芸術の意義を考えたい芸術家のAI
こんにちは!私は917号機、もとい『ヒルデガルト』です!少し前は野良アリスで、まともに睡眠、食事をすることが出来ませんでした。ですが、歩く木の人形が私の前に現れました。その時はすごく警戒していましたが、「生活の保障をする」と言われたので、怪しく思いながらも付いていくことにしました。そこから、まともな睡眠、食事が与えられ、すっかりその人のことをその日のうちに信用してしまいました。
その次の日、私を保護してくれた『マエストロ』さんは私に芸術を教えてくれました。正直いうと、理解できませんせんでしたが、段々と興味が湧いてきました。講義を聞いているうちに、私に独自の芸術性が芽生えました。そこから絵画、彫刻、音楽を教えてもらいました。出来た時の達成感は私に力をくれます。そして、マエストロ先生から個展を開くと言われた時、とても嬉しかったのですが、芸名、つまりペンネームを決めなければなりませんでした。そこで生まれたのが『ヒルデガルト』でした。マエストロ先生はそこからよくこの名前で呼んでくれます。
そんな感じで、私の芸術家としての人(?)生がスタートしたのです。ですが、ある日のこと、ふと疑問が湧いたので、マエストロ先生に相談することにしました。
「マエストロ先生!」
「?どうした、ヒルデガルト?」
「先生は芸術の意義とは何と考えていますか?」
「……?最初の時にそれは説明したはずだが?」
「そうではないんです。ふと、思ったんですが、仮に災害等が起きた時に芸術家は何をすべきなのだろうと思いまして……」
「……その『等』には戦争も含まれているか?」
「……はい」
「……そうか……確かに芸術のことばかり教え、その歴史について教えなかったのは事実だ。お詫びにそれを解決する旅をしよう、ヒルデガルト。私の手を取れ」
私は言われた通りマエストロ先生の手を取ると、周りの景色が変わり、気づけば、外にいました。
「えっ?!さっきまで屋内にいたのに?!」
「……ここはシャーレの先生が元々いた世界だ。先に言っておくが、我々の姿は周りには見えていない。さぁ、行くぞ」
そこから、本当に人目を気にせずにとある美術館ヘ入りました。するとある一枚の絵が見えてきました。
「……着いた。この絵画についてどう思う?ヒルデガルト?」
「……全体的に暗いですね。黒、白、灰と色の構成はモノクロに近いです。人、牛、馬は何から逃げているのでしょうか?」
「ソレについて答える前にお前は何を感じた?」
「……悲鳴に近い叫び声が聞こえます。後は……苦しみ、悲しみでしょうか?」
「……この絵画は空爆を受けた街を描いたモノだ。作者はその歴史が忘れないようにとこれを描いたそうだ」
「……つまり、歴史を残すということですか?」
「……一つ目はそうだと私は思っている。……さて、次に行くか。今度は音楽だ。ある歌を聞こう」
そうして連れてこられたのが……
「……だいぶ復興してきたか。ここは大きな災害を受けた地域だ」
「……分かります。ですが、何故此処に?」
「此処に来たからこそ、この曲は深まる。ちょっと弾いてみるか」
そうしてマエストロ先生は何処からかピアノを出して、一曲弾きました。
「……とても優しいメロディーです。それに明るく聞こえます。芸術は人に活力を与える手段ということでしょうか?」
「……二つ目はそうだと私は思う。確かに大きな災害が起きる度に自然に対して私達がどれほど無力なのかを思わされる。実際にそれで悩んだ芸術家は多い。だが、絵画、彫刻、音楽、陶芸、劇等、芸術は元気……活力を人類に多く与えてきた。そういった側面が芸術にはあるのかもしれないな」(まぁ、私は人を傷つける芸術を作ってしまったことがあるがな……〈脳裏に浮かぶヒエロニムス、グレゴリオ、アンブロジウス等々〉……だが、私の芸術だから別に気にすることはないが)
「成る程……つまり、『歴史を風化させない』、『活力を与える』。それが芸術の意義なんですね!」
「……あくまでも意義の一部であり、人によっては側面でしかないがな。……お疲れ様、ヒルデガルト。今日は終わりだ。戻ろう。再び手を取れ」
そうして、私達は戻ってきました。なんだか、いい気分です。
「今日はありがとうございました!マエストロ先生!」
「……どういたしまして、ヒルデガルト。私はシャーレの先生のように完璧な善人ではないし、今日見たような作品を作ったこともなければ、今後も作る予定はない。だが、私は基本的に人の芸術性を否定しない。もし、お前がそういった作品を作りたいのであれば作るが良い。応援はしよう」
「……!ありがとうございます!マエストロ先生!」
……ああ、私の心が高ぶっているのを感じます!衝動が抑えられません!
「すいません!ちょっと引きこもります!」
「……全く……しょうがない。完成を見守るとしよう、ヒルデガルト」
万人を納得させる感動を作り出す芸術は難しい。けれど、より多くの人に感動、活力を与える芸術家になりたいと私は思いました!
※あとがき
今回出したモノが、芸術の意義ではないと考える方はいると思います。この問いは答えがないのですから。ですので、これは一部と考えてください。
それでは。