聖杯作成時のSS
※注意事項※
思いついたところだけの短いもの。ぶつ切りで視点が変わる。
ジョイボーイとワーテルと翁(イメージ宝石翁だけど、まあ似たようなポジションの誰かがいたってことで)しか出てこない。
原作に当てはめてワーテルが器になってる。
ワーテルが過去に迫害されたと言う記述あり(描写等は特にない)。
ヒトの心を理解しているのものの持ち得ないワーテルと、ヒトの心を理解出来ないものの精神構造的にはワーテルよりよっぽどヒトに近いジョイボーイ。
たぶん、このジョイボーイはその後ワーテルエミュする。
notカップリング。yes友愛。
誤字と脱字はお友達。
*
「ジョイボーイ、そんな顔をしないでくれ」
「私は、君の願いに賭けたのだ」
過ぎ去った過酷な日々が脳裏をよぎる。
故郷を追われ、迫害に苦しんだ私にとって、彼の願いは空に輝く一等星のように明るかった。
「ジョイボーイ、我が友よ」
「君こそが、世界の導(しるべ)となるべきだ」
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ふいに。
叶うはずのない夢を俺に背負わせて、満足げに笑う男を殴りつけてやりたくなった。
矛盾している。
破綻している。
誰もが平等で平和である世界を望んだ。
誰もが当たり前の幸福を、当たり前に享受できる世界を望んだ。
自分が最も幸せにしてやりたかった彼は、その礎に最も相応しい男だった。
不幸の中にも、上を向いて生きることをやめない君が好きだ。
苦しみを糧に、明日を目指して歩む君が好きだ。
"なぁ……笑えよ、ワーテル!"
俺のバカを見て笑い、挫けそうになった心を奮い立たせる君が好きだ。
そんな君が、俺が、そこいらの凡人共のように何も気にせず生きられる世界を目指していた。
……筈なのだ。
祭壇へと友が横たわる。
翁立ち合いの元、彼は美しき杯へと形を変えてゆく。
潰され。混ぜられ。捏ねられて。
柔らかな微笑みを浮かべながら、彼は美しい器へと変わってゆく。
(……で、笑うな)
俺達の論は完璧だ。
俺達の術は無欠だ。
俺達の絆は永遠だ。
聖杯は間違いなく、俺達の願いを叶える。
どれだけ永い年月がかかろうと、必ず。
___でも、どうしてだろう。
(そんな顔で、わらうな)
なんだか心の奥がざわざわして、叫び出したい衝動に襲われる。
なぁ、ワーテル。無二の友よ。
この感覚はなんと言うのだろうか。
ヒトの心に詳しい君はきっと、笑って答えてくれるのだろうに。
どう対処すればいいか、考える間もなく教えてくれるだろうに。
(___たらればだ)
今更、何気ないことを惜しむくらいの人間性が俺にあったとは思わなかった。
「ワーテル」
もはや、面影すらないそれに声をかける。
「"私"はきっと、叶えてみせるよ」
そこに、俺の理想はないかもしれないけれど。
君が、俺ならと信じてくれたのだから。
ありふれた日々を思い浮かべながら、美しい杯を抱きしめた。