自由の代償

 自由の代償


 退屈

 ガーデン・ローズ・メイデンことフローラは自身がたどるであろう一生をそう評した

 黒薔薇の庭に閉じこもりローズドラゴンに力を与える日々は苦しみや痛みとは無縁ながらも、ただただ孤独で退屈な時間だった

 だが彼女には夢があった

 いつか素敵な王子様が自分を連れ出してくれるという夢が

 「またはじまった」

 フローラは黒薔薇の庭のなかで嘆いた

 外では鞭がしなるような音と炎を吹き出す音が響き渡る、ローズドラゴンが外敵と戦っているのだ

 フローラはこの時間が嫌いではなかった

 一定の法則性こそあれど、響く音はその日ごとに異なり、それは彼女の心を踊らせた

 なにもない退屈な時間よりかはこのような喧騒のほうがよほどよいと彼女は思っていた

 しばらくすると再び静寂に包まれる

 「はあ」

 フローラはため息をついた

 もしかすればローズドラゴンの外敵が自らを救う王子様なのではないかと期待していたからだ 

 「今日もなにもなかったわ」

 フローラは悲嘆に暮れていると不意に羽音のようなものが近づいてくる、それは明らかにローズドラゴンとは異なるものだった

 「まさか、王子様!?」

 フローラは逸る気持ちを必死に抑えてじっと待ち続けた

 そして黒薔薇の庭の外に現れたのは首周りに花弁がのようなものがついた竜の姿を模した植物であった

 その名はドラゴスタペリア

 捕食植物の一種でありその性質は残虐かつ狡猾で度々ローズドラゴンの襲う危険な存在であった

 「なんでこんなところに?」

 フローラは疑問を抱きつつもドラゴスタペリアを見つめていた

 ドラゴスタペリアは黒薔薇の庭のなかに入ることはなくまるでフローラの意思を見透かしたかのように手招きをして彼女を誘うような仕草を見せた

 フローラの心は揺れていた、捕食植物は恐ろしい存在だとローズドラゴンから聞いていたからである

 しかしその一方で心のなかに巣くう好奇心を抑えることができなかった

 「私を救ってくれるのかしら……」

 フローラは恐る恐るといった様子で一歩ずつ足を踏み出した その様子を見たドラゴスタペリアは満足げに口角を上げるとその身を揺らしてフローラを招き入れた

 「失礼します……」

 フローラは招かれるがままに黒薔薇の庭から飛び出すとドラゴスタペリアは彼女を掴み宙へと飛び立った

 「きゃっ!」

 突然の出来事にフローラは驚きの声をあげて思わず目を閉じてしまう

 一方ドラゴスタペリアはお構いなしに空高くまで上昇していくとやがて速度を緩める

 「綺麗……」

 恐る恐る目を開いたフローラの視界には一面の花畑が広がっていた

 色とりどりの花々が咲き乱れ、風に揺られる姿はとても美しく、それを見たフローラの心は躍った

 「外にはこんな素敵な場所があるなんて…」

 フローラは感激しながら周囲を見渡している、彼女にとっては目に映るすべてが新鮮であり興味深かった

 フローラは感激しながら周囲を見渡している、彼女にとっては目に映るすべてが新鮮であり興味深かった

 「ありがとうございます!あなた様のおかげで外の景色を知ることができました。本当に感謝しています」

 フローラはドラゴスタペリアに感謝の言葉を述べた

 その頬はうっすらと紅く染まっており満面の笑みを浮かべている

 彼女の目にはドラゴスタペリアがずっと憧れていた王子様のように見えていた

「ローズドラゴン様はあなたを恐ろしい怪物と仰っていますが、とてもお優しい方なのですね」

 フローラは先程までの恐怖を忘れたように話を続ける

 その姿は年相応の少女そのもので無邪気さを感じさせるものであった

 「王子様……あっ、いえ…ごめんなさい、つい舞い上がってしまって」

 フローラは自身の口を手で押さえると恥ずかしそうに顔を背けた

 そんなフローラの様子を見てドラゴスタペリアは笑みを浮かべたように見えた

 そんなときである

 「グォオオオオ!」

 大地を震わせるほどの雄叫びが響き渡る

 フローラはその声に聞き覚えがあった

 「これは……ローズドラゴン様!?」

 ローズドラゴンはドラゴスタペリアがフローラを連れ出したことに怒り狂っていた

 「ギャオオ!!」

 ローズドラゴンの目は怒りと憎しみに満ちているが、一方のドラゴスタペリアはそれを意に介さず悠然と構えている

 両者は睨み合うように対峙していたが先に動いたのはローズドラゴンであった

 ローズドラゴンは大きく息を吸い込むとそこから炎を吐き出す

 すると美しかった花畑は瞬く間に燃え盛っていく

 「やめて!」

 フローラは必死になって叫ぶがその願いが届くことはなかった

 ローズドラゴンは茨を鞭のように操り叩きつけるがドラゴスタペリアは一切の抵抗をみせない

 「どうして…」

 フローラには何故ローズドラゴンがドラゴスタペリアを攻撃するのか理解できなかった ローズドラゴンの攻撃は激しさを増していくがドラゴスタペリアは微動だにせず、ただひたすら攻撃を受け続けている

