【窮地でこそ人は覚醒する】

【窮地でこそ人は覚醒する】

Part17 - 117-119

……甘い声が聞こえる。

その美しさ故に身を委ねてしまいたくなるような、心が震えてしまうような、そんな声

………あぁ、この声に従えば、この声を聞いてれば、後は何とかなる、私は、救われ──


『後は君に任せるよ』

───軽薄な声が心に響く。


良い加減で、小市民な言葉で、それなのに染みついた声

……疲れ切ってるのに、進むことを止めないあの人の声が


「死、ねない……まだ…死ぬわけには、いかないの……!」


何かがヒビ割れる音がする

硝子とか、瓦礫とかじゃなく、私自身が割れ崩れていく音が


「私は───生きていたい!生きなきゃダメなの!」


声が聞こえる。

何を言いたいのか分からない、けれど暖かい光が私に入り込もうと囁く。


「まだ私は何と成せてない!まだ何もできてない!まだ何も達せられてないの!

 私は──任されたのだから、やり遂げなきゃいけないの!!!」


ヒビ割れる、声が聞こえる

崩れる、入り込んでくる、壊れる、何かが変わっていく、何かが書き換えられる。


“関係ない”


生きるために、逃げるためには

そんなことに構ってる暇なんてないの


「……邪魔よ、退きなさい。

 確かに私は押し付けられた、けれど背負うと決めたのは私自身よ

 それに、今の私に必要なのは暖かい言葉でも、正しくあろうとするための言葉でも無いわ」


何かが完全に割れた。

身体が割れて、ヒビから光が青く漏れ出る

普段なら慌てふためていてるはずの現象を、私はただ客観視できるほど受け入れてられていた。


「ただ任された責と、私を信じた人たちを───」



「───ついでに私自身を脅かしてくるクソ野郎共を纏めてぶち抜ける力が欲しいのよ!!!」


光が手元に収束する。

覚えが全くないのに、妙にしっくりくるソレが手元に現れて……私は迷いなく構えた。


「私は私が選んだ道を進む!

 例えそれが光さえ届かない闇の果てだとしても!それでも底があると信じたなら全部賭けるのが私流なの!」


有象無象の区別なく、森羅万象の一切を無視し、


「だから纏めて───失せなさいっ!」


───私の弾丸は貴方の全てを赦さない。

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