終章
尸魂界からの帰還 渡された代行証瀞霊廷
「よし! 完成だ!!」
石田が自作の服を手に嬉しそうな声を上げた。瀞霊廷の縫製施設を借りて、一護を除く全員に服を作っていたらしい。それを順番に配っていく。
「あたしちょっとこの服、朽木さんに見せてくるね!!」
ルキアに作ったワンピースを手に、井上が部屋を飛び出していった。
「カワキ、お前は一緒に行かなくていいのか?」
『? 別にいいよ。やる事もあるしね』
「そういえば…ずっと端末を触っているけど、何をしているんだい? 尸魂界じゃ使えないだろう?」
一連の戦闘が終わり、帰るまで落ち着いて過ごしている日々の間も、カワキはずっと端末で何か作業をしているようだった。不思議そうに石田が訊ねる。
『これまであった事を整理してまとめてるんだ。驚くような事が次々と起こって、色々あったからね』
「たしかに…色んな意味で濃い日々だったからね…」
「日記のようなものか」
石田が遠くを見るような目で尸魂界に来てからの出来事を振り返る。チャドは「意外とマメなところがあるんだな」と微笑ましく思って笑顔が溢れた。
『よければ、別行動をとっていた間の話も聞かせて貰えると嬉しい。全体像を知りたいんだ』
「ああ、もちろんだ」
「こっちもこっちで大変だったよ……」
笑顔で頷くチャドと、思い出して苦笑する石田。カワキは二人の言葉に笑みを浮かべて感謝を伝えた。
『――ありがとう。協力に感謝するよ』
◇◇◇
ついに現世に帰る日がやって来た。大きな門が風を吹き出しながら開く。
「…これが正式な穿界門だ。無論、君達のために霊子変換器も組み込んでおいた。…一護君」
見送りに来ていた死神達のうち、浮竹が一護を手招きした。カワキがその様子を視界の端で見守る。
「君にこれを」
「? 何すかコレ?」
「一応、尸魂界にも死神代行の発生に対応した法律があってね」
浮竹は笑顔で懐から何かを包んだ布を取り出した。
「現れた死神代行が尸魂界にとって有益であると判断された場合、古来から必ずこれを渡す決まりになっている」
⦅“有益であった場合”、か……⦆
浮竹が布を開くと、ドクロに似たマークの描かれた板のような物が鎮座していた。カワキは会話を盗み聞きしながら浮竹の言葉を訝しむ。
⦅見たところ直接の危険がある物では無さそうだけど……。頭には留めておくか⦆
一護と浮竹が話している最中、他の者は尸魂界に残る事を決めたルキアとの別れを惜しんでいた。
「それじゃ朽木さん、元気で…」
「ああ。チャドも、石田も、井上も…皆元気でな」
井上から石田が作ったワンピースを受け取りながら、ルキアが振り返った。
「…じゃあな。ルキア」
『拾った命を大切にね』
「…ああ。…ありがとう。一護。カワキ」
そうして死神達と一護達一行は笑って別れた。
***
カワキ…堂々と見えざる帝国に提出する為の報告書の下書きをしている。聞き込みもするし、協力にお礼も言う。ちなみに書類仕事ほぼできない為クオリティはお察し。
石田…カワキには私服に似たカッコいい系の服を作った。カワキの服は陛下が選んだので多分陛下と趣味が合う。