空(から)の思い出
モテパニ作者「ん…」
拓海が目を覚ます。
そこは幼馴染であるゆいの家の庭。
よく見知った場所だが、いつもより視点が低い。
「たくみ〜」
それを不思議がっていると幼馴染のゆいが近づいてくる。
その姿は幼少期のものだった。
それでわかる、これは夢、過去の思い出だと。
「拓海、ゆいちゃん」
誰かの声が聞こえた、母や父ではない。
ゆいの両親でも、よねさんでもない。
なのになぜか懐かしいような、安心するような。
「リンおねえちゃーん」
ゆいがリンと呼んだその女性に近づいていく、女性もそれを微笑みながら受け入れる。
「拓海、どうかしたの?」
呼びかけに応えない拓海へ再度呼びかけてくる女性、その様子は覚えが無いはずなのに既視感を覚える。
それが自然な光景であるように思えてくる。
「なんでもない、お姉ちゃん」
そう言って拓海は"姉"に近づいていく。
〜〜〜
ダークドリーム「拓海、拓海」
拓海「んん、ダークドリーム…」
瞼を開けるとそこは自分の部屋、目の前には自分の体を揺するダークドリームの姿があった。
拓海「どうした…?朝から」
ダークドリーム「どうしたもなにもなかなか起きてこないからあんから起こしてきてって頼まれたのよ。そっちこそどうしたの?寝坊なんて珍しい」
拓海「ああ…」
先程まで見ていた夢、驚くほど鮮明におぼえている。
まるで本当にあったことのように…
拓海「なあダークドリーム、俺に姉さんっていたか?」
ダークドリーム「寝ぼけてるの?」
拓海「いや…そうだな」
ダークドリーム「夢の話なら時間があれば後で聞くから早く着替えてきなさい。朝ごはんもうできてるから」
そう言ってダークドリームは部屋を出ていった。
拓海「…よし」
拓海は夢から醒めて1日を始めるのだった。
〜〜〜
場面は変わりそこはアンダーグ帝国。
カイゼリン「………」
スキアヘッド「いかがされましたかカイゼリン様?難しい顔をなされておりますが」
カイゼリン「スキアヘッド…一つ聞くが、私に弟はいたか?」
スキアヘッド「弟、ですか?私が記憶する限りカイゼリン様にそのような関係の者はおられないはずでしたが」
カイゼリン「そうか…いらぬことを聞いた。下がれ」
スキアヘッド「はっ」
スキアヘッドはなにも聞き返す事なく下がる。
主の機微を察してここは聞き返す場面ではないと理解してのこと。
カイゼリンは今朝見た夢を思い出す、覚えが無いはずなのに懐かしい、まるで本当にあった過去のような光景を。
そこにいた男の子の事を…
カイゼリン「くだらぬ」
そう言ってカイゼリンは頭の中にいる"弟"を振り払った。