空白の二年→再始動(リ・スタート)

空白の二年→再始動(リ・スタート)

名無し

シャボンディ諸島 17番グローブ

「久しぶりだなぁ、お前ら!」

そこには二年前世間を騒がせた海賊団『ウソップ海賊団』が集合していた。

二年前、ルフィ大佐によるチャルロス聖暴行事件の折、突如現れたバーソルミュー・くまによって散り散りにされたウソップ海賊団は二年の時を経て集合していた。

集合時期を広めたのはウソップ。彼の飛ばされた島に来たニュース・クーに特ダネと一緒にあるメッセージを本社に運ばせ、掲載させた。特ダネはエニエスロビー壊滅の真相。メッセージは一枚の写真。

それを見た仲間達はメッセージの意図を理解し、二年の空白の後再集合していた。

「ニュ~。久しぶりだなぁ、ウソップ」

「お~!ハチじゃねぇか!」

「スーパー久しぶりだな!お前ら!」

「久しぶりだなぁ!フランキー!」

「フランキースゲー!」

「おいチョッパー!興奮しすぎるな!死んでしまうぞ!」

「ふふっ楽しそうね」

「ん?お前は、ニコ・ロビン!?お前、うちの船に乗るのか!?」

「ええ、二年前に貴方達のお陰でエニエスロビーから逃げられた恩があるしね」

「いやあれはルフィに乗せられただけで・・・まあいいか!」

「ヨホホホホ、お嬢さん。パンツ見せてもらって宜しいですか?」

「やめんか!」

「やっと・・・!このむさ苦しいアホの巣窟にオアシスが・・・!」

「泣きながら何言ってんだ、お前もアホの一員だぞサンジ」

「へぇ、これがお前の仲間かハチ」

「え?」

彼らの再集合に一人の男が現れる。緑色の髪に緑の着流し、左目には傷があり、三本の刀を持っていた男。名はロロノア・ゾロ。海賊狩りと噂されている賞金稼ぎ。

「ろ、ロロノアァ!?なんでここに!?」

ウソップがたじろく。

「お前の船に乗せてもらおうと思ってな」

「なっ!?」

「そこのハチに誘われてなぁ」

「ハチ?」

「ニュ~。すまねぇウソップ。実はおれが飛ばされたところにこいつも居てな。なんか流れに流れて流れ着いたところがミホークが拠点にしてたところでな、こいつもおれもミホークに剣を習ってたんだ。おれは剣もそうだが航海士としての腕も磨いたんだ。ミホークら航海士としても超一流だったから。ついでにスリラーバークで奪い取った秋水はこいつに渡した。俺の剣技と刀は合わないからな」

「成る程・・・」

「で、どうなんだ?おれを加えてくれるのか?」

「・・・」

ウソップは数秒考え、

「そうだな、異例だけど副船長としてお前を迎え入れる。ロビンもうちの考古学者として迎え入れる。みんな、それでいいか?」

「・・・」

ぽかん、とゾロとロビンが口を開く。他のメンバーは少し黙り、そしてサンジが口を開く

「ま、おれは料理人(コック)だしな。キャプテンの判断に意義はねぇよ。それにこいつは強いしな」

「おれもスーパー異議なしだ!」

「おれも医者だしな!特に意義は無いぞ!」

「こういう時、うちのキャプテンは間違った判断は間違いないですからね」

「ニュ~!ありがとうな、ウソップ!」

船員からの許可も得た。ならばもう迷うことはない。

「よし、お前ら!船に乗れ!魚人島に出向だぁ~!!」

彼らは自らの船、『サウザンドサニー号』で魚人島に向かった。

入れ替わるようにある人物達がこの島に降り立つ。チャルロス聖を殴り倒した大罪人、モンキー・D・ルフィ。その上司のウタだ。彼らは目深にフードを被り、その顔は伺い知ることはできない。彼らは町を歩きながら話す。

