膝枕
このふたりにはどこまでもウブで清い付き合いをしていてほしい「シャフくんは最近お疲れ気味と聞きました」
「まあ、うん」
「なのでー、膝枕をしてあげちゃいます!」
どうして正座で話をしているのかと思えばそんなことか。ぴったり揃えられた膝をパシンと叩いてレーベンは期待に満ちた目でこちらを見てくる。
誰の入れ知恵か、はたまた突飛な思い付きか。少なくともレーベンに悪気はなく、むしろ善意100パーセントで提案してくれてるのであろうことは確かだった。
それに俺とレーベンはまごうことなき恋人同士であって、膝枕をしてもらっても何らおかしいことはない。しかしそれとこれとは別の話である。端的に言うと、恥ずかしい。
「シャフくん?もしかして、嫌だった?」
「嫌じゃない」
しゅんとして、すごすごと足を崩そうとするのを見てはそうも言ってられなかった。大体彼女に悲しい顔をさせるなんて彼氏失格じゃないか?レーベンの笑顔と俺の羞恥心を天秤にかける。結果は明らかだった。
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
膝、というより太腿の上に頭を乗せる。近い!顔に熱が集まっているのがバレないように必死に深呼吸をして、できるだけ何も考えないようにする。
「寝ちゃっていいよ」
いつもより静かな声で、優しく告げられた言葉に従って眠ってしまうことにした。できるだけ早く意識を手放して、心臓が早鐘を打っているのを気付かれないようにと念じながら。
目を覚ますと、俺の頭に手を乗せたままレーベンも眠っていた。起き上がって肩を小突いてみても反応はない。
「仕方ねえなあ」
起こさないようにそっと抱え上げて、そのまま布団に横たわらせる。存外よく眠れた膝枕のお礼も兼ねて。
「おやすみ、レーベン」
無防備に晒された唇に、ほんの一秒にも満たない口づけをする。
——起きているときにする勇気はまだ持てなかったけれど。