 「ローズドラゴン様!」

 フローラは咄嵯にローズドラゴンに向かって駆け出す

 「ガァアアッ!」

「お願いですからもう止めてください!」

 必死に訴えかけるがフローラはローズドラゴンは攻撃の手を緩めない

 そんなローズドラゴンの姿にフローラのなかで疑念が渦巻く

 ローズドラゴンは庇護と引き換えに自分を黒薔薇の庭に閉じ込め、孤独を与えた存在だ

 一方ドラゴスタペリアは外の世界へ連れ出し、自分の知らない景色を見せてくれた

 そんな存在を一方的に攻撃するローズドラゴンの姿はフローラにとって許せないことであった

 気づけばフローラはローズドラゴンとドラゴスタペリアの間に割って入り込んでいた

 「このお方に手を出すことは私が許しません。もしそれでもと言うなら私ごと焼き払ってください」

 フローラは決然と言い放つとローズドラゴンを見据えて身構える

 「グゥウ……」

 ローズドラゴンは戸惑っているようだった その一瞬の隙をドラゴスタペリアは見逃さなかった

 ドラゴスタペリアが不意をつくように一撃を加えるとローズドラゴンは倒れ伏し骸となった

 「ああっ…なんということでしょう……」

 フローラは悲しみに打ちひしがれその場に膝を落とす

「 私のせいなのでしょうか?私はどうすればいいのでしょう?」

確かにローズドラゴンの束縛はフローラにとって疎ましいものだった

 しかしこれまで自身を守り続けくれたのもまた事実であった

 「ああっ……ああぁ……」

フローラの目からは涙が溢れ嗚咽が漏れる

 そんな彼女をドラゴスタペリアは労るようにそっと包み込んだ

 「えっ?」

 フローラは驚いて顔を上げるとドラゴスタペリアが優しく頬を撫でる

 「慰めてくれているのですか?」

 フローラはドラゴスタペリアの行動の意図を理解しかねていたが、不思議と悪い気持ちはしなかった

 「私はこれからどうすれば?」

 フローラと共にあるローズドラゴンはこの1体のみではない、しかし勝手に外に抜け出してこのような犠牲を生んだことが知られればどうなるかわからない

 先程ローズドラゴンがドラゴスタペリアにみせた怒りと憎しみに満ちた表情を思い出すとフローラの心は痛んだ

 するとドラゴスタペリアはフローラの元へと近づき口を差し出す

 「王子様…もしや…これは」

 長い間、黒薔薇の庭に閉じ込められ世間のことに疎いフローラであるが、それがなにを意味するのかはよくわかっていた

 口づけ

 唇と唇を重ね合わせるこの行為は愛し合う者同士で交わされるものだ

 フローラは躊躇いを見せるが、ドラゴスタペリアはじっと待っている

 「もう、私にはあなたをおいて他に頼れる方はおりません」

 フローラは意を決して口を開くとドラゴスタペリアの口へと自らの口を重ねた 

 「んっ…」

 舌と舌を絡ませるとフローラの口のなかでいままで感じたことのない感覚が広がる

 それは甘く切なく、そして心地よいものであった

 「んっ?んぐっ…」

 するとドラゴスタペリアはフローラのなかに何かを注ぎ込んでいく

 「きゃっ!」

 フローラは思わず口を離すが、ドラゴスタペリアは再びフローラの口に覆いかぶさると彼女の中へと流し込み続ける

 「ふわっ……なんか……変な気分……」

 フローラは身体が火照り力が抜けていくのを感じていた

 フローラは身体に植え付けられた何かが大切なものを奪っていく感覚に襲われた

 「まさか、これは」

 それはフローラからローズドラゴンと同調する力を奪っていく

 だがフローラに苦痛はなかった

 これまでローズドラゴンと自身結びつけていたものの喪失

 それは彼女のなかにあったローズドラゴンへの僅かな未練を断ち切った

