先日、スランピアを訪れたのですが……居たんですよ、彼女達が」
「待て待て待て待て待て。それって、つまり、複製達と彼女達が一緒に暮らしてるって事か?!」
「ええ。番号は把握出来ませんが、複数の個体を確認いたしました。夜のネロと戯れたり、シロとクロに構ってあげたり、挙句の果てには、ゴズのとこで、一緒にショーをしたり、観客となってたりしてました。完全に順応してます」
「そういうこった!」
「カイザーが不法投棄したやつか、それとも野生が行き着いた先が、偶々スランピアだったのか。何れにせよ、調査だけはしておこう。どうするかは後でだ」
「ええ、私もそう思います。少なくとも処分する個体では無いでしょうし」
「そういうこった!」
「ああ、その行動を聞く限り、黒服の言う99号に関連は無さそうだ」
「操られているという感じでは無さそうですしね。まぁ、何にせよ調査は必要です。こちらはこちらで行動しましょう」
「そういうこった!」