続・がんばるあなたには
通りすがりのキョウルリスト「……じゃあ またね」
ピッ
名残惜しそうに、けれど満足気にライブキャスターを見下ろすルリの背後に人影が忍び寄る。
「ルッコさん、そろそろ休憩終わりですよ。」
「ひゃっ!?び、びっくりした……」
「いつもこの時間にはお声がけしてるじゃないですか。そんなに驚かなくても。」
ルリ……ルッコに忍び寄り、呼びかけた声の主はルッコのマネージャー。
最近はルッコがなかなかに売れているからか機嫌がいい。
「い、いつだっていきなりは驚くの!」
「ふふ、そうですね……クリスマスは楽しめましたか?」
「えっ?あ、ああ……うん……か、家族と……あはは……」
予想外の質問に目が泳ぎつつも、どうにか受け答えはしたルリ。
しかし更なる質問が彼女を襲う。
「彼とはどうでした?」
「なっ……な、だ、誰……のこと……?」
こうなると流石に動揺を隠しきれないようで、顔からは血の気が引いている。
「あ……すみません。えっと……大丈夫ですよ。知ってますし怒りませんから。」
「……進展、したんですか?」
すると今度は耳まで赤くし、俯きながら呟き始める。
「……どうにか手は繋いだけどキョウヘイくんはあまり気にしてなかった気がするかも……」
「はぁ……そんなに消極的でどうするんですか。ポケドルのときと同じぐらいの勢いで行かないと。」
「え、えぇ……そうは言われても……そもそも前はわたしがキョウヘイくんと話すの邪魔してたのに何でこんなこと……」
「そうですね、以前の私はあなたが異性とやりとりをしていることを頭ごなしに否定していましたが……事実としてあなたが恋をしてから曲に溢れる『恋する乙女』らしさに磨きがかかったので。」
「ちょっ……何を言って」
追撃は止まらない。
「まあそれだけということでもないですが……とにかくあなたに必要なのはキョウヘイさんとのラブロマンスなのですよ。」
「やっやめてよラブロマンスなんて!恥ずかしい……ですから……」
「ああ……今のあなたに、とは言いましたが別に失恋ソング路線に切り替えるつもりはないのでその心配はしなくて大丈夫ですよ。」
「いや……それはいいんだけど……ですけど……」
恥ずかしさとちょっぴりの嬉しさとまたそれによる恥ずかしさとでルリはとっくに爆発寸前だ。
そんな中でもどうやらひっかかった言葉があったようで。
「あの、それだけじゃないって……他の理由は?」
「ああ、それですか。それなら。」
「がんばるあなたにはしっかり報われて欲しい、というだけですよ。彼以外の相手なんて考えられないでしょう?」
「……もう、そんなにわたしのことわかってるならもっと甘くしてくれても……」
「それはそれ、これはこれですから。さ、レッスンに戻りましょう。」