色々終わってあの頃の事を知った後、多分曇るタロちゃん視点の話
多分書けなかった場合、中編になるやつ。
前編のその後、どうにかこうにかカキツバタがブルベリ学園に通っててDLC開幕するかなり前の話。
モブ×カキツバタ匂わせ、自傷行為などがある為閲覧する際ご注意を
エミュだったり一人称など誤字脱字あるかもしれないが悪しからず。
最後にちょっとだけカキツバタの独白があるよ
((中編②もしくは後編では、多分、晴れると思うので!あとちょっと待ってね!!))
↓それではどうぞ↓
風の噂、では無いが彼の印象は「留年してるだらしないやつ」というものだった。
まだ実際に会った訳でもないが真面目に学業もこなせないなんて…ブルーベリー学園に来て抱いていた親近感のようなものが霧散し腹立たしい感情が渦巻いて一言申してやろうかと思ったこともあった。
そして『可愛い』が大好きで可愛いで強くなりたいと想いを胸にリーグ部の門を叩いた。
そこで”初めて”彼と出会ったと同時に、
軽薄とした言動の裏に隠された闇を感じたのだった。
・
・
・
違和感を感じたのは何時だったか
フラフラと何処か覚束ない歩き方で、なんて事ない喋り口調でのらりくらりと言葉を返していた時?
それともゼリーなんか柔らかい食べ物ばっかり食べて!と、怒った時か
いや、期限の迫った書類がまだ提出されていない事で、詰め寄った時に見かけた洋服の隙間から見え隠れしていた”痕”を見つけてしまった時だったか……
「そーゆーの、ダメだと思います!」
「んん?突然、どーしたんだぁ?タロ」
「く び も と の!その、痕の事です。前から見たらジャケットの立襟で確かに分からないとは言え、着けて隠さないで来るなんてダメだと思います!」
プンプン怒りながらいつものバツ印を胸の上で作りながらカキツバタしか部室に居ない頃を狙い、注意する。
注意する内容は違えど度々何かあれば指摘したり、手伝って見たりとなんだか名物風景じみた事を繰り返しやって…なんてコントをやっている様だった。
……自分はそんなつもりじゃなかったけど。
今回もそうしてカキツバタがヘラヘラと謝りながら終わる…はず、だったのに
「あぁ。ね……」
首の後ろ側を右手で抑えてパチリと1度瞬きをするとなんとも言えない感情を、光を感じない瞳でこちらを見ていた。
おもむろにガタリ、と立ち上がりスタ…スタ…とフラつき歩きながら考えるように立ち止まる。
「これは…なんと言うかな。まぁ、うん。そーゆーこと。あと、これ」
こちらに向かい歩いてきて「ほい。これ」と、クリアファイルに入ったプリントを渡してきた。
「たまたま部屋の中を片付けしてたら目に入ってよぅ。何となく気ぃ向いて書いたら先生によろしく」
いつものへらァとした表情でそう言い告げる。
だけど、ほんの少しだけ、ほんの少しだけど…
「う、うん。わかった」
ガラリ
スタスタ歩き、戸を開けピシャリと閉める。
最初はいつも通りに歩き少し離れて早歩きをして自室に戻った。
「はあ。カキツバタ、あいつ…」
距離と取るというには近すぎて、壁を作るというには薄すぎる。
言葉にし難い拒絶の反応、それを感じた。
あの時一瞬彼女でも居るのかと言う考えがよぎったが、それも間違えなんだろう。
少し軽口でも叩こうかなって帰しを考えて、でもなんだかいつもと雰囲気がおかしくて。
それにいつも眠そうにしててあれだってゲームのし過ぎとかで不健康!とか思ってたけど。
部屋の電気を付けて、ボフッ!と倒れ込むように布団に寝転がる。まだ制服着たまんまだけどこの際気にしないでおこう。
「もしかして全部、わたしの勘違い、なのかな?」
いつもがあのチャランポランと言うか昼行灯と言うか、のへぇ〜とした雰囲気を醸し出してるせいでよく分からないでいる。
彼という”人間”を。
人の事を全部分からない事は当たり前だけど、それでも……
「踏み込まないでくれ…って事なのかな」
お節介なのかもしれないけど…けど、たまにふと見た時にいつも定位置としてだらしなく座っているあの場所からふと居なくなってしまったかのような錯覚を覚える事がある。
思わずはっ…として見てみればちゃんと居る、けれどまるで陽炎を見ているかのような儚さを。
…しばらく目を瞑って考えて見たが埒が明かず、モヤモヤした感情を抱えたままではダメだなと思い、((さっき渡されたファイルを届けたらかわいいポケモン達を愛でに行こう))とう思い至って少しクシャ着いた髪を解きドアを開けた。
「……動揺して、ついボロが出ちまったなぁ」
タロが部室を出た後、ふと言葉を零した。
言われた通りの場所にスマホをかざし写真を撮り改めて確認してみると確かにあった。
左肩に近い項にあるその痕。
それは自分を”買っている人”が着けた所有物の証である。
「それにしても…じいちゃんも早く突き放してくれたらいいのに」
改めてその証を見てそう思う。
自分はずっと汚れた存在で惨めで生きていてはいけない存在なんだと。
暗い感情が心に蔓延して無意識のうちに首に手をかけた。
長袖のインナーから覗く凍傷の痕。
身体の至る所にある、あの出来事を象徴とするもの。未だに夢の中でも自分を蝕むのだ。
「ぎゃあぎゃあ!」
ボンっ!とボールから飛び出す音ともに他のボールが開く音が聴こえる。
「お前たち……」
心配そうにぎゅうぎゅう擦り寄ってきてカキツバタを囲みこんだ。
「ははっ。そうかい…心配かけてごめんな」
首にかけていた手を放しポケモン達の頭を撫でる。
手袋越しに伝わる温かさが心地良くて、しばらくの間ずっとそうしていた。