美は朽ちぬもの28

美は朽ちぬもの28

鈴澄 音夢

注意

・終始寝ぼけているGWちゃん視点

・会話少なめ



耳元で鳴らされたベルに、眉を顰めながらも体を起こした。この起こし方はギャリーだ。目が開かないけど、分かるわよ。

前後左右に揺れる世界の中でも階段を降りているのは分かるから、ご飯を片付けたいから起こしたのね、と予想は立つ。大人しく誘導に従って前に歩くけれど、いつもみたいに運んでくれないのは、何でかしら。

「ミキータ、顔を洗う前に食事を取らせてしまうガネ。この子は寝惚けている間なら、痛みが無い限り何も認知しないガネ」

寝起きで耳が遠いのかしら。遠くからギャリーの声が聞こえて来た事に首を傾げていると、ミキータに私を押し付けたのか、違う方に体を引っ張られる。

カウンターに座らされて、お皿が置かれる音でほんの少し目が開いた。まだまだボヤける目でお皿を見る限りだと、具が多いから、普通のご飯ね。

髪を梳かれなから食べるけど、下に引っ張られて食べにくい。食べる事に集中していたら気にならなくなったけど、規則的に梳かれるのが気持ち良くて寝そうだわ。

漸くパッチリと開いた目が淹れたての紅茶を捉え、角砂糖を三つ入れるギャリーの手で私の分だと気付いた。彼に淹れてもらうのは久し振りだなと思いながら、カップを時計回しに回す。

「おや、ミルクは要らないのカネ」

指は入れない。余った指で取手の下を支える。あと、は「ソーサーは置いたままだガネ」言われなくても、覚えてるわよ。

ふわりと揺れた湯気はアッサムの香り。

傾けたカップはほんの少しだけぬるいお湯にケミカルな甘さがあって、シロップも入れられていた事に気付いた私は、いつもの角度に視線を上げた。

「おはよう、ぎゃ、るでぃーの」

「寝惚けてたな」

「寝惚けてないよ、ギャルディーノ」

「呼び名が昔「気のせいよ」・・・誤魔化されてやるガネ」

口では負けるから急いで洗面所に逃げ込んで、鏡に映った私がいつもの髪型と違う事に気が付いた。

上半分が編み込まれたハーフアップで、下半分が緩いウェーブになっているけど、アイロンを掛けられる時の熱さに覚えが無いから寝癖か結び癖かしら。前髪の流石に櫛だけでは直せなったらしい頑固なハネが、後髪とミスマッチ過ぎるわ。

そこまで考えて、いつの間にか結われていた髪のゴムがいつもと違う事に気付く。


『ミキータ、顔を洗う前に食事を取らせてしまうガネ』


他の人もいたの!?



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