総力戦「イカロス」前日譚、部長と新部長
プルルルル…プルルルル…ガチャッ
「私だ…ああ…そうか、遂にMTR部が動き出したか、ああ…直ぐに向かう…貴官もすぐに離脱して後は私達に任せておけ」
『ヴァルキューレ公安局だ!お前達MTR部連合の部長には、今回の武装組織イカロスの決起に加担している疑いが掛けられている!大人しく我々の捜査を受け入れろ!』
「まだ真っ昼間なのに…『狂犬』はよくお吠えになりますね」
「…は?どうしてお前がここに…?」
「誰と勘違いしているのかは知りませんが、私はずっと本部の中で今回の騒動に対応すべく準備を整えて居ただけですよ?公安局や各校の治安維持組織だけでは手が足りなくなりそうだと思いまして」
「お前が部長なら、今アビドス砂漠に居るアイツは何なんだ!それに、イカロスの構成員も元々MTR部に所属が確認された生徒ばかりだというのにどう言い訳を…!」
「逆にお聞きしますが、本当に、本当に彼女達はMTR部の部員だったんですか?」
「何を言って…っ!?クソッ…頭が…」
「さあ、現地と映像が繋がって居ますよ?これを見て、それでも彼女達と我らが仲間だと言えますか?」
(なんで…人が幾重にも重なって見えるんだ…見てるだけで頭痛がする…これは一体「誰」なんだ…!?)
「ぐっ…一旦、確認の為に署に戻ります…失礼しました…」
「お気になさらず、捜査の協力はもちろん…今回のような有事の際はいくらでも力になりますよ」
「………」
「上手く…騙せたかな?」
「ええ!バッチリですとも!「追憶」の効果で個人として認識されなくなった部長達と、部長と瓜二つに変装された墓守ちゃんの合わせ技で、カンナ局長はもうMTR部に疑いの目は向けられても動く事は出来ないでしょうね!」
「…君はダブルスパイして心が傷まない訳?」
「普通に痛いですよ?それはもう銃身に刻まれたライフリングのように深々と傷が刻まれるような気持ちですとも!」
「浅っ…ていうか君離脱命じられて無かった?早く戻らなくていいの?」
「あっヤバっ!それでは失礼致しますね『部長』!」
「部長…かぁ…まだこの呼び方には慣れないな…」
「はぁ…本当にこれで良かったんですか…?部長…」