肌を汚す
キャラバンズのアチャモ雨の中、アトリエの玄関前で展覧会からの手紙を握りながら立ち尽くしていた。
結果は勿論『最優秀賞』。
だがそれはクヌエにとって納得出来るものではなかった。
高く評価された写真と遜色ない模写力は、瞬間記憶能力を持つ彼女にとってそれは『記録』でしかないからだ。
以前から彼女は自分の奥底から溢れ出す情熱をキャンパスに出したかった。
だが、そんな情熱を思い出すたびにその時の光景を思い出し、気づけば記憶から引き出した景色の模写ばかり描いていた。
それは『作品』を作り出したい彼女にとって大きい障害であった。
ただの『記録』に最優秀賞をつける世間とそれに苛立つ自分の小ささにクヌエは雨に打たれながら失望していた。