「さて、ついたね。私たちの因縁の島」

「ああ、俺たちの『始まりの島』だ」

「本気でやるんだね」

「当たり前だ。まずは魚人島にいかなきゃな」

「その前にレイリーに礼をいわなきゃね」

「レイリーのビブルカードがあるからそれを使えばレイリーのところにたどり着ける。それよりも・・・」

「それよりも?」

「飯を食おう!」

「朝食ったばっかでしょ!!・・・ほんとそういうところ変わらないわね」

「ししし!まあな!・・・ん?」

「どうしたの?」

「あのチラシ・・・」

「?」

彼女は彼が指差すチラシを拾う。そこには

「『ウソップ海賊団再結成!人材急募!加入条件は懸賞金7000万ベリー以上』?何このチラシ」

「あいつら、こんなチラシばら蒔くようなやつだっけ?」

「うーん」

彼女はウソップの人物像を思い出す。彼は確かにお調子者でもある。しかし冷静に物事を分析することもできる男だ。よくいえば慎重、悪くいえば臆病。このチラシは多くの海賊を焚き付ける物だ。ならウソップはそんなことをするだろうか?いや、しない。彼女の記憶の中の彼のあり方とは一致しない。

「多分、誰かが騙ってるんだと思う」

「そっか。やっぱりな」

「てか、こんなチラシに騙される奴いる?」

「そうだよなぁ、いねぇか」

二人は笑い合う。いかにウソップがヤソップの息子とはいえ、ヤソップが赤髪のシャンクスの部下とはいえ、こんなチラシ一つに騙されるような輩がこのシャボンディにたどり着けるはずもないだろう。この海のレベルもそこまで下がろうはずがない。すると46番グローブの方角から多くの猛者達の心力を感じた。

「・・・いるなぁ」

「・・・いたねぇ」

思った以上にバカは多いようだった。

そしてドン、と誰かに肩がぶつかった。ぶつかった相手はバランスを崩し尻餅をつく。

「あ、悪ィ」

「ごめんね」

二人は謝り先を急ぐ。

「おい!テメェ!誰にぶつかったかわかってんのか!?」

ぶつかった相手・・・醜く肥えた腹に大柄な体型、銃を持った男はがなりたてる。男の名はウソップ。否、懸賞金2800万『三枚舌』のデマロ・ブロック。そして、彼の仲間達がルフィとウタを取り囲む。

「運が悪かったなカップルさん、うちの船長は今虫の居所が悪いんだ」

金髪の男がニヤニヤと笑いかける。

「・・・」

「こいつが誰かわかるか?かの有名な『狙撃の王 ウソップ』だ。わかるだろ?エニエスロビーをメチャクチャにイカれた海賊さ」

青い髪の不細工な顔が口を開く。

それに対してルフィもウタも口を閉ざす。

「わかったか?おれの恐ろしさを?わかったなら身ぐるみ置いてけよ、チビ」

「あぁ、わかった」

ルフィは口を開き、

「でも、急いでんだ。それにこれは渡せねぇ、弁当が入ってるから」

そう言って、彼らの前を素通りする。

隣のウタもそれに続く。

「そうか、それが遺言でいいんだな!?」

ブロックは、彼の仲間は銃を抜きウタとルフィに向ける。周囲の人間は彼らが死ぬと思った。しかし。


ブロックが銃弾を発射し、ルフィは少し顔を動かし銃弾を回避しつつ彼らを睨み付けた。たったそれだけで。


・・・・・・・・・・・・

ブロック達が、昏倒した。


「え・・・?」

周囲の島民達は困惑する。

あの小僧、一体何をした?と

「それが覇王色?」

「ああ!」

「使いこなしてるじゃん」

「ししっ!そうだろ!」

男女がそのまま前に進む。

「しっかしあいつら」

「?」

「ウソップ達に似てたなぁ」

「えぇ・・・?そうかな・・・?」

男の言葉に女は怪訝そうにしていた。


彼らが消えて数分、ブロック達は起き上がった。

「ボス!大丈夫か!?」

別行動していた仲間が合流する

「なんだったんだ?ありゃぁ・・・?」

困惑が先に出た。しかし徐々に怒りが湧いてくる。自身を歯牙にもかけなかったあのカップルの首をはねなければ。なぜなら自分はウソップなのだ、かの有名な赤髪海賊団狙撃主の息子。ならばこれからする行動は一つ。