 自身が真に望んでいた自由を手に入れたのだ

 「ありがとうございます。やはりあなた様は私を救ってくださる王子様なのですね」

 フローラはそう微笑むとドラゴスタペリアは彼女を押し倒した

 「あっ……王子様」

 フローラは抵抗することなく受け入れた 

 自らの着ているものを脱ぎ捨てる

 ローズドラゴンから与えられた白く美しいドレス脱ぎ捨てるその行為はフローラに開放感を与えていた

 「あっ、そこだめぇ……」

 ドラゴスタペリアの太い爪先でがフローラの秘部に触れると彼女はビクンと震える

 「ああん……」

 フローラのそこは既に湿っておりドラゴスタペリアは器用に爪で解きほぐす

 「んっ……きもちいぃ……」

 フローラは快楽に身を震わせる

 「きて……ください……」

 フローラは自ら足を広げるとドラゴスタペリアは自身の身体の一部を男性器のようなものに変化させる

 「王子様…どうか私にお情けを……」

 フローラはドラゴスタペリアを受け入れる

 「ああっ……すごい……」

 フローラはドラゴスタペリアに貫かれるとそのあまりの質量に息を飲む

 「ああっ!あっ……ああっ!」

 ドラゴンスタペリアのそれはまるで別の生き物のようにフローラの腟内を蹂躙していく

 「あっ…んぐっ、んんっ」

 純潔を奪われる感覚は筆舌に尽くしがたいものでこれまで黒薔薇の庭で庇護され痛みや苦痛に無縁だったフローラには強すぎる刺激であった

 「うぅ……ああっ、ああっ」

 フローラは涙を流しながらもその心は悦びに満ちていた

 ドラゴスタペリアからはじめて与えられるものはたとえ痛みであっても愛おしかった

 次第に痛みは薄れていきフローラは快感を得るようになる

 「ああ……もっとぉ……」

 フローラは更なる快楽を求めて懇願するとドラゴスタペリアはより一層激しく

 動きだす

 「ああ……いい……凄く……ああっ……ああっ……あっ……」

 ドラゴスタペリアがひと突きする度にフローラは絶頂を迎える

 「ああっ……もうダメ……イク……イッちゃいます……ああっ……」

 フローラはドラゴスタペリアに抱きつくと自らも腰を振るように動かしはじめた

 「ああ……いい……いいです……ああっ……あああああっ!!」

 フローラは盛大に達するとそのままドラゴスタペリアはフローラの膣内に精を解き放つとそのままフローラは意識を失った

 「王子様…どこ?」

 目を覚ますとそこにドラゴスタペリアはいなかった

 脱ぎ捨てらた着衣と膨らんだ腹部がそれが夢ではないことを物語っていた

 「王子様。また来てくださるかしら」

 ドラゴスタペリアの不在に寂しさを感じていたがそこに苦しみはなかった

 誰しも自由になる権利がある、ドラゴスタペリアの帰りを待ちながら自身のなかで芽吹く新たな命に想いを馳せる

 だがフローラは知らなかった、ローズドラゴンと切り離された自身の命はそう長くはないこと

 ドラゴスタペリアはフローラの身体が出産に耐えられないことを察して既に彼女に見切りをつけていることを

 フローラはそれに気づくことなくわずかに与えられた自由な時間を過ごした

 数日後

 「わぁー綺麗」

 少女は美しい花畑に歓喜の声をあげる

 母から花畑には近づいてはいけないと固く言われていたがその美しさに目を奪われ約束を破りここに訪れていた

 「なにこれ」

 少女は足元をみると焼け焦げた蠍や蛇のような植物の死骸があった

 少女は訝しんでいると周囲にいた美しい植物たちは姿を変えて独りでに動き出す

 少女のその後を知るものはいない

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