終盤その3

終盤その3

62

私の一撃に応えるって、なにするつもりなのかな?流石のルフィでもこれを対処するのは無理でしょ。だから諦めて欲しい。諦めて私と一緒に新時代を生きて欲しい。それだけで、それだけで私は……。


「よっし、いくぞ!」


とう!という掛け声と共にルフィがジャンプした。ルフィはどんどん空高く昇って行って、暗雲の中に突っ込んでしまった……逃げた?

まさか、と思いながら暗雲を睨んでいるとその予想はすぐに覆った。


暗雲から覗いたのは、巨大な黒い拳。ライブ会場にも引けをとらない巨大なルフィの拳だった。


「こいつが、おれの全力だ!こいつで全部終わらせてやる!」


悪魔の実の能力者だからといっていくらなんでもデタラメだ。こんなことが出来る人がいるなんて思いもよらなかった。


「だけど、大きいだけで私に勝てるわけ無いでしょ!私は、最強なんだから!」


槍先の深紅の雷により一層力を込める。雷の色が黒く見える程赤みがまし、余波でライブ会場がバラバラに砕けていく。


「勝つのは、私だよ!」


「いや、おれだ!」


「私だよ!」


「おれだ!」


「私!」


「おれ!」


あああああああ!!!なんでルフィは勝てると思ってるの!私がずっと、183勝し続けてるのに!いまさら、いまさら!


「あんたが勝てるわけないでしょうが!!!」


私も飛翔し、上空で深紅の雷を怒りのままにルフィに放った。それだけで半壊していたライブ会場が完全に壊れてしまった。


「ゴムゴムのォ!猿神銃/バジュラングガン!!」


ルフィも拳を撃ち出し、私の雷と空中で激突した。


「アアアアアアアア!!」


「オオオオオオオオ!!」


お互いにただ雄叫びをあげ続ける。喉が枯れるのも構わずに。


「……!?」


拳と雷、均衡を保っていたそれは徐々にバランスが崩れていく。

……私の雷が押されている!?そんなのは嘘だ!私は更に力を込める。それでもルフィの拳は止まらない。


「嫌だ」


思わず口に出る。

嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!

止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ!


このままだと負ける。負けたら、ルフィは行ってしまう。海に出て海賊に戻ってしまう。

そんなことはさせない。なってほしくない。だから、負けられない!ないのに……!


「止まれ!止まれ!止まれェ!」


「オオオオオオオオオ!!!」


私の思い虚しく、雷が完全に押しきられる。ルフィの巨大な拳が私に落ちてくる。

咄嗟に盾で防御したけど無意味だった。全身に鈍い衝撃が走る。

鎧が衝撃で壊れていく。私の最強が。私の願いが、崩れていく。



負けた……?私が……ウタワールドの中で……?ならルフィは……自由?私じゃルフィを止められない……?ならルフィは海へ……?


「嫌だ……!」


また、置いていかれる。そんなのは嫌だ。嫌だから、止めたのに。力ずくでも引き留めようとしたのに、ルフィは止まらない。私じゃ、止められない。


「置いていかないで……!」


鎧も消えて空に飛べなくなった私は重力に従って落ちていく。何も出来なくなった私は空に浮かぶルフィにすがるように手を伸ばすことしか出来なかった。

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