「あのガキどもを見つけて連れてこい!公開処刑にしてやる!!」

そう仲間達告げる。二時間後、彼はこの選択を後悔することとなる。


13番グローブ

ルフィとウタはレイリーの店にたどり着いた。

「久しいな、ルフィ」

「久しぶりだなぁ!レイリー!」

ルフィはレイリーに抱きつく。

「お久しぶりです、シャッキーさん、レイリーさん」

「久しぶりね、ウタちゃん」

ウタは彼女達に一礼する。

「茶でも飲む?」

「ありがとうございます。ところで聞きたいんですけど、シャボンディ諸島、二年前より、荒れてませんか?」

「あ、それおれも思ってた。何でだ?」

「それはな・・・」

「海軍本部が新世界側のG-1支部と入れ替わったからよ」

レイリーの質問に別の女性が答えた。

「誰だ!・・・って、え?」

「嘘・・・まさか・・・」

オレンジ色の長髪、ウタ以上にメリハリのあるボディを惜しげもなくさらしている。上半身の衣服は胸元のビキニのような物しかなく、下半身はジーンズのような物を履いている。

「「ナミ!?」」

「よっ!久しぶり!」

彼女は海軍本部中尉ナミがそこにいた。

(まさか、私たちを捕まえに!?)

ウタは警戒する。が、

「あ、大丈夫。私あんた達を捕まえる気ないから。てか海兵辞めたし」

「「はぁ!?何で!?」」

「あんた達を犯罪者扱いするようなところにいたくないし、そもそも私が海兵になったのはあんた達を助けたいからだから、あんた達が困ってんならあんたらを助けたいし、それに・・・」

彼女は彼らを指差して

「あんた達、航海術持ってないでしょ」

「「そんなことないし」」

二人はそっぽを向きながら言う。ルフィは言わずもがな、ウタも基本の基本位しか知らず、何処に行くかを命令するだけで操舵や航海術については部下丸投げしていた。海兵としてどうかと思われるかも知れないが、苦手なものは苦手なのだ。

「よくもまぁ、それでここまで戻ってこれたわね」

「ま、まぁそれはともかくとして」

ウタは自分に不利な話題を反らす為に、先ほどの質問をする。

「海軍本部が新世界側にあるって本当?」

「ええ、今の元帥はサカズキさんよ。元帥が明確に四皇打倒を目標に掲げた覚悟の現れね。同時に旧海軍本部・・・今のG-1の近くのシャボンディには本部の影響力が薄れたせいか、ならず者が多くなってるのよ」

