空虚と闇

空虚と闇


「みんなありがとうー!」

ワアアアアアアア!!!

数万人もの歓声を受け七武海メンバー海賊嫌いの歌姫ウタのライブは終了した。

彼女は貧困地域へのチャリティー活動の最中であり近くで起きてた海賊被害にも対処するなど多忙な日々を送っていた。その活動は大変だったが自分の活動に感謝の声をあげる市民の声を聞けばそんな疲れはあっという間に吹き飛んだ。

会場の出入り口で歓声を上げる市民たちに手を振りながら送迎用の馬車に乗り込もうとした際花束を抱えた女の子が走り寄ってきた。警備の海兵(UTA親衛隊と揶揄されてる戦う手段が限られるウタの護衛部隊)が慌てて取り押さえようと構えたところを彼女は静止し女の子に話しかけた。

「こんにちは何か用かな?」

「…!…う、ウタちゃんにこれを…!」

女の子は震える手で花束を渡してきた。

それはこの地域で取れる花で色とりどりでまるで宝石のようだった。

「ありがとう!大事にするね!お名前は?」

「ロミィです!」


無事にライブを終えた彼女は手配されていたホテルに到着した。

ホテルの警備をしていた副官のアインにおやすみの挨拶をし彼女は自分の部屋に入っていった。そこはまるで絵本で読んだお姫様の部屋を思わせる豪華で清潔な部屋だった。成功したものだけに泊まることが許される特別な部屋。

彼女は特に感激もすることなくテーブルに花束を置いてそのままベッドに倒れ込んだ。


空虚だ…


いくら社会的地位を手にしてもいくら名声を得ても一人の女の子から感謝の言葉をもらっても…


心を満たされることはなかった。


ふと脳裏に憎むべき男の顔が浮かぶ。


かつて父だった男…!


私を利用し多数の人間を国ごと虐殺した大悪党…!


そして利用価値がなくなった私を捨てた最低な父親…!


自分が七武海に入ったのも復讐をするため…いや理由を聞きたいのか自分でも答えはまだ出てこない。

あまりに心が暗くなりハッと我に帰る。いつもこうだ。何かしてないと心が闇に飲まれそうになる。もしこの闇に飲まれたら自分は…

そんなことを考えながら彼女は左手のアームカバーを撫でる。

かつて新時代の夢を誓い合った幼馴染との約束の証…


彼は今どうしてるだろう…?


元気でいるのだろうか…?


彼も誓いを守って生きてるのだろうか…?


そして…私は…誓いを守れてるのかな…?


そんな答えが出ないことを考えながら彼女は眠りについた。


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