笑顔の言葉

笑顔の言葉

モテパニ作者

ゆい「デリシャスマイル〜」

拓海「我ながらいい出来だ」

ある日、ゆいと拓海は拓海の作った料理を二人で食べていた。

ゆい「それにしてもすごいよ拓海!あの店のオムライスそのものだよ」

拓海「ま、俺にかかればこんなもんだ」

拓海が作ったのはオムライス。

しかも以前二人で行ったブンドル団にレシピッピを取られた例のお店のオムライスを再現したものだった。

念のため言っておくとレシピッピを通してハートキュアウォッチによるレシピ検索はしていない。

完全に拓海の独力である。

そして会話もそこそこに食べ進める。

するとゆいが拓海をジッと見つめていた。

拓海「どうした?」

ゆい「拓海ってさ、食べてる時表情固いよね?」

拓海「えっ」

急な指摘に素っ頓狂な声をあげるも拓海にはその指摘に心当たりがあった。

というのも拓海はゆいな負けず劣らず食べる事が好きだ。

だから拓海も美味しいものを食べると顔を綻ばせる。

それを以前友人に顔が崩れてると指摘されたことがある。

軽口の範囲だし拓海も怒りや羞恥を覚えたわけではないのだが、好きな女の子の前でそれを見せたく無いのが年頃の男の子だった。

と言っても最初の一口目はつい幸せそうな顔になるのだが、その時はゆいが食べることに全集中していて見逃していた。

ゆい「拓海も笑ってみなよ〜、ほらデリシャスマイル〜」

拓海「んなこと言われてもな…」

ゆいの頼みは聞いてやりたい、そう思いながらもやはり恥ずかしい。

ゆい「む〜いいじゃん。ほらあーん、これ食べたら笑顔で言ってみて、デリシャスマイルって」

拓海「え!?」

そう言ってゆいは自分の分のオムライスを掬って拓海へ差し出す。

それはいい、あーんするのもされるのも経験はあるのでそれを食べるのは問題ない。

しかしこれを食べれば幼馴染の決め台詞を言わなければならない。

それはただ笑うより恥ずかしい。

ゆい「あ〜ん」

拓海「……っ」

しかし惚れた弱み、ゆいの頼みは聞いてしまいたいのが拓海であった。

拓海「あー、ん」

意を決してゆいからオムライスを食べさせてもらう。そして…

拓海「デ、デリシャスマイル〜…」

酷くぎこちない表情でそう言った。

ゆい「うーんやっぱり表情固いね、もう一回やってみよ。はいあーん」

拓海「もうやんねーよ!」

流石にゆいをもってしても一度目で羞恥は限界を迎える。

その後拓海は自分の分をさっさと平らげてしまう。

しかしその後立ち去るような事はせずしっかりゆいとの時間を過ごすのだったが…

そして拓海はまだ知らない。

この時の出来事が後に拓海を大きく困らせる事に…

〜〜〜

あまね「品田、今日時間はあるか?ちょっと私に付き合ってくれ」

それから数日後の放課後、教室にあまねが尋ねてくる。

元生徒会長の急な来訪に周りは少々騒つくが、当の拓海はなんでもないように対応した。

拓海「急にどうした菓彩?まあ時間はあるけど」

あまね「いやなに、実はウチの店で新作を出したいという話が出ていて私もアイディアを提供しようと思っているんだが、モニターが欲しくてな。女子だけでなく男子の意見も欲しかったからきみに声をかけたんだ」

