組分け帽子の話
スネイプ『静かにできたら菓子をやる』待機14からの流れで短文ハリポタパロ
時間軸は原作一巻想定
周囲からひそひそと聞こえてくる、かの英雄ハリーポッターの噂話も今のクロコダイルには全く聞こえていなかった。
握りしめようとした手が片方無いことに未だに慣れることができないでいる。
学校から毎週のように送られてくる手紙、長期休暇には楽しそうに兄が語る学校の話に胸をときめかせ通える日を待ちわびていたのに両親が起こそうとした事件を切欠に全てが引っくり返ってしまった。
魔法使いとしての素養が低いと言われた事も要らない子供としてされた事もショックだったが殺されそうになった時に帰って来た兄が起こした行動は更にその上を行く。
親戚も誰一人引き取りたがらない中、マクゴカナル教授が一旦の保護者になり二年経ちとうとう学校に行ける年齢になって手紙を無事に受け取っても嬉しいと思ってもどこかで罪悪感に苛まれ、前日に我慢できずに溢した「ごめんなさい」という言葉にキャメルは
「クロはなんにも悪くないよ」
と優しく頭を撫でた兄に弟は何も返すことはできずただ俯いていた。
呼ばれる名前に自分の順番が近づいている事に気づき顔をあげると視線を感じてそっと後ろを見るとそこにはキャメルがいた。基本的に楽しそうに笑い喋るばかりの兄が何も喋らずただ静かに座っているのはまるで大人みたいでクロコダイルには不思議な光景だった。
「──」
キャメルが何事か呟いてそっと杖をふるうと緩んでいたネクタイが締められる。反射的に声を出しそうになるのを我慢しているとキャメルが静かに笑って。
『クロ』
と名前を音を出さずに呼んでくる。たったそれだけの事でクロコダイルはなんだか肩の力が抜けていくのを感じた。
名前を呼ばれて立ち上がる。後ろからキャメルが笑顔を見せたことにより同寮の生徒達が今年一番のざわつきを見せていたがクロコダイルはそれを気にすることなく帽子をかぶるとただ一つを願った。
「アニキと同じが良い」