羽根をもがれた??は何を夢想する

羽根をもがれた??は何を夢想する

伝書桜

ガッ お前がいるからバキッ 消えろドカッ 存在すること自体が罪だガンッ










消えて仕舞えばいいのに













(・・・・・・・・・)

牢屋の中、虚な瞳で虚空を見つめる少女。その体には夥しい数の打撲痕、火傷痕、切り傷などが応急処置もされずに放置されていた。ひどく痩せて、ボロボロだった。彼女の名前は◼︎◼︎◼︎。

生まれは小さな廃村も同然の集落。神社の巫女の一族だった。その家系の者は絹のように美しい銀髪、紅玉のような瞳で生まれる


はずなのに

彼女だけは射干玉の髪、青玉の瞳。明らかに異質だった。更にその目には化け物を映していた。なのに一族の中では1番、力が強かった。表は「現人神」と崇められた。


裏ではいいようにこき使われた。昔からの信仰を大切にする村だった。異端は排除。指示したのはそこの村長だった。


或る時、痛めつけられると、いや正確には彼女の血が流れると力が強くなるらしいことに気づかれた。彼女は前々から知っていたから、知らなければならなかったから、必死に隠していた。なのに見つかった。






ここからは地獄、いやそれよりも酷い日々だった。蹴られ、殴られ、斬られ、酷い日には、熱した鉄で肌を焼かれた。

彼女は何時からか感覚も感情も心も壊れていた。







10歳の頃・・・彼女のモノクロな世界は色づいた


「大丈夫?」


とある少女が話しかけてきたのだ。彼女の名前は「花美」。本当に花のように優しい子だった。

「?」

「あれ、聞こえてないのかな・・・それとも話せない?とにかく治療しなきゃだよね!痛かったよね〜・・・・ごめんね〜・・・」

「・・・・・・・」

最初は不思議な子だと思った。何も自分が痛めつけたり、こき使ったりしたわけじゃあるまいにそう謝ってきた。

それからというもの、彼女は毎日遊びに来た。


「今日はね〜・・・じゃ〜ん、どんぐりの首飾り!これ自分で作ったんだよ〜!すごいでしょ〜」

「見て〜!これそこで摘んできたの!タンポポっていう花なんだよ〜!

「これね〜おおばこ?っていう草なんだって!これで草相撲しよーよ!!」

「うちは将来、お花育てる人になるの!お花綺麗だもん」


花美の話は◼︎◼︎◼︎にとって、とても新鮮でキラキラして聞こえた。

その日から、絶望は未来の希望へと変化した。

感情も元通りになりつつあった。言葉も辿々しいがちゃんと喋れるようになってた。

彼女が来るから、彼女話を聞きたいから。そんな思いだった。何時もの暴力だって辛くはなかった。


しかし、或る日を境にぱったりと来なくなった。

(なんで来ないの?また草相撲したい、またたんぽぽの綿毛を飛ばしたい、また・・・またお話聞きたい・・・。)


「いつかまた来る」そんな期待を胸に、日々を耐え過ごしていた。




時は経ち、二年後・・・牢屋にあの子は来た。





あの村長の面布をつけて





「え・・・」

「・・・・・・・・」

「はなみ?」

「悪いと思ってるよ、君に希望を見せた。」

「どうしたの?」

「でもね?最初からこの結末だったんだよ。だって・・・


     

     うち、村長の娘だもん」



「は・・・?」

「は?じゃないって。そゆこと。」

「でも・・・あんなに・・・いろいろみせて、はなしてくれたのに・・・」

「あ〜も〜めんどいな〜演技だって。ど?上手かったっしょ?」

「ん・・・で」

「ん?聞こえな〜い」

「なんでよ!!なんでここにいてくれなかったの!!ひかりをみせてくれたのは、はなみじゃん!!なんでみせたの!!こんなにふうになるならみたくなかった!!なんでよ!!なんでなの!!」

「ッ、上げて落とした方がダメージはデカいでしょ?ま、とりあえず、うちらは上辺だけだったってこと〜。うち、これからはここの村長だから。じゃね。」

「まっt、ゲホッ、ゴホッ」



絶望した。希望は潰えた。またモノクロの世界になった。また地獄だった。それは前よりも酷かった。光は見えなくなった。最早、動く人形だった。楽になることすら叶わない。諦めることさえもやめた。

唯一の救いは彼女がまだ純潔のままであったことだろう。しかし、失うのも時間の問題だった。そういう目で見られる頻度が以前と比べ格段と増えたのだ。






こんなふうになるなら、逸そのこと消えて仕舞えば良いのに






一年後・・・この出会いが現在の彼女を作った。


「この子・・・!大丈夫!?生きてる?!生きてるなら返事して!」

(な、に・・・誰・・・?)モゾッ

「!!!!!生きてる、生きてるわ?!待ってて、今開ける!!」

「だ・・・れ・・・?」

「よかったぁ・・・。ちょっと待ってて傷治すわね・・・」


そう言い、女性が手を翳すと、みるみるうちに傷が治っていった。


「さて、今すぐここから出るわよ。」

「え、でも・・・みつかったら・・・」

「大丈夫、うまく誤魔化すわ。私は桜宮朱音(あかね)。貴女のお名前は?」

「なまえ・・・わかんない・・・」

「そっかぁ・・・じゃ、逃げたあと決めちゃいましょうか!」

「ぇ」

「しっかり捕まっててね、飛ばすわよ!!!」

そう言うとその女性___朱音は◼︎◼︎◼︎を車に乗せ一直線にある場所へと向かった。




そうして着いたのは大きくて綺麗な日本家屋。

(綺麗・・・ここどこ・・・?)


