素ヨダナ、やらかす終
マスターの部屋「解せぬ」ビーマ編...といいつつかなり不完全燃焼で終わっちゃうビーマ。後でシュミレーターでしっかり喧嘩してね
キャラ崩壊
ギャグ(?)
解釈違い当諸々注意!
マスターは死んだ目でかつてのマイルームを見る。
サーヴァントの強化に必要な素材が足りなくなり、どうしてもとわざわざ周回メンバーに声を掛け、ドゥリーヨダナ達にマイルーム番を任せること約1時間。
何があったのか。どうしてそうなったのか。
思わず頭を抱える事態が目の前で起きていた。
__半壊したマイルーム。天井にはカルナとアシュヴァッターマンが埋まっていて、まだ意識が戻らないのかプラプラとぶら下がっている。
また一際目立つのは壁にのめり込んでいるありがたい石像ことガネーシャ神だろう。...その下敷きになっているのは、服からしてビーマだろう。そしてドゥリーヨダナは頭が床に埋まっていた。よく見ると、霊基異常が治ったのか尻尾が消えていた。恐らく頭にあった角も無くなっているのだろう。喜ばしいことなのだが...。
「なんでこうなったの...?」
遡ること1時間前。
「もうわし様つかれた…」
「おう、お疲れ様」
色とりどりの服を目まぐるしい速さで着せ替えられ、写真をとり、また着せ替えられ…。流石のサーヴァントとはいえ疲れることは間違いないだろう。マスターを止めるべきかとアシュヴァッターマンは思ったが、あの目のガンギマッたマスターは止められない、と割と潔くドゥリーヨダナを差し出した。
持ってきた服を一通り着せると満足したのか、稀に見る満面の笑みで、一方で疲れたことを隠すこともせず、不満げに尻尾で地面をぺしぺししているドゥリーヨダナに話しかける。
「いやぁ!やっぱり似合ってたよ!さすがドゥリーヨダナ!!」
「もう絶ッ対嫌だからな!」
「んー、本当はダヴィンチちゃんに相談した方が良いんだろうけど、変わってるのは見た目だけっぽい?」
「んー…そうだな、弟達もちゃんとわし様の中にいるぞ」
手を胸に当て、深く、霊基の奥を探る。…一人一人、ちゃんといる。誰も欠ける事なく、ちゃんと。
「じゃあ、緊急じゃなくてもいいから今すぐ連れて行くことはしないけど…ちゃんと自分で行く?」
「…うむ!」
分かりやすく溜めたな、とマスターは眉を顰める。これはほっといたらずっと部屋に篭ってるパターンだ。
これは今すぐ無理やり連れていった方がいいか…とマスターが思案していたところ、助け舟が渡る。
「マスター、オレが連れていこう」
「俺も見とくわ」
「カルナ?!アシュヴァッターマン?!」
さすがカウラヴァ(というかドゥリーヨダナ)の保護者達。この2人なら甘やかすことはあってもドゥリーヨダナのことを考えて行動してくれるので、少なくとも医務室に無理やり引きずり出してくれるだろう。
また、先程までの湿っぽい空気は霧散され、いつもの調子に戻っていた。これもまた、先程喝を入れたドゥリーヨダナのおかげなのだろう。
「じゃあ、頼んだよー!」
そう言ってマスターはしばしの間、周回へと向かった。
さて、マスターが去ってから。
ドゥリーヨダナ達はマスターの部屋で先程まで着せられていた服の片付けをしていた。
「なんでわし様まで…」
「行きたくないんだろ?技術顧問のところに」
「当たり前だ!わし様はああいった検査は嫌いなのだ!」
「なら仕方ないだろ」
ブツブツと文句を連ねるドゥリーヨダナをアシュヴァッターマンは一刀両断した。アシュヴァッターマンは旦那のことは尊敬するが、それはそれ、これはこれ、と割り切れる人だった。
「カルナァ、アシュヴァッターマンがわし様を虐めるぞぉ」
「当たり前だ。オレもそうするだろう」
「ほら旦那、さっさと手を動かすぞ…つーかマジで多いな…」
ベッドの上に散らばる服をみる。
「お、この和服は先程動きやすかったやつだな。色がちとわし様の好みでは無いが…」
「それよりお前にはこれが似合っていたぞ」
「お、どれどれ…」
「カルナ…旦那を甘やかすな…」
途中で手を止め、この服は良かった。あの服は色が好み。その服は一体誰が着てたんだ...。と、久方振りに、3人きりの会話を楽しむ。そんな風に語り合っていたところ、扉がコンコン、とノックされる。
「ん?誰だ?」
「オレが出よう」
カルナが立ち上がり、扉に近づく...が、その途中で足を止める。
「...」
「ん?どうしたカル」
