聖杯戦争

聖杯戦争


夜の宿泊施設が集まるこの場所にて何かを振り払うように少女は走る。


「ランサー……」


「何だ?」


「撒けた?」


「…………いや、まだ付いてきやがるさっきピリッと目線感じてからずっとだ」


……時刻は夜、また戦いが始まる時間

とは言うもののランサー陣営は昨日の夜から逃避や土地の把握に時間を費やし睡眠を取っておらず体力的には余裕はあるものの万が一に備える為に宿泊施設を探し一泊の宿を求めていた。


が、疲れているからこそ狙われるというのは自然界においては当然のように行われる事なのだ


「勘が鋭いのかそういう能力でも持ってんのか?ま、バレてるなら不意打ちは無理かね」



「アナタは……確かペイル家の」


「有名人だな俺もまぁそうか御三家当主なら……木っ端魔術師のマスターでも、いや、工房すら組まずに昼頃からフラフラして拠点があるようにも見えねぇな、今からホテルに泊まるつもりだろうが、もし普通の魔術師なら拠点に罠を貼るくらいやるはずだし。そもそも、休憩するなら神秘の隠匿の必要性を鑑みても昼に睡眠を取るのが普通だ、アンタらはどうみても眠くなったから寝床を探し始めたそういう動きだ………この街の魔術師じゃあねぇのは確かだな。つか、そもそも増しか?ん?どうなんだ?」


自分達の事情を見透かすように喋るペイル家の当主

そして、マスターの発言恐らく眼の前の飄々としたこの男も聖杯戦争のマスターならと霊体化したランサーも姿を現した。


「急に現れてベラベラ、ベラベラ巻くし立てて何のようだ?」


「おっと、まぁアンタらの事情どうこうに興味は無いから安心しろ。要件は2つだ」


「なぁ………その前に一つ聞いて良いか?」


「何だ?」


「サーヴァントも連れてねぇ、魔術師がノコノコ出てくるのは不用心だと思うわねぇか?」


気迫、殺意ではないが間違いなく場を制す気が放たられるランサーが魔力を編んで生成した槍を構えそのまま意識を刈り取る為に振るった


だが攻撃は有り得ない挙動で躱される

いや、そもそも攻撃位置が間違っていた


恐らくは幻術の類い。しかし、幾ら対魔力が低い又は無くても英霊であるサーヴァントに対して現代の魔術師が効果がある魔術を行使する事は難しい。


ならば、眼の前のこの男は並の魔術師では無いのは明白だった……


「ま、下準備もせずにノコノコ現れるバカは居ないよな……さてとこのまま俺のサーヴァントと戦闘に持ち込んでも構わ無いが、もう少し話を聞く気に成っていたりしないか?えぇとランサーとそのマスターである魔術使い?」


コチラの事情を淡々と言い当てながら要求を迫る。何処に敵のサーヴァントがいるかも分からない状況で逃げるのは悪手だろう、戦うにしても更に部が悪い此方側の準備は何一つ無く手札はランサーのみ真っ当な白兵戦ならば切って戦闘に持ち込んでも良いが白兵戦に持ち込めるような場面でない状況なのは誰が見ても明らかだ。


「どうする?マスター」


ランサーも今の状況を理解しているのかコチラの意志を問う


(相手のマスターを次の一撃で仕留めるのって出来そう?)


(無理だな……あーしも術中にある以上それはここら一体を吹き飛ばす位しか方法がねぇ。というか撒く為に逃げた筈が誘い込まれったって感じだコイツは)


(じゃあ打つ手は今は無しか……)


(ただこの状況ですぐ殺しに来てない以上、相手も殺意が有るわけじゃねぇ安心しろ)


(うん)


サーヴァントとマスターは視覚の共有や念話が可能である、コレは常時ではなく一時的に回線を繋ぐ感覚に近い。そして、マスターやサーヴァント側がシャットアウトする意志が有ればそれも可能である。


兎に角ランサーとニカの相談は終わった。


「それで………要件というのは?」




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