純粋なる愛のカタチ -prelude-

純粋なる愛のカタチ -prelude-

サラダ事変「純愛ルート」

 とある料理好きの生徒が作ったサラダ。一見すれば何の変哲もない料理。しかし、彼女にとっては『それ』は唯一にして奇跡の一品であった。

 ただ、彼女の持つ神秘はその奇跡をも飲み込み、歪な形で顕現されてしまった。さらに遅効性で神秘が発揮されたばかりに、ソレの発見が遅れてしまったのも不幸だといえよう。

 そんな奇跡と邪悪が見事に相乗りしてしまった名状しがたき生物「サラダちゃん」が彼女の出身校であるゲヘナ学園で出現。その後は鉄道などの交通機関をはじめ、迎撃に向かったヘリコプターや戦車を介してキヴォトス各地で増殖を開始。

 かくして生徒たちの純潔と(性の)倫理観などのあらゆる概念を破壊の限りを尽くし、筆舌しがたい騒動となった大事件--後世に『サラダ事変』として伝えられることとなる--の中で、一つの愛が生まれようとしていた。


 --これは、騒乱の最中に生まれた運命の出会いの物語である。



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  百鬼夜行連合学院。

  観光業を中心に栄えている学園都市。

  三大学園--ミレニアム・トリニティ・ゲヘナ--ほどの規模はないにしろ、それでも人で賑わう穏やかな都市。

 その平穏ともいえる都市にも「サラダちゃん」の魔の手が伸びていた。


  きっかけはハイランダー鉄道学園の敷いた電車の乗客たちが、その異様な姿で百鬼夜行の大地に二人が我先にと降り立ったことだった。

 彼女たちの口からは暗緑色の触手がうごめき、中には尻尾が生えたかのように肛門からも触手が活き活きとビチビチ動き回っている。

 加えて、はち切れんばかりに膨れ上がった腹部を抱えながら嬌声を上げているという、あからさまに異常な光景。


「ん”お”お”お”お”お”……」

「だ、大丈夫ですか!?えぇっと、こういう時は……あわわ……」

「お”っ”ほ”っ”……お”っ”、お”っ”……」

「だ、大丈夫ですよ。落ち着いてくださいね!すぐに救急車を呼んできますから--」


 百鬼夜行の担当駅員のハイランダー生が少しパニックになりながらも、この異常事態の収拾を優先して、彼女たちに背を向けて急いで無線で連絡を入れる。

 もし、この少女が眼下で起きている異常事態が如何なるものか知っていれば、この行動は間違っていると気づいていただろう。

 ……否、たとえ職務を放棄して逃げ出したとしても「結末は変わらなかった」というべきか。

 いつの間にか口の触手は吐き出され、二人の生徒は嬌声まじりの絶叫をあげる。


「う、う”ま”れ”……”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ぁ”ん”ん”ん”♡」

「あ、あ”た”し”も”……も”う”だめ”ぇ”え”え”え”え”え”!!ん”ぎぃ”い”い”い”い”!!」

 二人の生徒の声にビックリしてしまい思わず少女が振り返ると、秘部と尻穴の両方からゴロゴロと生物とは思えない『何か』が次々と生み出す悍ましい光景が繰り広げられていた。

 ソレの上部にはキヴォトスの生徒なら誰しも持つ天輪--ヘイローが浮かんでいて、少女の理解は一気に許容量をオーバーしてしまった。


(あ、あれ?あれは生きているの?そもそも、あれって--)


 ほんのわずかな硬直―――

 ―――ソレが、少女に急接近する。凄まじい移動速度。少女は咄嗟に反応できない。

 ソレを警戒していたとしても―――瞬きする暇もなく、呼吸する暇もなく、少女の視界の中で、ソレは、純粋な意思を変えないまま、触手を、口腔に向けて……


「も”ごっ”!?も”っ”、ん”ぐぅ”う”う”う”う”う”う”!?」


 駅員である少女は二人の生徒から生まれた大量のソレに飲み込まれ、新しい生命の依り代としての役目を担うことになった。

 そして、彼女の手に持っていた無線機が零れ落ちたのを合図と言わんばかりに、列車の扉がひしゃげて大量のソレが百鬼夜行の大地へと雪崩れ込んできた。



 かくして、百鬼夜行連合学院に「サラダちゃん」が大地に降り立ったのであった。



[ to be continued...  ]

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