結局延長した
わ
ん
く
っ
し
ょ
ん
サト💎×気品ある精神ちゃんです
くったりとベッドに体を沈め、小さくまとまった恋人の口に、サトノダイヤモンドは今日の夕方スーパーでせがまれたブドウを運んだ。指と唇が触れ合って、戯れのように唇は指をも挟む。離れて、そのブドウが飲み込まれた後。
「サトノ」
濃い桃色の瞳。どちらかと言えば赤から少しずつ近づけて行ったような、気の強さが伺える瞳。それが真っ直ぐとサトノダイヤモンドを見据えて。
「家でヤるの飽きたからホテル行かねぇ?」
「貴女何言ってるんですか???」
「……家で」
「復唱しろって言ったんじゃ無いんですよ」
全くなんなんだ───────とでも言いたげな視線を投げるクロコスミアに、その視線をしたいのはこっちだと彼は思う。
「……その……私に飽きたとかでは無いんですね?家に飽きたっていう言葉がよく分からないんですけど」
「お前に飽きてんだったらハッキリ言うわ。あたしを誰だと思ってんだよ、ステイゴールド産駒だぞ」
「うわ説得力……で、家に飽きたってなんですか」
「ああ、それな。……お前さあ、だいぶ性癖歪んでんな」
「……!?」
「うわすごい顔」
サトノダイヤモンドは硬直し、二つ目を掴んでそのままになっていたブドウがぽとりと落ちかける。それをファインプレーで口で取りに行き、ん、ぬるいなと一言。クロコスミアが一人でそんなことをして、さらに十秒置いてようやくショートから回復したらしい。サトノダイヤモンドは彼女の華奢な肩を掴んで問い詰める。
「なっ……だ、誰から聞いたんですかどこで知ったんですか」
「ベッドの下はベタ過ぎるんだよな、裏かく狙いだったか?」
「あああああああああ」
「てなわけでお前を満足させるためにあたしが一肌脱ごうかなって事だ。分かったか?」
ふん、と華奢な体でふんぞり返るその姿に、何が気品ある精神だと心の中で彼は愚痴を飛ばした。
*
ふつ、ふつと煮え滾るような感情を自覚した時、自分でも驚いたものだ。映像ならともかく雑誌の中の静止画にも嫉妬する性格だとは到底思っていなかったし、多分彼も思ってはいない。
でもまあ、彼のせいできっとそうなった。
なら知らさなければいけない。お前が誰のもので、自分が誰のものなのか。
「外堀から埋める、ねぇ……」
「なんか不穏な言葉聞こえましたけど……」
いいんだよと掴んだサトノダイヤモンドの腕を引っ張る。一応されるがままに彼もついて行っているが、何故自分は彼女に先導されラブホテルなんぞに連れて行かれているのか。プライドと情緒が壊れそうだった。
そして見えた蛍光ピンクの看板の『黄金旅亭』という文字を見て走る嫌な予感。
「ちょっと待ってくださいおい待てもしかしてここって」
「あーあーうるさいうるさい近所迷惑だろ、あ、とーさん。繁盛してる?」
「おー……まあぼちぼちな、後ろのが?」
遠慮なく開いた扉、目の前にいるのは他でもない彼女の父親のステイゴールドであり、本当に勘弁してくれと思った。
「……初めまして、ステイゴールドさん」
いや本当に、こんな所で彼女の父親と初めましての挨拶を交わす事なんてあるのか?今起きているのだが。
「まァ……とりあえず今回は客としてカウントするから今度来い」
「お気遣いありがとうございます……」
目眩がしてきそうなサトノダイヤモンドを流石に哀れに思ったのかもしれない。真剣に考え込む娘をチラリと見、視線を戻してステイゴールドはそう言った。
「ここがいいや」
「うわなんでそんな上級者向け選ぶんですか」
「お前の趣味だからだろ」
「ヘェ……今度じっくり話そうか」
「違うんですこれは」
「なぁ時間どうする?」
「長くすればするほど私の首が飛ぶまでが短くなる気がするんですよね」
「オーケー朝までな」
「殺す気ですか?」
✂︎
ガチャンと部屋の鍵がかかる。少しばかり大きめな気がするそのロックの音も雰囲気を演出するものだったりするのだろうか。
ぼんやりとした照明。檻のようなベッド。隠すつもりもない手錠、足枷、首輪たち。
「サトノ」
ぼんやりとした明かりに照らされて浮かび上がるシルエット。ぱさりと服の落ちる音。
「あたしの喉も、腰も、全部壊して。全部だ」
それで、帰ったらあんなもの全て捨ててやる。あたし以外見なくていい。
「……一応言っておきますけど、本気で死にそうだったら止めますよ。大体簡単にSがどうMがどう言いますけど」
「長くなりそうな話なら止めろよ?」
「傷つけたくないって言ってるのが分からないんですかねぇこの口は」
「お生憎様、お前クロコスミアの特性知らねぇの」
「あー、もう。口の減らないったら無いですね」