羿(アーチャー)

羿(アーチャー)


【元ネタ】中国神話

【クラス】アーチャー

【真 名】羿(ゲイ)

【性 別】 男性

【身長・体重】186cm・73kg

【外 見】 燃え尽きた灰のような白い髪に、穏やかな表情の偉丈夫

【属 性】秩序・中庸・地

【ステータス】筋力:B 耐久:C 敏捷:C 魔力:B 幸運:E 宝具:A++


クラススキル

・対魔力B

Bランクでは、魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。

・単独行動A

マスターとの繋がりを解除しても長時間現界していられる能力。Aランクならば一週間以上行動可能。アーチャーは生前より、単身で偉業を成し遂げた功績によりAランクで保有する。


固有スキル

・神性−

本来は天帝に使える存在であり、微弱ながらも神性を保有していたが、失態を犯した事により神籍から外された為、失っている。

・千里眼C++

視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。更に極度の集中による体感時間の操作。内(自分)の時間と外(自分以外)の時間をずらす事で、実質的な未来予知を可能にする。

・無窮の弓人A+

無窮の武練の亜種スキル。一つの時代における最高峰の弓術の手練。指先の感覚が消え失せようと、片腕が破壊されようと、腕が残るのならば歯をも用いて矢弓を引ききり、狙い通りの『点』に到達させる。

・悪獣誅殺A

アーチャーは天帝の下から去り、地上に堕りてからも中国全土を駆け巡り、人々に災いを成す魔獣、幻想種を討伐した。戦闘時、常に幻想種とケモノ科に対するアドバンテージを得る。

・仙界踏破B

本来ならば仙人の領域たる崑崙山をその身一つで訪れた逸話に起因するスキル。戦場が如何なる場所、環境下でも十全の戦闘を可能とする。

・月神の寵愛B

何処かの誰かからの加護。月光に当たっている間、月の光を自動的に魔力に変換し続ける。アーチャー自身は、このスキルの存在に気づいていない。また、Aランクの一意専心(愛)も内包している。


保有宝具

 『帝俊彤弓(たまわりしはぐれんがごとく)』

ランクB 対人宝具 レンジ99 最大補足1人

アーチャーが天帝より授かった紅弓。神造兵装の一つ。魔力を微量消費して、光り輝く矢…レーザーを放つ事ができる。真名解放の必要はない。

『凶獣玉懸(かすいまじわりしぎょくはん)』

ランクC 対人宝具 レンジ1 最大補足1人

アーチャーが九嬰と呼ばれる怪物を討伐した後、奚禄山という山が崩れ落ち、その中から現れた弓懸(ゆがけ。籠手のようなモノ)。

炎と水を操る九嬰の力が宿っており、装着者はBランク相当の魔力放出(炎)と魔力放出(水)が使用可能となる。

『羿射九日(きゅうようのたそがれ)』

ランクB+ 対神宝具 レンジ99 最大補足9人

アーチャーの最も偉大たる功績、天帝の息子である十匹の金鳥(きんう。太陽の化身であるカラス)の内九匹を撃ち落とした『技』が宝具に昇華されたモノ。第一宝具の帝俊彤弓で作り出したレーザービームを九発連続で放つ。ただそれだけ。                 前述の通り、本質は純然たる技術である為、使用する魔力量はレーザーの生成にかかる分だけ。しかしその一撃一撃が大地にクレーターを作る程の威力を持ち、しかも燃費が良いのを利用して通常攻撃よろしくドカドカ使ってくる。                  また、この技自体が『天帝(神)の息子である太陽を殺した』という概念を包括している為、太陽の力を持つ者(ガウェイン等)、太陽神の加護を得ている、若しくは縁がある者(カルナ等)に対してダメージが倍加する。




『天翔黒狗(みたつのりゅうせい)』

ランクA++ 対星宝具 レンジ99 最大補足1人

羿射九日。前述の通り、アーチャーは九匹の金鳥を撃ち落とした。その際に天帝から、十本の矢を受け取っていた。アーチャーは貰った弓矢を使い、次々と金鳥に放っていったが、地上の帝は太陽が全て消え去ってしまうのを恐れ、アーチャーの矢筒から一本だけ矢を抜き取った。そのお陰で、太陽は今も我々の頭上から燦々と大地を照らしているのである。

さて。確かにアーチャーは絶大な力を持つ。その一矢は山峰を崩し、クレーターを作り出す程の威力を持つが、逆に言えば『その程度の威力』である。とても一矢だけでカラスの姿をとっているとは言え太陽の化身を討ち滅ぼす事はできない。ならば何故、アーチャーはそれができたのか。

答えは一つ。天帝が与えた矢が、星を破壊する権能を秘めていたからである。より正確に言えば権能ではなく、地球という星に対する脅威を破壊する為のチカラを弓矢に与えていた…というべきであろうか。

即ち、かの星の聖剣と出身を同じくする原義的な意味での神造兵装。神が造りだした武装でなく、人々の『十陽を討ち滅ぼしてほしい』という願いによって星の内海から産まれたモノ。                   与えられた十本の矢の内九本は最早この世に存在せず、境界記録帯でも再現できない。

が。唯一、最後の一矢だけは正しく再現できる。

弓と矢さえ在れば充分。至上の勇者は、再び世界を救うべく、顕れる。         一矢は天を超え、宙を貫き、星を堕とす。




 解説

真名、羿。后羿、大羿等とも称されるが、この項では便宜上羿と表記する。

天は帝俊(以後、天帝)、地は堯帝が治めていた刻。天帝の妻、羲和は十の太陽…金鳥を産んだ。しかし、手順を違えた為に、本来順に巡るハズであった金鳥は共に天を巡った為に、地上は灼熱に満ち、人々は絶滅に瀕していた。堯帝は天帝へと助けを求め、弓矢を賜り天より地に降り、世界を救ったのが羿である。

