続きのSS
※ さっきのSSの続き。本番はないけど事後だよ。
ビビは久々の情事で疲れた身体を男に預け、余韻に浸っていた。彼の大きな手が髪に触れたのを感じる。かつてはこの手に乱暴に首を掴まれ、騒乱の最中へ落とされそうになったというのに・・・そんな男を再び求め、受け入れている自分のしたたかさがおかしかった。その時・・・
「え~ん・・・」
ベビーベッドの方からぐずるか弱い声が聞こえた。ビビの顔は『女』から『母』へと変じる。急いでベッドから降りると娘のもとに駆け付けて抱いた。先刻彼が言った通り、情事を垣間見たことなど忘れてしまっているようだった。
「よしよし・・・寂しかったのね」
娘をあやしながらベッドに戻ると途端に赤ん坊は泣き止んだ。そして父の顔を興味深そうにまじまじと見つめ始める。
「・・・何だ?俺の顔に何かついてるか?」
子供に対するものとは思えない無愛想な口調だが、幾分優しさが見え隠れする。
「珍しいのよ。王宮や街では見ない顔だから・・・」
「チッ・・・俺は見世物じゃねェぞ」
そう言いつつもクロコダイルは満更でもなさそうに笑った。娘は泣き出す様子もなく一心に父を見つめている。安心したビビは、
「・・・そろそろベッドに戻ろうか?」
あやしながらベビーベッドに引き返そうとした。しかし、それが良くなかった娘は再び泣きそうな素振りを見せ始める。
「・・・離れたくないの?」
聞いても当然答えることは出来ないのだが、潤んだ無垢な目は必死に何かを訴えている。父はというとぼんやりと母娘の遣り取りを眺めているだけだった。
母は娘の率直な思いを感じ取り、
「ねえ・・・隣に寝かせてもいい?」
「・・・あ?」
「一緒に・・・この子を挟んで寝たいの」
クロコダイルは天井を見つめながら黙っていたが、
「好きにしろよ・・・」
相変わらず無愛想にぽつりと答えた。
ビビは頬を赤らめて微笑むとベッドに乗り上げ、娘を父親の隣に優しく寝かせてやった。娘は心なしか上機嫌になり、すぐさま血を引き継いだ男の顔を覗き込みに行く。
曇りのない瞳に見つめられて居心地が悪くなったのか、クロコダイルは目を逸らす。
「鬱陶しいチビだな・・・『あの時』のお前にそっくりだ」
「・・・半分は貴方の血よ」
誰にも知られることのない、一夜限りの親子のひと時であった。