美女と美女

美女と美女

天翔ける翼の最高傑作

「基本お高く止まってるっスね、ただ全盛期だったウチをレースでもドロワでも女にしちまうだけの実力はあるのがなまじ厄介っス」


こんな札付きみたいな言い草をしはするが、アタシはオルフェーヴルが世界一強いウマ娘だって思ってる。

三冠だから?違う。有マでの初の直接対決で、8バ身以上チギられたから?不正解。

……難病だった大ファンのあの子が、遠い遠い、天国からでもすぐ分かるように、ただの勝利じゃなくて『圧倒的勝利』を自ら課し、実際にやってみせたんだぜ──

トレーナーをもどつき回す暴君が他人の為に金細工のレースをしたのは 、これが最初で最後だったらしい。アタシ知った時、わけもなく涙が止まらなくなってよ──本人にゃ秘密だぜ?すぐ照れるからな。


「秋天で俺が爆発して撫で切った時、滅茶苦茶悔しがってたらしい。『秋天は覚醒の場所』ってのは今でも変わらねえ位なのに。見ただろ?『天才少女』に『全世界が追う逃亡者』の偉業を」


ま、ジャスタウェイも世界のウマ娘なんだけどな。アタシの無二の相棒。普段は割と丁寧だが、アタシ達の前でだけは合わせてるのか砕いた喋り方をしてくれる。

昔っからジャスのことを『善戦ウマ娘』だとか『フロック』だとかバカにする奴は、全員潰してきた。勿論レースでな。アタシ達3人並んでても勝てるのは、あの緑の帽子のミスパーフェクト、トキノミ……やめとくか、この話は。


「──待てよ、アタシ達3人いたのにブチ切って勝ったんだよな?ジェンティル」


「ドンナラストランの有マっスか?それウチいなかったっスよ。大舞台で2着以下なんて取ったら──もうあの子に合わせる顔、ないっスから」


「ちゃうちゃう、前回のトゥインクルシリーズ交えたエキシビジョンの模擬、急遽アタシ達が引っ張られたやつ」


「オル自身が脳焼かれてんなー、『金色の暴君』が湿っぽくていけねえや」


「『Just a way』が何言ってるんスか、今でも”最も名前が格好良くて、かつ名は体を表す最強のウマ娘”って強火ファンいるっスよ」


いつもの3人。気の置けない奴等で、軽口を叩き合う。何と言うか……良いよな、こういうの。


「貴方達は、相変わらず褒めているやら何やら──ただ10分5秒前に全員詰めているとは、意外でした」


「相変わらずマメだなー、フラッシュ。安心すらすっぞ」


「お疲れ様です、フラッシュ嬢。これでも外では丁寧で通してるので」


「ウッス、いつもと違う匂いっスね、その香水は『トレーナー』が選んでくれたんスか?」


「『トレーナーさん』と一緒で、すぐ気が付くのですね。HERMESの『李氏の庭』を頂きましたので、早速」


「うわ強っ、無敵か?」


「──貴方達ほどではありません」


「なに言ってんだ、何だかんだしれーっと掲示板にいるだろ、しかも恋愛じゃ一着至上主義」


「敢えて、貴方達の流儀で行きます──Scheiße!」


──いつものたむろってる空き部屋に『いつもの3人』。そこにエイシンフラッシュを呼び出したのは、他でもない『ジェンティル攻略』のためだ。

正味最初は、オルフェと同じ考えだったんだよな。お高く止まってる、レースでぎゃふんと言わせてやろう……って息巻いてた。結果は2勝2敗で引き分け──改めて思うが、ジェンティル、マジで強えよな。

で、アタシ達が気に入らないから強く当たる……っていうのは藪睨みで、どうやら別の理由があるってのは分かったものの、3人じゃイマイチ答えには辿り付けない。トーセンジョーダンのやつはアタシがいると色々めんどくせーから、フラッシュに聞いてみようってなった訳だが──


「ただ、私を選んだのは、ある種正解かもしれません。単刀直入に言いましょうか、ジェンティルさんはゴルシさんのことを──」


「ストストストーップ!ちょいちょいちょい!……マジ?」


「ええ、まじ、です」


これ言われた時、言葉とは裏腹に心は納得しちまったんだよな。

喉のつかえがとれて、あっアタシはぎゃふんと言わせたくて走ってたんじゃなくて、ジェンティルに振り向いて欲しくて、何ならアタシだけを見て欲しかったんだ、って……


「オーマイガー、それ以外言えねえよ俺」


「何か予想外っスね、ドロワでウチと組んだ時は高飛車なだけで、全然そんな素振りなかったっスよ?」


──逢魔が時を迎える、帰り道。こっからはなんていうか、色々ぐちゃぐちゃだった。


「オメーとデートやってた時のジェンティルの様子を教えてくれ、どこまでもどこまでも細かく、はいシンキングタイムは1秒」


「落ち着いて欲しいっス!ここだけの話、あれはウチがドンナに叩き合いで負けたから全部右向け右で従った結果なんスよ!……向こうも男役だからなりきるため、ウチをオレサマ気質でブンブン振り回して……ってかいつもの調子じゃないっスよ」


「あんなん言われたらこのゴルシ様でも取り乱すわ」


「ま、なるわな……ったくどうすっか──いっそ俺達でジェンのマル秘情報でもすっぱ抜くか?オル」


「正直、面と向かって茶化せなくなったっスね──ウチをパシるとか、高く付くっスよ?」


「……マジで申し訳ねえ、オメーら頼むわ」


頼んで良かった、んだよな?あの夜はジェンティルのことずっと垂直に考えてて、全く寝られなかったしよ。

……──ったくしゃーねーな、ここは腹ァくくるか。お誂え向きに、ゴルシちゃんの本気を見せるにゃあ丁度いいドロワが近々控えてら。

ジョーカーは何とでもペアになれるって事、見せてやるからよ──

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