呪いは時として罪となり罰となる
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ここの>>119の続きより
「では・・・始めよう。」
彼女・・・桜宮礼佳はそっと短刀を抜いて一気に触手に斬り掛かる。
しかし、剣戟を見事に受け流されダメージが入らない。
「チッ、くそっ。無駄にニョロニョロして、もう!!!」
その後も攻撃を続けるが、如何せん動きが捉えづらい。
そのせいで幾ら斬り込もうとしても全く攻撃が通らない。
「もう!!!!イライラする!!!!!(うまくダメージが入らない!!!)」
瞬きの合間だった。その一瞬で触手の姿が揺らぎ、人の形をとった。
「・・・え?何これ、ピエロ?」
一瞬の思考の停止、一瞬の攻撃の停止、その隙を縫ってその道化師は攻撃を繰り出した。
「は?!うぇっ、あぶねっ!!!(自分の莫迦、今は戦闘中じゃ!集中せえ!)」
目の前にはナイフ。其れを短刀で弾き返す。ギリギリだった。背中に冷や汗が伝う。
『あはははは、弱いね。やっぱり弱いね。そんなじゃ僕には勝てないよ?』
嘲笑う道化師、その間もナイフは延々と投げられ続ける。
「っ!(くそっ、攻撃に転じたいのに・・・捌くので手一杯だ!!)」
『無理だって、君には僕のことを斬ることなんてできやしない。うふふふ。』
「うっせぇ、莫〜〜〜〜迦!!うちだって術師はってんだ、負けるかよ!!」
そう強がってはいるが、ナイフを避けて、いなして、弾き返して。それだけしかできない。その攻撃は尽きることはなく、攻めに行こうとしても触手に阻まれる。
「は〜〜〜もう!!!!いい加減にしろっ!!!!!」
『だぁから無理だって、あきらめたら・・・わっ。』
しかし、そこで道化師の動きが乱れたのである。
「よっしゃktkr!!!」
其れを好機とばかりに斬りかかる礼佳。
道化師はそんな彼女より一瞬早く体制を立て直し、その一閃をナイフで軌道をずらした。
しかし、その攻撃はその道化師の仮面に届いていた。その素顔は・・・
「は・・・・?わ、たし・・・?なんで・・・?」
自分自身だった。
『あははははは。君は僕で、僕は君。君が僕という仮面を被り続ける限り、君は僕に勝てないよ。わかるでしょ、だって君は僕なんだもの。うふふふふふ・・・。』
「っ!!!!ぅるさい・・・うるっさい!!!!そんな訳・・・・っ!!!」
『あはははははははははっ!!!!』
どこか狂気的なまでの笑みを浮かべながらナイフで斬りかかってくる自分の姿をした“モノ”。礼佳は、それが敵方の術式による幻影ということは完全に失念していた。
「っ、ぐっ、ふっ!!
(私は、仮面を被り続けている。でも、ここでこいつの言葉を認めたら、今までみんなを欺いていたことになる・・・!でも・・・でもっ!!!)
『うふふふ、どうしたの?剣に迷いが出ているよ?あはは、いい加減認めなよ。君と僕は同一存在なの!あっはははははは!!!!!!』
自分と瓜二つの彼女。力も拮抗しているが実体がある以上、礼佳の方が早くに限界が来ることは明らかだろう。彼女が覚悟を決められず、道化師の彼女が純粋な殺意だけどぶつけてくるのも一因だった。
それに彼女の持つ短刀も永遠に使えるわけではない。そこにあるということは必ず摩耗する。そろそろ、短刀も限界を迎えてきた。
「っ!!(まずっ・・・短刀折れた!!!!!!)」
『あはははっ、限界かい?もう限界かい?!バイバイさようなら!!!』
ナイフを振り上げる道化師。其れを呆然とした様子で見つめる礼佳。
周りで仲間が呼びかけるが聞こえていない。
(ああ・・・もう終わりだ・・・ここで、死・・・・!)
諦めて其の生を投げ捨てようとしたその時、
「桜宮礼佳!!!!」
愛しい、愛しい、彼の声が響いた、気がした。
「・・・・ああ、そうだね。私はこんなところで散る徒桜なんかじゃない。果ててしまうのであればいっそ派手に爪痕残してからの方が粋というもの。死んだら死んだでその時じゃ、やってやらぁ!!!!!!」
蝶が、舞った。烏が、鳴いた。鶴が、声を上げた。
『何?急にやる気になっちゃって。うざい。消えて。』
明らかに顔を顰めながらナイフを投擲し、こちらに突っ込んでくる。
「折れても使い道はあるよね。君への冥土の土産じゃ、有難く受け取ってーな!!」
折れた刃を彼女に向かって投げる。
『そんなもので気を逸らせると思ってるのかな?莫迦じゃないかな?』
そう言うと道化師はナイフを彼女に突き立てた。
「悪いけど・・・狙いはそっちじゃない。」
“分身”の礼佳は蝶になって消え去った。
それと同時に半分に折れた刃が彼女の胸を貫いた。
『は???騙すとか・・・卑怯じゃん!!!』
「嘘コケ、そっちだって勝手に私の姿使いやがって。肖像権って知ってる?」
『こんの・・・!!』
逆に煽られて激昂した道化師は触手を彼女に伸ばす。
「ごめんけど、基本効かないんだわこういうの。」
その触手は彼女の式神によって散らされる。
『っこのクズが!!人を騙すことでしか自分を保てないくせに!!』
「うん、知ってる。だからね、受け入れることにするの。仮面も自分。中身も自分。場面によって使い分ければいいじゃん。ああでも、紫苑と2人の時は素でもいいかな〜、なんて。」
ギャイギャイと触手が罵っているが、知ったことか。
「今回、はっきりわかった。自分は自分。仮面だろうがなんだろうが関係ない。まとめて愛せば無問題。と言うわけでもうそろ消えてもらいます!」
『このやろっ・・・!!!』
「さっきの言葉そのまま返すね。バイバイさようなら。」
短刀に呪力が流れる。
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!』
「はあ・・・ああは言ったけど・・・これからどう接していけばいいかな。」
と1人苦笑して、他の人に加勢しに行った。