「サカズキのおっさん・・・」

「より協力な軍隊になってそうだね」

「そうね、加盟国から強力な実力者を集めて海兵に抜擢した。その中には大将になってる人もいる」

「つまり今海軍には四人の大将がいんのか」

「いえ、三人よ。クザンさん・・・大将青雉はサカズキさんとの元帥争いに負けて海軍を辞めたわ」

「「えっ!?」」

「今は何処にいったかわからない。生死不明よ」

「青雉さん・・・」

「クザンのおっちゃん」

「悪い話ばかりじゃないけどね、あんたらの後輩のコビー君。いまかつての貴方と同じ大佐になってるわ。」

「「あのコビー(君)が!?」」

二人は驚愕を露にする。

「ヘルメッポ君は少佐ね」

「おいあいつら俺たちの昇進スピードより早くないか?」

「すごいわね彼ら」

「ま、今の現状はこんな感じね。」

「ありがとなナミ」

「ほんと、ありがとう」

「いいのよ別に。で、私を一緒に連れていってくれる?」

「「もちろん!」」

「そ!ありがとう。じゃ、ちょっと買い物いってくるわね」

店を後にするナミ。町に入った辺りで彼女は路地裏に入り電伝虫を起動する。

「海」

『霧』

「お久しぶりです、隊長」

『あぁ、ナミ。ルフィ達と接触は図れたか?』

「ええ、接触できました」

『なら、彼らと共に行動しろ。海軍のことは忘れてくれてかまわない。長官からは許可も得ている。暫く俺やコビーとの連絡は控えろ』

「わかりました」

ガチャリ、と通信を切る。

ナミが海軍を辞めたのは事実だ。しかしその後彼女は、海軍本部機密特殊部隊『sword』の隊員になっていたのだ。

辞職の直前、『長官』と呼ばれる人物と接触しルフィとウタと接触できたなら彼らを助けよ、と密命を受けた。

「ま、好きにやらせてもらうわ」

彼女は路地裏から出たあと、

「ウタの分の服も買っておきましょ」

ショッピングに出掛けた。えげつない値切り交渉で服屋の店主が泣くことになったのはいうまでもない。

彼女がショッピングからバーに帰ってきたら、ウタとルフィが移動を開始した。どうも海軍があわただしく動いているらしい。

「十中八九あの偽物に騙された人達だよね」

「偽物?」

「あぁ、ウソップ達の偽物がいたんだ」

「へぇ、ウソップ達の偽物ねぇ。あいつらも有名になったものね。でどの辺りにいるの?」

「46番グローブ」

「げっ、私たちの出航場所の42番グローブの近くじゃない」

ナミは顔をしかめる。

「どうする?」

「シャッキーさん、集まってるメンバーはわかる?」

「海賊?海軍?」

「海賊で」

「ルーキーのなかでも厄介なのは深手のアルビオン、リップサービスドゥティ、それから超新星(スーパールーキー)濡れ髪のカリブー、コリブー兄弟」

「!。海兵殺しの兄弟まで・・・!」

「「え!?」」

「カリブーとコリブーは海兵をなぶり殺しにすることで有名な危険人物よ。なんでそんな奴が偽物なんかに・・・」

「大丈夫かな、海軍」

「一番近くで情報を報告した海兵が捕まったそうよ」

シャッキーが盗聴した事実を告げる。

「!」

「ちっ!不味いわね。・・・?あれ?ルフィは?」

「え?」

ふと気がつくとルフィがいなくなっていた

「ルフィなら46番グローブに向かったぞ」

レイリーが笑いながら言った。

「なっ!?あのバカ!騒ぎを大きくするつもり!?」

「レイリーさんなんでとめてくれなかったんですか!?」

彼らは店から飛び出し急いで46番グローブに直行する。途中トビウオにのってるチンピラからトビウオを奪って46番グローブに向かった。

ところで、このシャボンディ諸島のシャボン玉はかなり頑丈で、弾力性があり、その上数が多い。故にルフィはシャボン玉を足場に空中を駆けていた。見聞色で周囲のシャボン玉、人間、障害物を探査し、最短ルートを突っ切る。そして46番グローブの海賊達の集まっている広場の真上に出る。そして予備動作短くギア2を発動し、