途中で立ち止まるカルナを不審に思い、ドゥリーヨダナが近づく。
その瞬間、突然扉が開いたと思えば、強風が吹きつける。その強風は、確実にドゥリーヨダナの頭を狙う。
「...っ!」
「ドゥリーヨダナ!!」
その風を、拳を間一髪で避ける。風神の加護が宿るのか、吹きつけた風はかまいたちのようにドゥリーヨダナの頬に傷をつけた。つぅ、と赤い鮮血が頬を流れる。
カルナもアシュヴァッターマンも直ぐに戦闘態勢に入り、強風の大元...ビーマとドゥリーヨダナの間に入る。
「ビーマ、てめぇなんのつもりだ?!」
「カルデアでの私闘は禁止だと教わらなかったのか」
「邪魔すんな。こいつの頭の飾りをへし折るだけだ」
「はぁ?!」
ビーマはやけに苛立ちながら、拳を構える。その目はカルナやアシュヴァッターマンを見ていない。ただ1点、ドゥリーヨダナを人間に戻すため、再び頭を潰すことだけ考えていた。
ドゥリーヨダナの姿について、彼は食堂に訪れていたスヨーダナから聞いた。横にいた弟のオルタは言うまいとしていたが、スヨーダナはひどく面白いものを見たというように語った。
「そうそう、こちらの世界のドゥリーヨダナが面白いことになっていたぞ」
「ほぉー。面白いこと、ねぇ」
アルジュナ特製カレーを食べさせられていたスヨーダナが水をちびちび飲みながらビーマに話しかけた。
「ああ、見た目だけだが、俺たち(これ)とおそろいになってた。似合ってはなかったが、な」
そう言うとスヨーダナは自身の角を指さした。
「...あ?」
手に持っていたグラスにヒビが入る。アルジュナオルタがその様子を見てスヨーダナに静止を入れる。
「スヨーダナ」
「むぐぐ」
「ビーマセーナ、貴方も落ち着きなさい」
「...あぁ、大丈夫だ。」
先程グラスを割った時に見せた顔と打って変わっていつもと変わらぬ好青年の笑み。それよりグラスが割れちまった。後で弓兵に謝らないと...。そう言う姿も、先程の動揺が嘘のような、いつも通りの姿だった。
杞憂していることは起こらないか、とアルジュナオルタはほっとした。
嘘つけ。そんなわかりやすい笑顔があるもんか、と口を塞がれながらスヨーダナは思った。
あの日、あの時、確実にビーマはドゥリーヨダナを人として殺した。魔としての姿は、少なくとも汎人類史では刻まれないはずだった。それなのに。
今のドゥリーヨダナの姿は、まるでビーマは力不足だったと戒めているようで。
それが一層腹立たしかった。
今思えば、恐らく短期間の間にドゥリーヨダナを中心とした多くのカリ化した100王子が召喚されているのが、ビーマにとっては拭いきれぬストレスだったのだろう。それが、ドゥリーヨダナの姿が変化したことで一時的に爆発し、ビーマの冷静さを欠かせていた。
修羅のような顔つきで、再びドゥリーヨダナを殺そうとする。
「そこを退け」
「「断る」」
勿論この2人が許容するわけがない。
一瞬にして戦場のような空気に変わる。この場にマスターが入れば、最悪でもこの場で争うことはなかっただろう。
まさに一触即発。
それを破るのもまたこの男なのだ。
「ふん、そんなにわし様と戦いたいなら、受けて立とうではないか」
「っ旦」
「邪魔するでないぞ」
カルナとアシュヴァッターマンを後ろに押しのけ、いつの間にやら用意していた棍棒の1つをビーマに投げる。
2人が向かい合う。何時ぞやの決闘と異なり場所は閉鎖的なマスターの部屋。
「あの日の再戦でもいくか?」
「上等だ...またてめぇの頭を砕いてやるさ」
「今度はズルをせず勝てると良いなぁ?」
売り言葉に買い言葉とはまさにこの事。両者の目に普段と比べようもない程の殺意が籠る。棍棒を握る手に力が入り、次の瞬間には誰にも止められない戦いが始まる。
はずだったのだが。
突如として、爆発音と共にマスターの部屋の壁が破壊された。
「「「「は?」」」」
視界を大きく覆うほどの砂埃の中、ひた、ひたと誰かが歩み寄る。
「匂う...匂うぞ...これは魔の、カリの匂い...!!」
『ひぃ~!助けてくださいッス~!』
砂埃が落ち着き、その姿が顕になる。青い肌、白い髪、背中から生える四対の腕。
そう、そこにいたのは殺戮の女神、カーリーであった。引きずるようにして連れられているのはガネーシャ神(ありがたい石像の姿)だ。
「な?!カ、カーリだとぉ?!」
