終盤その8

終盤その8

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「……ん」


……ここはどこだろう?眠い目を擦りながら体を起こして周りを見る。

私が横になっていた清潔そうなベッド、ベッド区切るカーテンに棚には薬やホンゴウさんがよく使っていた道具が並んでいた。医務室なのかな?どこの、という疑問はすぐに解消された。


「あ、起きたのかウタ!よかった。だいたい予測通りの時間だな」


「君は、確かルフィの友達の……」


彼がいるということはここはルフィの船であることに間違いなさそう……私、エレジアの外に出てんだ。

まだ船内だから実感は薄いけれど、微弱に揺れる感覚が──とても懐かしい感覚がここが船であると示していた。


「おれはトニー・トニー・チョッパー、この船の船医だ。具合はどうだ?」


船医だったんだこの子。てっきりモンスターみたいな戦闘できるペットかと思った。いや、助けてもらったであろう相手に失礼だねこれは。

よくない思考を消してチョッパーの質問に答える。


「うん、特に問題は無いよ。ライブ時にあった目の覚める感覚もないしね」


「そっか、よかった!ホンゴウって人の薬が効いたみたいでよかったよ」


ホンゴウさんの名前を聞いて赤髪海賊団の皆の顔が頭に浮かぶ。

今頃何をしてるのかな……。


「……んん」


物思いに耽っていると、すぐ近くからうめき声が聞こえた。声のする方に顔を向けると、椅子に座ったルフィが私が横になっていたベッドに顔を押し付けながら寝ていた。


「ルフィはずーっとここでウタが元気になるまで待ってたんだ。ウタが起きたのを見たらきっと喜ぶぞ」


「ずっと……」


ルフィには酷い事をしてしまった。私をずっと気遣うルフィを最後になるまでずっと否定して、沢山傷つけて、友達にも……。

そんな私を待っていてくれた。それが嬉しくて思わずルフィの頭を撫でてしまった。


「ん?ふぁ~あよく寝た」


それがルフィの眠りを邪魔してしまったみたいで、起こしてしまった。

ルフィは眠そうな目を擦りながら私を見て、パッと明るい表情になるといきなり抱きついてきた。

ちょちょちょっといきなりなに!?


「ウター!元気になったんだな!よかったー!」


「そ、そう!元気になった!なったから少し離れて」


「えー?なんでだよ」


「い、いきなりで驚いたの。少し落ち着かせて」


「回復したばかりだからな。あんまり無理はさせないようにしてくれよ?」


「ちぇー」


私とチョッパー君の言葉にルフィはしぶしぶながら離れてくれた。

驚いた……まだ心臓がバクバク言ってるきがする。


「あとウタは健康診断しなくちゃいけないから、すぐには外には出れないぞ」


「そっかー。じゃおれ皆を甲板に集めとく。ウタ、楽しみにしてろよ?今日は宴だからな!」


しっしっしっ、と笑いながらルフィは医務室を慌ただしく出ていった。

宴って何か御祝いでもあるんだ?


「よし、こっちもちゃちゃっと済ませちゃおう。ウタ、こっち向いてくれ」


「わかった」


チョッパー君にいわれるまま、前の椅子に座って検査を受ける。

検査といってもそんなに特別な事はしなかった。

どこかに違和感がないかって質問にいくつか答えて、ライトを目に当てたり、指を目で追ったり、喉の具合を見て貰ったり、昔ホンゴウさんがやってくれたやつと大差ないものだった。


「うん、簡易的な検査だけどウタは健康体だな!よかった!」


「そっか……私、元気になったんだね」


心底嬉しそうににっこりと笑うチョッパーにつられて私も笑顔になる。あのまま新時代を作っていたらこの笑顔も見れなかったかも。

と、そこで私はある疑問が頭に浮かんだ。


「……ねェチョッパー?正直に答えて欲しいのだけど」


「なんだ?」


「あのね?私「ウター、健康診断終わったかー?」」


私の質問が終わる前にルフィが騒がしく医務室に入ってきた。


「終わったよルフィ。ウタは健康体だ!動いても問題ないぞ」


「そうか!じゃあ行こう。皆待ってるぞ」


「え?いや待って!?」


私の静止をよそにルフィは私の腕をつかんで医務室の外に出る。

私、聞かなくちゃいけないことがあるのに!

そう思ってルフィを止めようとしたけど、さっきルフィが宴って言っていたよね?なら皆集まってるよね?ならそこで聞いた方がいいかな?

そんな事を考えているうちに私はルフィに引きずられる様に甲板に連れ出された。

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