「ゴムゴムの・・・JETスタンプ!」

覇気を纏わせた一撃が地面に放たれ轟音と共に土煙が舞う。

「ん~?なんだ?」

カリブーがそちらを向いた瞬間、

「月歩」

ギア2を維持したまま高速移動し、カリブーの真横を突っ切り海兵を回収し、ナミ達の下に向かう


46番グローブ 手前の橋

「ルフィ!やっと追い付い・・・!?」

ウタは彼の抱えている海兵を見て絶句する。

「これは・・・酷いわね」

応急処置をしながらナミも思わず顔をしかめる。カリブーの残虐性は噂には聞いていたが、まさかここまでとは思っていなかった。

「どうする」

「ルフィ、ナミ、ちょっと耳を塞いで」

「「!」」

彼らは耳を塞ぐ。

「『この風は どこから来たのと』」

彼女は自作の歌を歌う。すると海兵が眠りについた。

「よし、今のうちに病院に・・・」

「貴様ら、何をしている!」

声の方を向くと、海兵達の一団がいた。

彼らに顔を見られないよう、フードを目深にかぶる。

海兵達の隊長とおぼしき男は、重症の海兵を見て目を見開く

「!。その男は!」

「こいつを病院に連れていく。道を開けてくれ」

「あの場所から連れ出したのか」

「あぁ、こいつはなかなか根性が座ってる。あの状況で、命が繋がる限りお前達に情報を残そうと必死だった。死なせるのは惜しい」

「!。そうか。わかった。協力感謝する」

ルフィ達が病院に向かうため、隊長に命令された部下達は道を空ける。ルフィと隊長がすれ違う瞬間。

「ありがとうございます、大佐」

隊長は誰にも聞こえぬよう小声で一言そう告げた。

病院に担ぎ込み、海兵が手術室に行ったのを見て、ルフィ達も出航の為に47番グローブに向かう。


46番グローブを通り抜けながら、喧騒の音を聞く。

「ずいぶんと派手にやってるな」

ルフィはレンタルしたボンチャリを漕ぎながらナミに問いかける

「多分パシフィスタもいるんだと思う」

「パシフィスタってくまの形をした機械だっけ?」

「機械というかロボットみたいなものね」

「ロボット!?」

目を輝かせるルフィ。

「ええ、確かに二年前の『金獅子』との戦争で本格投入されてかなりの戦果をあげてるわ」

「そんなに凄かったの?その戦争?」

「軍艦や岩がシャボンディのシャボン玉位冗談みたいにふわふわ浮いて落ちてくるのよ。ミホークがみじん切りにしたり黄猿さんがビームで木っ端微塵にしたり赤犬さんが灼き払ったり青雉さんがバカでかい氷の塊ぶつけたり、ガープ中将、センゴク元帥が空中でシキと戦って海軍本部の建物そのものが2/3位倒壊したわ。もやは神話の光景よ」

「「えぇ・・・」」

ルフィとウタも流石に引いた。

「ガープ中将、あれで一応歳とってるのよね?全盛期とか山位潰してそうよね」

「ははは、流石にナイナイ。よね?ルフィ?」

「・・・」

露骨に目を反らしたルフィ。

「「えっ・・・?嘘でしょ?」」

今度はナミとウタがドン引きした。

そうこう話してるうちにようやく47番グローブが見えてきた。

「待てクソガキ!!」

「ん?」

ふと後ろを向くとウソップ・・・いなデマロ・ブロックがこちらに向かってきた。

「・・・ナミ、先にいってくれ。船に荷物を届けてくれ」

「え?・・・!わかったわ」

ナミは先に行く。ウタはルフィと共に残った。

「クソガキ!テメェなにしやがった!?」

「何の話だよ」

「おれの仲間がたまたま見てたんだ!テメェが海兵を連れ去るのを!テメェさえいなけりゃ今頃俺たちは海兵を盾に海軍を返り討ちに出来てた!」

「なにそれ、そんなのこっちは関係ないでしょ?」

ウタが会話に割って入る。

「なんだと?」

「『テメェさえいなけりゃ』?『海軍を返り討ち』?それが出来てないのが今のあんたらでしょ?つまりあんたらの実力不足。というより、あんたの戦略がなってないんじゃない?自分の失態を棚に挙げて、他人に噛みつく。そういうの何て言うか知ってる?」

