答え合わせは終幕までお預け

答え合わせは終幕までお預け

冴潔二週目感想スレ35・58・70の人間

Oh!皇帝さん無自覚の片想いromance……カナワナイねカナワナイね。な話。

※CP要素はほとんど死滅しているけれど、表記するなら冴←潔((←))カイ

※カイ潔二人がバスミュ所属のプロ時空

・もそもそ書いてたら本スレの方で閃堂が勝利していた。この話には出てきません。



「何を観てるんだ世一ぃ」

 と、ロッカールームのベンチで何かの動画を観ていた世一に背後から声を掛けると、日本人らしく貧相で細い肩が大袈裟に跳ねた。そして、こそこそと持っていたタブレットの電源を落とす。

「お前には関係ないだろ」

「世一くんも男の子だものねぇ」

「変な勘違いしてんじゃねぇよ」

 いつものように構ってやれば、いつものように棘を孕んだ言葉が返ってくる。無視をされないだけマシになったが、正式にチームメイトとなり共にブンデスリーガを駆け上がっていく仲なのだから、そろそろ尻尾を振ってくれてもいいのに。とは思う。

 ……まぁ、俺に尻尾を振る世一は世一ではないのだが。

「で、チェリーボーイクソ世一クンは何を見ていたのかな?」

「あっ!テメェ返せ!」

 俺は世一の手からタブレットを奪うと、電源を付けた。このタブレットはチームで共用で使っているものなのでパスワードは知っている。打ち込むと、世一が隠そうとしていた意味がよく分かった。

「ふぅん……世一は本当に糸師冴が好きねぇ」

 世一は、どこぞのサッカーファンが動画サイトに上げた“糸師冴スーパープレー集”と銘打たれ動画を見ていた。

 素人がまとめたそんなものに頼らずとも、実際にプレーを観るチャンスやなんなら直接試合をすることの出来るチャンスなんていくらでもあるのに、世一は糸師冴の計算され尽くした美しいプレーと、そのプレーが生み出した華々しい活躍の一部を切り抜いた10数分程度の動画に、憧れのような熱視線を向けている。

 それが酷く気に食わない。気に障る。世一が、皇帝たる己の道化が、俺以外のものに心を奪われ、あまつさえ未練を抱いたままだという事実をまざまざと見せつけられるたびに、俺は心の中に怒りにも似た得体の知れない感情が巣食うのだ。

「なんだよ。女々しいってなじるのか」

「随分とクソ可愛いこと」

「うざい。散れ」

  うげぇ。と顔を顰めた世一は、俺との会話を諦めて蝿でも退けるように右手をぱたぱたと動かす。勿論、退いてやるつもりはないのでそのまま隣に陣取ってやった。

「大体世一は湿っぽいんだ。過ぎた恋。しかも淡い初恋だろう?恋人の一人や二人作ればすぐに忘れる」

「二人作ったら浮気じゃん」

「稼いでるだろう?世一は若いし見目もまぁ、全体的に幼いが悪くはない。呼んでもないのに向こうから言い寄って来るはずだ」

「まぁ、新しい恋も悪くはないのかな」

 でも、と世一は言葉を区切る。

「でもやっぱ、そんな……冴を忘れる為だけに誰かと付き合うなんて不誠実な真似したくないよ」

 優しく吐露された本心は、どこまでも優しくて臆病なのに痛くて、でも安堵してしまったのは何故なのだろうか。

「ていうか、それを言うならお前もそうだろ。沢山週刊誌に撮られてるし沢山ラブコール貰ってるだろ」

「大人の恋愛の作法は初恋も忘れられないチェリーキッズの世一には早いだろ?」

「はぁ……お前、真面目にサッカーやってたら普通に格好いいのに。マウント癖さえなけりゃな」

「マウント癖さえなければ俺はお前の恋人だったか?」

「何その質問」

「さぁな」


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