拓海「ふーん、そういう事ならいいけど」

拓海は気づいていなかった。

これが罠である事に…

〜〜〜

拓海「ごちそうさまでした。悪いな、ごちそうになっちまって」

あまね「あくまで試作さ、そう言ってもらえるならこちらもありがたい。それで品田、美味しかったか?」

拓海「ああ美味かったぞ」

あまね「なら言わないのか?デリシャスマイル」

拓海「!?」

突然の一言に固まる拓海。

拓海「な、なんで知って…」

あまね「普通にゆいから聞いたぞ」

拓海「(ゆい〜!)」

ゆいに心の中で物申す拓海だが別に口止めしていたわけでは無い。

だからゆいは悪くないのだ。

あまね「さあどうした?ただごちそうになるのが申し訳ないなら笑顔で感想でもくれないか?」

拓海「くぅっ!」

拓海は気づく嵌められたと。

拓海は自ら申し訳なさを表明し負債を抱えた。

あまねはそれを計算してこの状況を作ったのだ。

ごちそうになったのが試作品なのもよくない。

試作、つまりその価値がまだ不明である、よってその返礼はあまねの言い値で決まる。

しかしそれが法外ならば突っぱねる事もできる。

それならばあまねの試作を自身の恥ほどの価値が無いと拓海に値踏みできるかにかかっている。

拓海「デ、デリシャスマイル〜…」

そしてそれができないのが品田拓海という男だった。

あまね「くっ!」

それに思わずあまねは顔を伏せる。

拓海「笑うなよ!」

あまね「いや、…すまない」

あまねは笑ったのではない。

あまね「(品田の笑顔、ときめいてしまった)」

あまねは顔を赤くしてしまったがゆえに顔を伏せたのだ。

しかし笑ったと勘違いされているならそれに乗っかるまでだ。

拓海「たくっ、こんな事はもう勘弁してくれ」

あまね「すまんすまん、もう一品ごちそうするから許してくれ」

二人はその後何事もなく過ごす。

しかし拓海の災難は終わっていない。

〜〜〜

ここね「拓海先輩、今日時間はありますか?」

拓海「…」

後日既視感を感じる誘いを受けた拓海。

ここね「うちのレストランで新メニューを出すことになって、それで意見が欲しいんですが」

内容まで似ている。正直嫌な予感はしたのだが。

拓海「(菓彩ならともかく芙羽が妙な事するわけないよな)」

とここねを信じたいと思った。

あとデュ・ラクの新メニューにも興味があった。(こっちが本命)

〜〜〜

ここね「どうでしたか拓海先輩?」

拓海「…すげー美味かった」

流石高級レストラン、試作であってもその完成度はピカイチだ。

以前招待を受けて食べた事はあるが、その時はおめかししたゆいに気を取られたりゆいとダンスしたりなどで集中にかけていたので今回集中して食べられたのは僥倖だった。

そんな満足そうにしている拓海をここねはジッと見ていた。

拓海「…どうした?」

ここね「あ、えっと、言わないのかなって、デリシャスマイル」

拓海「(芙羽ータス、お前もか)」

当然ここねもゆいから話を聞いている。

そしてあまねの件も聞き今回のセッティングを行った。

とはいえ無理強いするつもりではなくどーしても嫌なら引き下がるつもりだが。

拓海「デ、デリシャスマイル〜…」

無碍にするには恩が大きすぎた。

ここね「〜〜〜っ!」

そしてここねもまた赤面して顔を伏せた。

拓海「…はいはい」

その後しばらくここねは顔を伏せていて、そのままなし崩しに解散となる。

そして当然この件はここで終わらない。

〜〜〜

らん「拓海せんぱ〜い!今日時間ありますかー?」

三度目。ここまでくれば流石に拓海も学ぶ。

拓海「悪い華満、今日はちょっと…」

状況を整えられる前に断ればいいと拓海は思っていた。

らん「そっかー、じゃあいつ空いてる?明日?明後日?」

拓海「え"っ?」

らん「それともひょっとしてらんらんのお誘いは嫌?あまねんやここぴーはよかったのに…」

ここで拓海は自分の思い違いに気づく。

もうすでに拓海は二度彼女らの誘いをうけている。

ここから誘いを断るような真似をすれば彼女達の中に仲間はずれを作るのだ。

ここに至れば、否、あまねの誘いを受けた時点で拓海は詰んでいたのだった…

それから、拓海の元へ多くの少女達が食べ物を持って訪れる。

ソラ「拓海さーん!クモパン作ってみたので食べてくれませんかー!?」

のどか「拓海くん、すこやかまんじゅう一緒に食べない?」

ゆり「おと、こほん。拓海くんこれよかったら…」

彼女達が訪れる度に拓海はデリシャスマイルをしていく。

ましろ(まし拓)「拓♪おにぎり二人で食べよ♪」

拓海「…悪い虹ヶ丘、それはだめだ」

ましろ(まし拓)「なんで!?」

しかしそんな拓海にも譲れない部分もある。

おにぎり、拓海から言わせればおむすびを二人で食べるのは拓海にとっては譲れなかった。

ましろ(まし拓)「だったら二人きりじゃなければいいんだね!わたし達!集合!」

ましろは己の分裂達の力を借りようとするが

ましろ(ソラまし)「え、やだ」

ましろ(ソラ拓)「あいにくだけどそれには協力できないよ」

ましろ(作家)「ごめん今忙しくて」

ましろ(妖精)『体が小さいのでおにぎり一個もまともに食べられないと主張している』

ましろ(常識人)「拓海くんの意思を尊重してあげた方がいいんじゃないかな?」

しかし誰一人として賛同はしなかった。

ましろ(まし拓)「うぅ…同じわたしなのに意見が全然合わない…」

ましろ(常識人)「たぶんだけど意見が合うならそもそもこんな事になってないんじゃないかな?」

ララ「(危なかったルン、ましろと同じでおにぎりで突っ込む所だったルン。ここは一度撤退ルン)」

それからもしばらく拓海の元へ女の子が集まる。

そして拓海はしばらくデリシャスマイルが癖になったとかならなかったとか…


Report Page