「結婚はしねえ!」
「は〜い、わざわざ来てもらって悪いけど、帰って帰って〜!」
拡声器を使い、海の向こうに見える軍艦に警告をする。籠からキノコを取り出して食べながら、双眼鏡で軍艦を確認すると海兵たちがヘッドホンを装着しているのが確認できた。
「まっ、対策してるよね。無駄だけど…。ほら出番だよ」
海辺に既に眠らせておいた海王類2匹に指示を出す。眠ったまま勢いよく軍艦に向かっていった海王類を見送りながら、私は島の中へと戻る。
七武海撤廃。
突如として海軍から発表されたそれは、加入時から懸賞金0ベリーで海賊ではなかった私も例外ではなかった。ご丁寧に発表の新聞に私の懸賞金のついた手配書がセットだった。
「ずっと従順だった君に対して、これはあまりにも酷すぎる。そもそも君は海賊ではない!即刻、抗議をすべきだ!」
いつの間にか近くにいたゴードンが声を荒げる。
「無駄無駄。今の元帥のサカズキって人は、一度決まるとそういう融通の効く人じゃないの。中にいたからよく知ってるよ…。それに自分の能力の危険性はよくわかってるからね。捕まったら最後、もう二度と外には出られないかもね」
「うーむ……」
まだ納得してる様子のないゴードンに、私は話題を変えることにする。
「それにしても、ここに来てまだ数日なのにバレるの早くない?逃げても逃げても追いかけてくるんだけど?」
「…恐らく海軍は君のビブルカードを所持し、それを頼りに追いかけてきている」
「あァ、納得」
え〜…それならこの鬼ごっこってずっと続くわけか…。ちょっと憂鬱になってきた。
「ゴードン何か、いい案ない?」
「それこそ誰か強力な勢力の庇護下に入ればいい、例えば赤髪のシ「その名前はやめて!!」…すまない」
思わず声を荒げてしまった…。そろそろキノコの副作用が出始めた頃かな?危ない危ない。
それにしても庇護下…庇護下か。こんな事態じゃ無くてもいつかやろうと思ってた計画を前倒しにしてもいいかもしれない。
そう思い、カゴの中から一枚の紙を取り出しゴードンに見せる。
「それは、ビブルカードかい?いったい誰の…」
「モンキー・D・ルフィ」
「モンキー・D・ルフィ!?5番目の皇帝、知り合いだったのか!?」
「うん、幼馴染。言ってなかった?」
「初耳だ…」
そうだっけ?まァいいや。戦争のときにこっそり爪を拝借していてよかったよ。何が役に立つかわかったものじゃないよね。
「しかし彼は大丈夫なのか?エニエスロビー襲撃、インペルダウンでの囚人開放、他にも彼を悪魔の様に言う人は大勢いるぞ」
「あいつを知らない人があいつを語らないで!」
「……すまない」
「船の準備をして。もう海軍の足止めも限界そうだから」
歩いていくゴードンの背中を見ながら今後の展開に思いを馳せる。
あいつと合流したらどうしよう…。
「私は副船長かな…」
あいつの船には、副船長がいなかったはずだ。音楽家という選択肢は何故だが浮かんでこなかった。
大切な時間を共に過ごし、掛け替えのない未来を誓いあった幼馴染。七武海になり、その存在に気が付いてから彼の動向はずっと追いかけてきた。戦争のときに思わず姿を見た時は、立場を忘れて抱きつきに行こうとしてしまったほどだ。
あの男とお揃いの麦わら帽子を被っていることは癪に障るが、それも合流してから折り合いをつけていけばいい。
再会した彼は、どんな反応をするのだろう?泣きながら抱きついて来るのだろうか?お姉さんとしてしっかりと受け止めなければ…そしてそのままプロポーズをされたり……
結婚!?それはまだ早いって///
「まァ、船長夫人もいいかもね…」
四皇になった幼馴染と再会するのは、もう少し先の話