芸術家と作家、それぞれの卵は聖夜を楽しむ

 芸術家と作家、それぞれの卵は聖夜を楽しむ

 

 ー917号の場合ー

 「マエストロ先生!今日はクリスマスです!私はプレゼントを所望します!」

 「ムッ……そうであったか。とりあえず街へ出掛けるか、ヒルデガルト?」

 「はい!」

ー移動後ー

「おお……!今日は街全体が絵画みたいです!コレも一種の芸術です!」

 「……そうだな、クイナ。」(メサイアの誕生日では本当はないというのに。とある聖人が家の子どもを訪ねて、お菓子を配ったのが始まりだ。……しかし、聖なる日であることは確かだ。この事を言うのは無下だな……)

 「……!マエストロ先生、コレが良いです!」

 「……スノードーム?確かに美しいが、ソレで良いのか?」

 「はい!確かに他と比べてしまったら地味なのかもしれません。ですが、私はコレが今まで見た中でとても美しいです!素晴らしい芸術品です!」

 「……お前が良いというのであればソレで良い」

 「……それに、本命のプレゼントはサンタさんにお願いするつもりです」

 「……ほう……?ソレは一体?」

 「私達のオリジナル、天童アリスの所属するゲーム開発部の芸術品、『テイルズ・サガ・クロニクル2』です!」

 「……?お前、度々訪れているだろう?何故貰わない?」

 「……9629号、そして1920号と一緒に遊びたいんです。それに、ゲーム開発部のみんなに貰ったら悪いですから」

 「……そうか。……靴下買っとくか?」

 「はい、そうですね!そうしましょう!」

 ー1920号の場合ー

 「今日はここまでにしましょう。お疲れ様でした。だいぶ、いい表現、語彙力が付いてきましたね」

 「ありがとうございます。ですが、まだまだです。もっと多くの言葉を学ばくては。表面上では分からない意味を理解してなくては、多くの人に作品が伝わりませんから」

 「……そうですね。それはそうと今日はクリスマス、『聖なる日』です。何かご所望のモノはありますか?プレゼントしましょう」

 「そういうこったぁ!!」

 「……プレゼントですか……クリスマスといえば……そうです!実はこの前、出掛けた時にあるポスターを見かけたんです。劇団の広報の方が配ってまして……コレです!」

 「どれ……ほぅ、『クリスマス・キャロル』ですか。劇団の方は……ああ、ココでしたら、私達、顔パスですね」

 「そういうこった!」

 「……『顔』パス?ですか?」

 「失礼、確実に言えば、『絵画&首』パスですね。確かに最初は驚かれましたよ?ですが、脚本とかを提供しているうちに、アチラが慣れてきて……今では、鑑賞無料です」

 「そういうこった!」

 「……早速行きますか?チャペック?」

 「はい、お願いします!」

 ー移動後ー

「お久しぶりです。お元気でしたか?」

 「おお、ゴルコンダさん!デカルコマニーさんも!相変わらずですよ!私達の劇を観に来て下さったんですか?」

 「ええ、そうです。この子のクリスマスプレゼントに」

 「そういうこった!」

 「えっと……初めまして!増産アリス1920号です。ゴルコンダ先生……デカルコマニー先生も……のところで作家になろうと頑張っています!よろしくお願いします!」

 「おう!よろしく!しかし、ゴルコンダさんは相変わらず変わり者だね。今度はAIに小説を教えてるのかい?」

 「……今は語彙を増やしてる最中ですよ。それに世の中の小説AIを考えてみて下さい。確かに命令通りに文章が書ける。けれど、この子は違います。『的確な心情表現』が出来る。それだけで、作家としての才能は十分です。本当に心から喜怒哀楽を表現できるAIは『この子達』以外に私達は知りませんから」

 「そういうこった!」

 「成る程ね。ソレだったら納得だよ。是非私達の劇を楽しんでくれ!」

 ー上演後ー

 「いやー、素晴らしかった!やはり、ここの劇団は良い。そうでしょう、デカルコマニー?」

 「そういうこったぁ!」

 「……凄い……アレが演技……登場人物が乗り移っているみたいでした!」

 「……良いですか、チャペック。彼らは『マリオネット』ではありません。ちゃんと自我をもって、その脚本に合わせた『演者』です。体全体を使って、感情を表現する私達が尊敬すべき者達です」

 「そういうこった!」

 「……ですが、過去、現在、未来の精霊達に私達は会ったことがありません。作者は会えたんですか?」

 「……サンタクロースと同じです、チャペック。我々はサンタに会ったことがありません。我々は『サンタは居ると信じているから』サンタの存在を認識している。コレはlibrary of loreを遥かに超える事です。きっと作者のケインズも同じです。過去、現在、未来の精霊達は『存在していると信じているから』あの素晴らしい作品が書けたのだと思います」

 「……ゴルコンダ先生……」

 「ノンフィクションには限界がある。けれど、フィクションは無限です」

 「そういうこったぁ!」

 「貴方が信じるモノを貴方自身が書き込んでいく。ソレの何がいけないのですか、チャペック?確かに、『機械仕掛けの神、デウス・エクス・マキナ』は嫌われます。ですが、存在しないモノ……いえ、違います。『居ると信じられているモノ』は好きなだけ書いて良い。批判されない程度には」

 「そういうこったぁ!!」

 「……ゴルコンダ先生、デカルコマニー先生。本当に今日はありがとうございました!おかげで、『創作意欲』というのが湧いてきました!」

 「それは良かったです。最後に一つ。今回見たのは『喜劇』です。好まれる傾向はこちらの方でしょう。ですが、『悲劇』も良いモノです。完全な『ハッピーエンド』ではない、良い塩梅の『ビターエンド』。こちらが好みの方もいます。それで良いのです。『喜』も『悲』も感情です。我々が持ち合わせる共通のモノです。貴方が今後書く作品はお任せします。ですが、この事を忘れないでおいてくださいね?」

 「そういうこったぁ!!」

 「分かりました!今日、学んだ事、インプット完了です!」


ー両者帰宅後ー

 〈……ゴルコンダ。彼女達は?〉

 〈ちゃんと寝てます。それで、何か?〉

 〈カクカクシカジカ……〉

 〈ほほぅ……良いじゃないですか〉

 〈そういうこった!〉

 〈よし、やるか!〉

 ー翌日朝ー

 「……スリープ解除……ん?……靴下に何か……おおっ!」

 「おはようございます!マエストロ先生!」

 「おはよう、ヒルデガルト。何かあったか?」

 「『テイルズ・サガ・クロニクル2』が靴下の中に!サンタさんは実在したんですね!」

 「……ああ、そうだな」

 「おはようございます、ゴルコンダ先生。ゲーム機が置かれてましたけど、ゴルコンダ先生に言ってませんよね?やはりサンタが?」

 「信じる者は救われる、です、チャペック。昨日、信じて良かったでしょ?」

 「そういうこったぁ!!」

 「……はい、そうですね!」

 「1920号!一緒に遊びましょう!」

 「……ソレは良いですよ、917号。でも、今じゃなくて、9629号も含めた方が良くないですか?」

 「ソレもそうですね!彼女が起きるのを待ちましょう!」

〈……やれやれ、少し眠いな〉

〈……まぁ、良いじゃないですか。必要なことです〉

〈そういうこった!〉


※追記

 1920号こんな性格で良いですかね?良ければ、このままの性格でいきます。

……それでは。

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