第二章
チャドとカワキ①瀞霊廷内部
「な…何だ この落下跡は…!!」
「どうしたらこんな跡ができるんだよ…!?」
目の前に出来た大きなクレーターに、死神達が慄いた声を上げる。しかし、冷や汗をかきながらも、すぐに侵入者の捜索を開始した。
「し…死体がないってことはまだ生きてるってことだ! 捜すぞ!!」
「お…おう!」
遠ざかっていく足音を聞きながら、チャドが木の上に腰掛けて煙を上げる拳に息を吹きかけた。
「…さて…どうするか…」
『助かったよ、茶渡くん。ひとまず一護達と合流を目指そう』
「そうだな…」
同じく木の上で屈んで下の様子を伺いながらカワキが応えた。チャドが頷き、二人は一護との合流を目指して動き始めた。
◇◇◇
「いくぞオラァ!!」
「ぶっ殺せーー!!!」
怒鳴り声を上げて突っ込んでくる十一番隊の隊士達に囲まれた一護達。壁に囲まれた一本道で逃げ場は無い。
「くそ…ッ! やっぱ力ずくしかねえか!!」
覚悟を決めた一護が刀を構えたその時――隊士達が立っていた側面から強烈な攻撃が叩き込まれる。壁が崩れて、土埃が舞った。
敵が分断され数が半減したことで、好機と見た一護が攻勢に出る。次々と隊士達を倒し、駆け抜けていった。
(………。…こっちの方で一護らしき霊圧を感じたんだが…行き違いになったか…)
『逃げ足が早いな…いつもこうだと助かるんだけど……。残念ながら合流はまだ先になりそうだね』
土埃の向こう側からチャドとカワキが姿を現した。チャドは一護の霊圧を頼りに位置を探るも、行き違いになったことを悟り、周囲を見回す。
「おい! てめえコラ!!」
「やりやがったなこの野郎…!」
「てめーら さっきの奴らの仲間か!? あァ!?」
動ける隊士達が怒鳴り声を上げながら二人に突っかかる。頭に血が上った様子の隊士達とは対象的に、チャドとカワキは顔を見合わせて冷静に言葉を返した。
「…多分そうだ」
『やっぱり一護達はここに居たようだね』
「上等だ! 十一番隊ナメやがってコラ!! こっから生きて帰れると思うなよ!!」
「5分でブッ殺してやらァ!!」
血気盛んに荒々しい声で刀を構える隊士達。拳を握りしめるチャドを一瞥してカワキは銃を手に一歩後ろに下がった。
カワキが伏し目がちに薄ら笑いを浮かべて口を開く。
『“5分で”か。未来の話だ。君達はまるで預言者のようだね。……援護するよ、茶渡くん』
「…ああ。前衛は任せてくれ、カワキ。…悪いがお前達の期待には応えてやれない…」
「あァ!? どういう――」
「すぐに終わる」
***
カワキ…見えざる帝国ではまず許されない預言者ムーブをした隊士にウケている。