突入
ゲヘナ学園へと突入した便利屋たちを襲ったのは
昨日までの日常と同じような銃弾の雨。
おそらく生徒たちの私物だったはずの銃を
触腕の一つに絡め取って撃つヘイローを浮かべた触手たちの姿に
ハンドルを切って避ける課長の背中を冷たい汗が伝う。
学習速度が早すぎる。
発生してまだ一日足らずのはずの生物が武器の使い方を覚え、
幾匹かは弾が切れれば給弾まで行っているのだ。
ヘイローを持ち、銃を扱えるのであればそれはもう……。
強い焦燥感を覚えつつ、積載した重火器を使い捨てて障害となる触手たちを吹き飛ばす。
更には空からヘリに乗った兎小隊が援護射撃。
焼夷弾から広がった炎に慌てたように触手たちが中に捕らえた生徒ごと道を開ければ部室棟はすぐ其処だ。
炎の中を突っ切り、入り口をぶち破ってタッチダウン。
玄関ホールの中は当然のごとく触手と、それに嬲られる生徒たちに溢れているが、
持っていけない重火器を行き掛けの駄賃とばかりに全弾発射してスペースを確保。
廃車になりかけた車から便利屋たちが素早く降り立つ。
顔にはアリウス生たちの常用していたガスマスク。
口の中に入られるのを防ぐ為でもあり、今から使う物の為にも装備したものだ。
先頭を切る平社員の背中に背負われたのは大きな燃料タンク、構えるは火炎放射器。
悲鳴とも絶叫ともつかぬ声を挙げながら炎をあちらこちらにばらまくのは控えめに言って螺子が外れているが、
粘液に汚され尽くした建物内がすぐに炎上することもない。
先程のように炎の射線から逃げていく触手たちを尻目に便利屋たちは全力で駆け出した。