さすがのドゥリーヨダナも思わず退く。そもそも魔を滅せんとする女神なのだから、命の危険を感じるのはある意味当たり前なのだが。
さて、思わない乱入者に最初に対応したのは、ドゥリーヨダナの保護者達であった。
「カーリー様!無礼とは存じ上げておりますが、どうか落ち着ついてください!」
「どうかご容赦願おう」
だが、殺戮の女神は止まらない。
「シヴァの半神、とスーリヤの半神...!邪魔を、するで、ない!!」
『カルナさんんん!!そんなギャグ漫画みたいな埋まり方ありッスか~?!?!』
瞬殺だった。いや、この状態のカーリーに話をつけようとしたのが間違いだったのかもしれない。カーリーは手元のガネーシャ神(ありがたい石像の姿)を持つと、思いっきり2人を真上に打ち上げた。筋力EXから繰り出される速さに、この中でも速い方のアシュヴァッターマンでも対応出来ず、2人とももろにくらい、2人仲良く天井に埋まった。
「カルナァァァ!アシュヴァッターマンンン!!」
「次は貴様だ...!」
「ぎゃあああ!!」
『逃げてぇ!!そこの人早く逃げてぇ!!』
「おいてめぇご指名だぞさっさと逝け!!」
「知るかバァカ!!お前が代わりに死ね!!」
残された2人は醜い争いをしている。
ビーマの目的はドゥリーヨダナであって、カーリーでは無い。というかいくらサーヴァントとして召喚されランクダウンしているとはいえ、同郷の者でカーリーと戦おうとするやつはそうそう居ない。
さて、こうしてビーマとドゥリーヨダナは互いにカーリーを押し付けあっていた。が、不運なことに、カーリーの目にはビーマがドゥリーヨダナを逃がそうとしているように見えてしまったのだ。
「貴様も邪魔するか...!!ならば死ね!!」
ここでカーリーの投擲(自動クリティカル)が決まってしまった。カーリーはガネーシャ神(ありがたい石像の姿)を両手で持ち上げると、全身の力を込めビーマに向かって投げた。
『ぎゃああああああ!!』
「なん、っぐあ!!」
「ビーマァァァ!ざまぁwwww!!...あれ、ビーマ?...おいこやつ死んだんじゃないのか?!?!」
筋力EX+宝具級の重量が合わされば、対応するにはそれ相応の...例えば同様に宝具...が必要であった。
その用意が間に合わず、さらにクリティカルヒットしたビーマはそのまま壁にのめり込んだ。ありがたい石像と共に。姿のほとんどは見えなくなったが、唯一見える腕は、少しの間だけ空中に浮かんでいたが、間もなく力無く横たわった。ガネーシャ神の方も、内部て異常があったのか、全く叫ばなくなってしまった。
「安心しろ...次は貴様だ」
「っ、しまった!後ろ?!」
いつの間にか背後に回り込まれていた。カーリーはそのままドゥリーヨダナの腰を掴み、そして...
「死ね!!!」
そのまま後ろへ勢い良き叩きつけた。そう、ジャーマンスープレックスである。神代のインドにこの技はなかったはずだが、それはそれはとても綺麗なジャーマンスープレックスだった。内なる格闘ルーラー達が思わず雄叫びをあげたくなるほど素晴らしく、威力の乗ったジャーマンスープレックスだった。
ドゥリーヨダナは悲鳴をあげる間もなく頭を思いっきり叩きつけられ_なんなら頭が床に埋まった_頭にあった角が、ポキッと音を立てて割れた。
「さあ、どう殺してやろうか」
ジャーマンスープレックスの衝撃で意識を飛ばし、床に埋まったドゥリーヨダナをカーリーがトドメをさそうとした。
ここに、(渡した本人からしたら)最悪なタイミングで、助け舟が再び渡る。
「兄さん!凄い音したけどまたマスターに迷惑かけてな...」
「兄貴!人間の俺から写真もらったんだけど、この服また着てくれな...」
そう、カリ化した弟達である。2人はカーリーの姿と、その後ろに広がる地獄を見て、ピシッと固まった。
「貴様らからも...カリの匂いがする!!」
「アッヒュ」
「うわぁぁぁあ?!?!」
こうして、弟達の尊い犠牲により、何とかトドメを刺される前に生き延びることが出来たドゥリーヨダナであった。
また、角が折れたことにより、霊基異常も治っていき、マスターが戻ってくる頃には完全に元の姿に戻っていた。
これが、マスターが周回から戻ってくる前に起こったことだった。
「いいですか?カーリー」
「...」
「『カルデアにいるサーヴァントを殺すようなことはしない』...さん、はい?」
「うむ...」
「わし様霊基異常はもうコリゴリ...」