自家撞着

自家撞着


わたしのマスターである藤丸立香は、端的に言ってロリコンだ。いや、少女も守備範囲、と言うべきだろうか?

人理を巡る戦いでストレスを蓄積した結果趣味趣好が歪んだのかもしれないけれど、彼と初めて出会ったあの特異点でのやり取りを鑑みるに、それはないんじゃないかと思う。

まあ、ロリコンになった理由についてはどうでも良い。問題は、クロのみならずイリヤとも相思相愛であるということだ。クロだけじゃ物足りなかったのだろうか。


とにかく、どうにかしてイリヤの負担を軽減しなければならない。そう思い、マスターへのアプローチを開始した。健全な信頼関係自体は構築できていたので、進展自体はスムーズに行ったのが幸いだった。

それ以降、マスター用のバレンタインチョコが彼個人“のみ”に向けた本命チョコになった。けれど、それは所詮上っ面だけの演技。イリヤ用と1割も共通点があるあのチョコは、結局のところイリヤ用のついででしかない。あんなもので喜ぶなんてマスターは意外と単純だ。

二人きりのデートに応じたりもしたが、それだってイリヤをマスターの毒牙から守るためだ。別にマスターと恋人繋ぎをしたかったとか、二人きりの時間を過ごしたかった訳じゃない。

男の人とのファーストキスをマスターに捧げたのだって、それが絶対に必要なことだと思ったからだ。決してマスターに恋した訳じゃない。

ベッドを共にし、ヴァージンやアナルヴァージンを捧げ、彼と将来を誓い合う恋人になったのだってそう。あれはイリヤとクロに浴びせられる濃厚純愛ザーメンを少しでも減らすためで、マスターのことを世界で一番愛している訳では断じてない。

マスターから贈られた素敵な指輪を、先に贈られたイリヤやクロと同じように左手薬指にはめたのもだ。あの時流した涙は絶対に嬉し涙なんかじゃない。


そう、これは全て「イリヤのため」だ。他意はない。

クロには「イリヤって言っとけば何でも通ると思ったら大間違いよ〜?」なんて失礼なことを言われたが、別にわたしはイリヤをダシにマスターと愛し合っているつもりなんて微塵もない。

───わたしがマスターに向けるものは、純然たる信頼だ。


───


「オォ゛ッ♥ ァ゛っあっあッあァッ♥♥♥」


マスター♥ 立香さん♥♥ わたしの旦那様♥♥♥

好き♥ 大好きっ♥♥ 世界で一番愛してるッッ♥♥♥

転身した時の衣装も♥ 神稚児としての衣装も♥ ビースト衣装も♥ 全部立香さんのザーメンまみれ♥ 大好きな人の匂いいっぱい♥♥♥ とっても素敵♥♥♥


「あぃ゛っ♥ あいしでますっ♥ せがいでいぢばんあいじでますっ♥♥ あなたぁッ♥♥♥」


駄目っ♥ こんなことじゃわたしの気持ちちっとも伝わらない♥

だからわたしっ立香さんと毎日キスするのっ♥ セックスするのっ♥ サーヴァントとしてしっかり働いてっ♥ 藤丸美遊として妻の役目もちゃんと果たすのっ♥

今日も明日も明後日も、相思相愛の旦那様のために生きる生活……ああ、幸せ…♥♥♥


「イグぅう゛ううぅぅッ♥♥♥♥♥」


───


自家撞着(じかどうちゃく)……同じ人の言動や文章などが前後で矛盾していること。自分で自分の言行に反することをすること。

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