そこでの行動は宝具欄の通り。無事に金鳥を一匹を残して殲滅し、天へと戻った羿であったが、ソコで神籍…つまり、神としての資格を剥奪され、地に堕とされてしまう。天帝としても帝としての面子があり、地上を救った羿に感謝したくもあるが、ソレは息子である金鳥を殺した羿を許す事になる。…結局、天帝は羿とその妻の神籍を奪った。羿は笑って、「まぁ、仕方ないでしょう」と承った。

さて、地上で生きる事にはなったが、一つ問題がある。妻である嫦娥だ。彼女は本来天帝の娘であり、天帝が羿の実力を認めて嫁にやったのだ。天界にいた頃は仙術も使いこなす優秀な女性だったのだが、地上に堕ちた際に仙術を失い、ただの女になってしまった。

最初の頃は羿が悪獣を誅していたりしても何も言わなかったのだが、段々とまた天へと還る為に不老不死の薬を手に入れろ、私は仙女だったから崑崙山に行って名前を出せば手に入る、と急かされるようになった。いくら羿とは言え妻には弱い。素直に従い、崑崙山へと向かう。

崑崙山に住まう仙女の長、西王母は、羿の名を聞くと、二つの薬を取り出し、「一つ食べれば不老不死に、二つ食べれば神になれます。生憎二つしかないので、吉日をみて夫婦で食しなさい。」と言った。

羿は嫦娥に西王母に言われた事を告げ、吉日を待った。八月十五の日。いつもと同じように、鍛錬を繰り返す。また地に悪獣が顕れても、民草を守れるように。          犬が、吠えた。羿が飼っている忠犬が、倉の下で異様に吠え立てるのだ。何かと思い、倉に向かうと、扉が開いている。…壺の中に容れていた筈の薬がなくなっている。倉中を探すも見当たらない。嫦娥に事を報せねば、と、呼びに行くも、彼女もまた消えていた。何処へ行った、まさか盗人に押し入られて捕まったか、困り果て、天を仰ぎ見る。


 女がいた。愚かな女。欲深い女。愛しい女。わらって、月へと消えていった。    神に戻りたかったのか。父である天帝に羿との神籍を戻すように伝えたかったのか。   最早誰にも分からない。


 「………仕方ない、な。仕方ないのだ、奴はそういう女なのだから。」一人で、呟いた。


数年後。羿は何人か弟子をとったが、誰も彼も音を上げて去っていった。だが一人だけ、逢蒙という弟子のみが残り、ソレを小間使いとして身辺の世話をさせていた。      羿は何も求めず、最低限の生活のみを続け、名声とは程遠い生活を続けていた。      だが、逢蒙は野心家であり、羿を殺して自分が最高の弓の名手になろうと目論み、不意を打って羿を射殺そうとした。無論、その程度を捌けぬ羿でなく、射殺は失敗。逢蒙は野心家ではあるが、羿を師として尊敬していた為に、「師殺しを目論んだ愚か者を生かしては貴方の名誉に関わります。私を殺してください」と懇願した。しかし羿は、「お前の功名心は治らぬモノだから仕方ないさ。己を省みたのならば、また私の下で共に暮らしてくれ」と、逢蒙の行いを赦した。赦してしまった。

逢蒙はこの一件から羿を異常なまでに恐れた。己を諭した時の羿の顔に、人間性を感じなかった。あの男はヒトのカタチをしたナニカであったと、気づいてしまった。      そして。因果は巡るモノ。嘗て羿が射落とした九匹の金鳥の怨念が、逢蒙の魂を蝕み、その身を操った。逢蒙は桃の木で作られた棍棒をもってして、羿に襲いかかり─────────


「ああ…

仕方ない、仕方ないさ。」

逢蒙殺羿。逢蒙のその後は語られていない。一説によれば羿の真似をして弟子をとったとも、或いは狂い死んだとも…


 人物

万人への愛を忘れず、どんな逆境でも挫けず、如何なる状況下でも命終わるまで活路を見出し続ける、完璧な存在……一見、そう見える。

その本質は、世界を救うという事のみを第一に優先する、余りにも人間離れした精神性を持った存在。ヒトを愛しているのは間違いないが、ほぼ犬や虫と同等の存在と認識しており、雌雄の区別すらついていない。彼が興味を示す、或いは好感を持つ存在は、妻か、逢蒙程度だろう。(逢蒙も大分無興味に近いが)

超然的な性格故に、己への不幸も殆ど興味なく、仕方ないとして切り捨てる。…というよりも、基本的に『世界救済』『人助け』以外に興味がない。

中国思想において、『人は何かを成すために産まれてきた』というモノがある。ソレが羿にとっては『世界救済と人助け』であり、その使命を果たす為に精神の殆どを切り落とした、というだけである。コレは誰かにそうあれとしたモノではなく、産まれつきのモノ。本来であれば彼は永久にそのままであっただろう。

しかし。一人の女との出逢いが羿を変えてしまった。相変わらず世界救済も人助けも第一だが、それと同じ程にその女を愛してしまった。

本来ならば後悔のなかった筈の人生。弟子に裏切られ、その棍棒を脳天に叩きつけられる瞬間。

 月を、視てしまった。忌々しい程に美しく、己を嗤うかのように、輝いていた。

 ああ─────…キミと出逢わなければ、私は世界を守るだけの道具で在れたのに。

死を前に、嗤う。下らぬ自分に。

素晴らしき自分の人生に。


己が今まで奉仕し、褒め讃えられた万人への愛ではなく。

己を裏切った女への下らない恋心を抱いて。男は、死んだ。

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