「ただいま〜!みんな〜新しい兄弟が増えるわよ〜!」

呼び掛けると、たくさんの人が走ってきた。

「ほんと?!」「やった〜!!」「姉さんお菓子作ろ!その子の歓迎会しよ!」「いいよ〜、やろやろ」「どんな子なんでしょうかね〜、楽しみです。」「女の子がいいな〜!一緒に遊びたい!!」

「はいはい、落ち着きなさい(苦笑)。ちょっとお風呂沸かしてきてくれない?この子、だいぶ訳ありでね。まずは綺麗にしてあげたいの。」

「はぁ〜い!!」「行こー!」「俺、お茶かなんか淹れてくるわ」「さっすが長男!気が利くぅ〜」

「全く・・・・みんな明るくていい子でしょ?ま〜、すぐには信じられないかもだけどね」

そう彼女に微笑みかけた。


「は〜い、みんな集まった?では、毎回恒例となりました!この子の名前を決めよう会議〜〜!!!」

「「「「「「いえ〜〜〜!!!」」」」」」

「どんどん言ってこうか!もう口々にだしちゃって!」

「加奈子!」「詩織・・・とか?」「ん〜、聖子!」「いや、歌手やん。あ、俺は瑠衣かな」「これは?咲夜」「う〜ん・・・・、あ、礼佳とかどう〜?」

「はぁい、全員出した?じゃあ、ここに出た名前あるから好きな名前、選んでみる?」

「え・・・いいんですか・・・?」

「いーの、いーの!むしろ積極的になって!」

「じゃ、じゃあ・・・・」

そう言っておずおずと彼女は一つの名前に手を伸ばした。


「礼佳・・・礼佳がいいです・・・・」


「ほんと?!やったぁ〜!あ、私、凛々華って言うの。よろしくね!」

「あ、凛、ずるーい!私、紅葉ね!!!」「抜け駆けすんな凛姉!!俺、銀杏!!」「私もします!紫穂です。よろしくお願いしますね。」「僕は郷琉。仲良くしよ!」「俺、祇恩な!この中での最年長!」

「あ、ええっと・・・よ、よろしくお願いします・・・?」


この家族は本当に礼佳によくしてくれた。彼女が化け物が見えることを言ったら、何と全員同じものが見えるし、礼佳と似たような力を持っているのだ。


朱音、凛々華、紅葉、そして銀杏は呪術師だった。

「あのお化けみたいのは呪霊って言って、貴女の持つ力は、術式っていうの。私はそれを使って人を助ける仕事をしてるのよ。」

そう朱音は言った。そしてどんなふうに使うのかも教えてくれた。


彼女は小・中学校に行ってない。だから家族総出で勉強を教えた。礼佳は頭が良かったので、割とすぐ解けるようになった。拾われるまでのことも詮索して来なかった。新しいことも初めて知った。美味しいご飯も食べさせてくれた。暖かいお風呂にも入れてくれた。


      家族の温もりを感じさせてくれた。


しかし、そんな中彼女は、

(今はよくしてもらってるけど、どうせそのうち裏切るんだろうな・・・・・)

と人間不信に陥っていた。


そんな中、未だ暗い礼佳を励まそうと凛々華はあるものを作った。

「今日はね〜〜〜じゃ〜ん!!これ庭に落ちてるどんぐりで作った首飾り〜!上手くできてない?!」


「今日はね〜・・・じゃ〜ん、どんぐりの首飾り!これ自分で作ったんだよ〜!すごいでしょ〜」


それを見た瞬間、礼佳は・・・・・



泣いた。


壊れてからというもの誰1人として感情を見せることがなかった礼佳が泣いた。


「ヒック、ウウッ、ヒグッ、ウワァァァァァン!!!!!!」

「え、れ、礼佳?!ごめんね、迷惑だった?!う、ど、どうしよう・・・あ、そうだ」

と凛々華はないてる礼佳をだきしめた

「えらいね、よく頑張ったね、もう我慢しなくていいんだよ。」


「落ち着いた?」

「うん」

「今まで大変だったんだよね・・・なんかあったら何でもいいから私たちに話してよ、できる限りたくさん手助けするから!!!」

「うん。」

それからというもの、礼佳はここの家族に懐いていた。

特に凛々華には懐いて、何かあるごとに

「凛姉、凛姉」と着いていった。


「凛姉、あのね・・・・あのね、ここに来るまでね・・・」

と過去を切り出しても、凛々華は時々頷くだけで何も言わなかった。

「そっか・・・そりゃすぐ人を信じられるわけないよね・・・。うちも最初はそうだったもん。」

聞けば、ここの家族は全員拾われた、救われた子なのだそう。

「話してくれてありがとう。これからもよろしくね!」

過去を話してもいつもと変わらず笑顔で接してくれた。


いつか、礼佳が「大きくなったら凛姉と同じ職業がいい」とこぼした事がある。

「・・・・この職業はとても危険なの。死が隣にあるの。それでも行きたい?」

「うん。凛姉と同じように人助けしたい。」

「そう・・・本当は行って欲しくないんだけどね。礼佳は優しいね。」

と壊れそうな笑顔で言った。







「ねえ、凛姉、私のこと置いてかない?」

「大丈夫、私たちは絶対、礼佳を置いてったりしないよ。約束、ね?」

「うん!」





さあ、寄ってらっしゃい、観てらっしゃい。今宵、上演致しますは一世一代の大舞台、1人の女の生涯の話でございます。どうぞ、最後までご覧ください。




羽根をもがれた徒桜は何を夢想する








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