純粋なる愛のカタチ -part.4-

純粋なる愛のカタチ -part.4-

サラダ事変「純愛ルート」

 いよいよ和楽チセとサラダちゃん、異なる種族による愛の営みが始まろうとしていた。

 自分の秘部に逞しいイチモツを挿入して、出し入れをして互いの性的興奮を昂めていく(……もっとも、そのイチモツの代わって今回はサラダちゃんの触手を入れていくことになるのだが)。

 互いが絶頂を迎えると同時に種となる液体を彼女の胎内に注ぎ込み、彼女から放たれたタマゴと混ざり合って、新しい生命の素が完成する。

 それが彼女の母なる揺り籠に降り立って、時間をかけて生命を育んでいく。そして時が満ちたときに、秘部と揺り籠を結ぶ肉壁をくぐり現世へ産み出す。

 生命の営みとしては至極真っ当なものだが、その相手がこの世の生物の分類では判別することのできない名状しがたい生命体である「サラダちゃん」であり、その生命との間の仔は如何なる存在として扱うのか。

 一般的な常識を携えたヒトであるならば、この行為についてこう断じるだろう。


--決して交わってはならない。生まれるべきではない、忌むべき生命体である--


 だがしかし、不思議な感性をもって友好関係を築こうとしている少女にとって、このような命題は無意味な考え方であり、今するべきことは一つしかない。


--この子との子供が欲しい--


 自分の手で、自分のお腹の中で育てて、新しい生命が産まれる瞬間を見たい。

 この世で一番気持ちいいであろう、この感覚を味わいたい--それが今の和楽チセを突き動かす原動力となっているのだから。


============================


 とはいえチセにとっても、今回の愛の営みは初めてでありどうすればいいのかわからずに困惑していた。

 無論それは彼女から生まれ、母親を喜ばせようと2メートル近くの大きさに成長を遂げた中枢のサラダちゃんも同様であった。


「う~ん……。いざしようと思っても、何から始めればいいか分からないね」

[わがはは、わたしもおなじことをおもっています]

「だよね~。……どうしよう」

[せめて、さんこうしりょうがあればいいのですが]


 二人が途方に暮れて諦めかけた時、チセの携帯端末が鳴り響く。モモトークを通じて、陰陽部の部長である天地ニヤからの着信だった。


「うわっ、ビックリしたぁ……。あ、ニヤ様からだ~」

[しりあいですか、わがははよ]

「うん。えーっと?『チセ君、今どこにいますか。聞こえてたら返信して』……だって」

[そうでしたか。……ところで、それはなんですか?]

「これ?これはねぇ、便利な道具だよ」

[ぐたいてきには、どのようなものなのですか?]

「ん~っと、知り合いと連絡を取ったり、調べ物をしたり、買い物のお会計に使えたり……とにかく色々と便利な機能が付いたものだよ~」

[ほうほう……。わがははよ、それをつかえば『はつたいけん』についてのじょうほうがえられるのでは?]

「……その手があったかぁ」


 サラダちゃんからの提案に合点がいったように彼女は手を打ち、ニヤへの返信を手早く済ませる。そして、エクスプローラーを起動して検索する作業に入る。


「『今は陰陽部の部室にいます』っと……。でも、そう簡単に出てくるかなぁ?」


 とりあえず、チセは思いついた単語「初体験 気持ちいい」でネット検索をかけてみる。すると--


[どうでしたか、わがはは]

「……信じられない。まさか簡単に出てきちゃうなんて~」


 そこには初めての営みについて事細かに書かれたサイトが見つかり、キヴォトスの見識の広さに驚くと同時に「どうして知っているの?」という疑問がチセの中に浮かんできた。

 画面をサラダちゃんに近づけて、やり方を説明しようとする。


「見て見て~。あんなことやこんなことが包み隠さず書いてあるよ」

[そうですか。ところでわがはは、そのたんまつというものにあなはありますか?]

「あるよ?……どうして?」

[そのあなをかいして、『はつたいけん』のじょうほうをえたいとおもいます]


 サラダちゃんから語られる予想外の情報収集の方法に驚くチセ。

 しかし、生まれたばかりのサラダちゃんがヒトの快感や銃火器の使い方など、本来ならば学習する工程を大幅に省略して順応できている理由も、この「情報を所有している『物体(主にヒト)』から情報をフィードバックしている」と考えると納得がいくものである。


「わかった。壊さないようにね~」

[りょうかいしました、わがはは。さんこうとなるものをもとに、たんまつようのしょくしゅをせいせいしますのでおまちを……]


 サラダちゃんの進化は止まらない。彼女のコネクターを参考にしているものの、ついに情報端末へのアクセスを可能としてしまったのだ。

 もし、このシステムがミレニアムに流れ着いてしまった日には、学園がサラダちゃんの手に陥落してしまう時間が早まっていただろう。

 不幸中の幸いなのは、この進化はあくまで「愛の営み」をするための過程の一つにすぎず、進化の過程で不要だと判断して消滅する可能性があるということだ。

 ……もっとも、この情報収集の有用性に気付いたサラダちゃんが残してしまう可能性もあるわけなのだが。


============================


 チセが見つけたサイトを閲覧して数分後、満足したような表情を浮かべて(いるように見えた)サラダちゃんが彼女の情報端末を返す。


[なんというじょうほうりょう……。しかし、おかげでわがははをよろこばせるほうほうがわかりました]

「本当?すごいねぇ、えらいえらい」

[それほどでもありません。それにまえにもいったとおり、わがははのよろこびこそ、われらのよろこび……そこにかわりはありません]


 他者を喜ばせる--奉仕の精神は変わらず、ただ「相手を尽くす」ことに全力なサラダちゃん。

 他人を喜ばせ、他人が幸せになることを自らの至上の喜びとする。そんなあり方だからこそ、彼女はサラダちゃんたちを受け入れているのだ。




[ to be continued... ]

Report Page