続き
「えっ! その子があのペンギン? どういうことだよペンギン」
「あ〜、みんなの前でまとめて話すよ」
***
「——という訳で、集まってもらったが……」
チーオは机の真ん中で、クルーたちに群がられている。
ベポやジャンバールなどデカいのも居るせいか、少し怯えた様子で手作りぬいぐるみを抱きしめていた。
「へェ、小人族か、初めて見たな」
「小人ってしっぽがあるんだなー!」
皆初めて見る小人族に、興味津々のようだ。
「で、話ってなんなんだ? ペンギン」
「それが——、どうやら、コイツがあのぬいぐるみだったらしい。で、代わりにってアレを寄越してきた」
おれがそう言ってチーオの方を見ると、チーオはこくんと頷いた。
「「「ええええええ!?」」」
「どっ、どういうことだ!?」
「ほう、この子が? 何かの能力か?」
「あっそうか、お前能力者か?」
何人かは驚きの声を上げたが、比較的経験豊富なクルーは、すぐに悪魔の実の能力と見抜いたようだった。
「いえ、わたしではなく、ドフラミンゴの部下の、“シュガー”という能力者にやられたのれす」
「えっ、それって」
「はい。キャプ……ローさんが戦っているという相手れす」
ん? 今キャプテンって言いかけたか?
「あーっ! そうだよペンギン! さっき皆で溜まってた新聞読んでたんだけどな! キャプテンたち! ドフラミンゴ倒したって!」
「えっ、本当か!?」
ベポの言葉に、思わず浮き立ってしまった。
大きな怪我はしてねェかな。オペオペの能力もあるし、そこまで心配してる訳じゃねェが、心配なものは心配だ。
「凄いれす。あんな強い人たちを倒してしまうなんて……」
驚きと感動の混じった表情でチーオが呟く。
「おい、話が脱線してるぞ。本当にぬいぐるみだったという証拠はあるのか? 新聞を見て騙そうと画策しているのでは?」
お祭りムードになりかけた皆を制止する声が上がる。
それを聞いてハッとしたのか、途端に皆チーオを警戒しだした。
「確かにその可能性もあるな。第一ペンギンお前もなァ! 仮とはいえ拠点に、どこの誰とも分からねェやつをほいほい連れてきやがって!」
「それもそうだ。海軍とかのスパイだったらどうすんだよ!」
クリオネたちが手のひらを返し、まあもっともな意見を述べる。
「そうか。最初に会った時に余りに簡単に捕まえられたから、その線は端から疑ってなかった」
「うぐっ。て、敵じゃないれすよ……?」
「スパイがスパイと名乗るかよ。というかまず、本当にぬいぐるみだったのか、証明して貰おうじゃん」
疑いだしたらキリがないようで、次々チーオに疑問を投げかけている。
「んん……、どうしたら信じてもらえるんれしょう……」
「なんか知ってることを吐かせるとか?」
「それだ! ——そうだな、手始めにおれたちの名前を当ててみろ!」
それを聞いて、確かにまだ誰も自己紹介をしていなかったと気が付いた。
「それなら簡単れす! シャチさんれしょ? 右のくまさんはベポさんで、その隣がハクガンさんれす! お姉さんはイッカクさんで、クリオネさんにウニさんに……」
不安そうだったチーオはシャチの提案にパッと笑顔になると、次々にクルーの名前を当て始めた。
「——で、後ろの一番おっきいのがジャンバールさんれす!」
チーオはあっという間にクルー全員の名前を当ててみせると、期待半分不安半分の表情でシャチの返事を待っている。
「全員分当てたってことは、ぬいぐるみだったのは確定でいいんじゃね?」
「敵じゃないって信じてもられるれすか?」
「ぬぅ……。一旦な」
クリオネが、渋々といった様子でチーオの言葉を認める。
「ほっ、そのへんの箱に閉じ込められるようなことにならなくて良かったれす」
「しねェよンなこと! ——チーオって言ったか。これ貸してみな」
突然の物騒な発言にツッコミを入れたイッカクは、おもむろに手を伸ばし、チーオから偽ぬいぐるみを奪うと、
「ふんぬっ」
一切の躊躇いを見せず、真っ二つに引き裂いた。
「おぉーい!? 何やってるのイッカクさん!?」
「ふん、何か仕込んでたりも無さそうだな」
チーオはいきなりのことに何も言えず固まっている。
「いやお前、一言先に言えよ!!!」