聖杯戦争ニーゴ編オープニングイメージ

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「私………これ、から…どうすれば、いいの………」

朝起きてパソコンを確認すると、今まで作った音楽のデータもニーゴのチャンネルも無くなっていた。

何か知らないかとチャットでニーゴのみんなに聞いてみると『きょく?』『K、曲って何?なんかのアニメ作品?』と返ってきて、皆が音楽を忘れていることを知った。

嫌な予感がしてネットを検索すると、昨日まであったはずの音楽に関する情報が全部ヒットしなくて…世界から音楽がなくなったのだと理解する。

音楽がなくなったから、お父さんは作曲家にならずに、元気に起きて仕事をしている。

ニーゴの皆は、見慣れていたはずのナイトコードで、和気藹々とチャットを楽しんでいる。

……今この場で、音楽がなくなったことに絶望して、落ち込んでるのは、私だけ。

「でも…でも確かに……約束…したのに……」

作曲家だった、違う。作曲家のお父さんと『誰かを救う曲を作り続ける』ことを、まふゆと『雪が救われる曲を、雪が自分を見つけるまで作り続ける』って、そう言ったのに…。

(もう、大切な約束すら果たせないんだ)

なら、音楽がなくなった世界じゃあ、私はもう必要ない……!

消えたいっ!消えたい……!!誰か、誰か私をここから消して──。

"ガンッ、ガンッ"

壁に頭を叩きつけると、大きな音が鳴り響いた。お父さんはもう、会社にでかけたらしくて、幸い誰にも音は聞かれていなかった。

「消えたい………」

音楽がないから、私が追い詰めてしまったお父さんは元気なままだった。音楽がないから、私は『雪』との…まふゆとの約束を守ることすらできない。お父さんが元気な世界に、こんなにも悲しんでいて、まふゆとした大切な約束も果たせない。今の私は…完全にここにいる意味を失ってしまった。

だから、私はもうこの世界にいらない。ならもういっそ、消えてしまえば

『作り続けるって言ったのに』

「──あっ」

消えたくて消えたくて、仕方がなくなった途端、前にまふゆが言った言葉を思い出した。

以前、私がスランプになって、インスピレーションを求めて探しても、解決できなかった時のこと……。

「そうだよ、作り続けるって言ったんだ」

まふゆは、『雪』は、その時のことも忘れていた。でも、確かに私は覚えてる。いつになるかは分からない。でも、もしかしたらニーゴの皆が、音楽を思い出してくれるかも知れない。

「その時に、私が消えていたら、駄目だ。今度こそ、約束を守れなくなる──!」

私はコピー用紙を引き出して、シャーペンで楽譜を書き出した。

(アイデアは、ある。作曲用のソフトもみんななくなったけど、紙に曲を書くことは…できる。曲を作れる!)

薄暗い部屋の中で、勢いのままに私は紙へ曲を書き殴った。

お父さん、ごめんね。お父さんには元気でいてほしい。でもそれは、私が追い詰めてしまったお父さんにも同じで、お父さんと同じくらい…私は、まふゆとした約束が、ニーゴの存在が大切なんだ。

だから、諦めるもんか。

いつか来たその時のために、曲を作り続けるんだ。



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