彼女は笑って、両手を顔の横に挙げ少し握るような動作をすると、

「負け惜しみっていうんだよ」

挑発するように言った。図星を突かれ、ふるふると怒りに震える。

「ふざけんな糞アマァ!テメェに何が分かるってんだ!?」

「こいつの言う通りだろ」

ルフィはブロックを見据える。

「!?」

「お前達が海軍と喧嘩できるくらい強けりゃそれで終わりじゃねぇか。実力もねぇのに借り物の名前で偉ぶってんじゃねえよ」

「ふざけんな!?俺はかの有名な赤髪海賊団狙撃主ヤソップの息子、ウソップだぞ!?その俺に手ぇ出してみろ!ヤソップが、赤髪のシャンクスが黙っちゃ」

そこまでだった。彼が言い終わるよりも前に、ルフィの拳が彼の顔面に炸裂した


「ウソップはテメェみてェなクズじゃねぇよ!!!」


純粋な怒りによって放たれた拳により吹き飛ばされる。

「ウソップは絶対ヤソップのことを引き合いに出すような奴じゃねェ!!ウソップは嘘つきで臆病だけどいざというときは絶対逃げねェ!!そんな強ぇ奴だ!!」

ルフィは怒りを込めて叫ぶ。ブロックの言い分で何より怒りを感じたのは・・・、

「シャンクスの名前を脅しで使うんじゃねェ!!その名前はそんなに軽くねェんだよ!!」

その部分だった。

本気の怒りだった。故に彼は自分のフードが取れたことに気づいてない。

ブロックに助けを求めて追ってきたチラシにつられた海賊たちの一部がやってくる。そしてブロックを殴り倒した男みる。


知っている。

その顔を知っている。

その男はかつて海軍期待のホープとして名を馳せた。

祖父は海軍の英雄。

父は革命軍総司令。

アラバスタを救った英雄にして、天竜人を暴行した大罪人。

死亡説すら流れた一組の海兵の男女の片割れ。

その名は・・・

「も、モンキー・D・ルフィィィ!!??」

「あっやべ!」

ルフィは思わず顔を隠そうとする。

しかし、

「久しぶりだなぁ!モンキー・D・ルフィ!」

「あ、お前は・・・マサカリ!」

「戦桃丸だ!」

「うるせー!マサカリ持ってんだからマサカリじゃねーか!ん?おまえそのコート・・・」

「だから・・・ちっ、まあ今はどうでもいい。ワイはこの二年で正式に海兵になったんだ!悪いが捕らえさせてもらうぞ!ルフィ!ウタ」

「あ、私がいるのもわかったんだ。桃太郎くん」

「戦桃丸だ!?ほんとお前らは人の名前を覚えねぇな!?」

「なによ!戦桃丸より桃太郎のほうがかわいいじゃない!」

「そういう問題じゃねえ!?クソッほんと調子狂うな・・・PX-5!PX-7ルフィとウタを捕らえろ!!」

『ピピピ・・・了解しました』

PX-5はルフィの正面より、PX-7はウタの背後に現れる。しかし・・・

「ゴムゴムのJET銃(ピストル)!!」

「大強音撃(フォルティッシッシモ)!!」

ルフィは覇気を纏った拳でPX-5を殴り伏せ、ウタは覇気を纏った蹴りによりPX-7の頚椎を粉砕した。海賊達はその光景に驚愕し、戦桃丸は戦慄する。そのはずだ、パシフィスタは二年前のシャボンディや金獅子との戦争で猛威を振るった。その二年前と全く同じ性能の個体をぶつけたにも関わらずたったの一撃で破壊されると誰が思う。

2体のパシフィスタが爆散し、その爆炎に隠れるようにルフィとウタが消える。

否、ルフィはウタをお姫様抱っこの状態で抱えて、47番グローブ方向に跳ぶ。シャボンを足場に空中を駆ける。戦桃丸が気がついたときにはもう遅かった。


「ちっ!お前ら、追え!逃がすな!」

「はっ!」

海兵達が追いかける。47番グローブの中間辺りに差し掛かった時目の前にある人物が立ちはだかる。

「なっ・・・!?」

それは老人であった。しかしその目には未だ年齢を感じさせない覇気を秘めていた。シルバーズ・レイリー。『冥王』などとも称されるロジャー海賊団副船長。

剣を握り飛ぶ斬撃の応用で地面に線を作る。

「弟子の門出でね。すまないが邪魔させて頂く」

「・・・そのラインを越えたら?」

「越えないことをおすすめするよ」

「・・・!」

質問をした海兵が瞬時に察する。レイリーはこう言っている。

『このラインを越えるのなら相応の覚悟をしろ』

たった一人の旧き猛者の圧に。嫌な汗が止まらなかった。

「レイリー!」

レイリーの後ろから声が聞こえる。振り向くと数十メートル後ろの地上に彼が降り立っていた。追われているにも関わらず、足をとめていた。

「修行つけてくれてありがとう!おれは、やるぞ!」

彼に向けてルフィは大きな声で言う。

「"ひと繋ぎの大秘宝(ワンピース)"を手に入れる!!」

それは彼なりの決意表明だった。それと同時に宣戦布告だった。


『これから世界をひっくり返すぞ』


彼はそう宣言しているようにも聞こえた。


結局海兵達はルフィ達を取り逃がした。そしてその情報は瞬く間に世界中を駆け巡った。


『"アラバスタの英雄"モンキー・D・ルフィ、"歌姫"ウタ、完全復活。"ひと繋ぎの大秘宝(ワンピース)"は自分達が手に入れると堂々宣言』


海底

「昔よく遊んだよな、エンブンノードで」

「うん、歌ったよね『演舞音頭』」

「あんたらIQ下がった?」

そんなやり取りをしたとかしなかったとか。


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