穏やかな日常と関係性
神永 side in
なんやかんやでライダーと美作、三人で出かけることになった俺たちはバスに乗って観光地へと向かっていた。
「しかし楽しみですね!」
「と言ってもそこまで期待するようなもんでも無いけどな」
「あら、神永クンったら2人も女の子連れておきながら期待してないの?」
「み、美作殿!は、破廉恥なのは良くないです!」
「別に変なこと言ってないわよ!?」
バスの1番後ろの席で俺を挟んでワーワー言わんでくれ…頭を抱えつつもバスは目的地へと向かう。
「で、着いた訳だが…」
まぁ夏休みということもあり観光地には人がごった返していた
「うわっ…流石にこれはキツいわね」
「しゃーねぇ、なるべく人を避けつつ見て回るか」
「そうですね、なにか美味しいものとかありますかね!」
食い意地が張っているのかそれ以外の面白いものを見つけられないのか…
そんなわけでいろいろと見て回りつつ、時折団子やら煎餅やらを買い食いしながら買い物をしたり充実した時間を過ごしていた。
───
「ふはぁ〜…遊びましたねぇ…」
昼過ぎに茶屋に休憩しに入った途端、ライダーが情けない声を出した。
「と言ってもそこまで回ってないだろ、人混みは多かったけど」
「それです、私の頃に比べるともう人混みの密度が…」
「確かにあれは慣れないとキツイからね、仕方ないわ」
冷たいお茶を飲みながら美作が意見に同調する
「…それに色々目移りしてしまい」
「行く先々の店でなんかかんか買ってたもんな、煎餅とか何種類買うんだってぐらいだったし」
「あ、あれは主殿のお茶請けにと…」
「そこまで食えねぇよ」
コイツは俺の事を煎餅魔人かなんかだと思ってるのか???
「神永クン、暇があれば暖かいお茶と煎餅をかじりながら縁側で日向ぼっこしてるもの、消費が早いから問題ないわよ」
「おまっ!なんでそれ知って…」
「あら?なにか問題でも?」
「プライバシーの侵害だ」
「別にいいでしょ、それとも何か問題でもあるのかしら?」
ウッ…それを言われると…
「あの…そういえば気になっていたのですが主殿と美作殿の関係性ってなんですか?」
「…それ聞く?」
「ええ、気になるので」
「…美作、教えてやれ」
「嫌よ、神永クンが言いなさい」
2人で問題を押し付けあっているとライダーはどんどん不機嫌になっていく、あのままだとおそらく…
『そんなに教えたくないのでしたら結構です』
と言って拗ねてしまう…!
意を決して俺が話すことにする
「…わかった、笑うなよ?」
「はい」
「俺と美作の関係は…俗に言う許嫁ってやつだ」
「…はい?」
「だから!俺と美作は許嫁、将来結婚するみたいなことになってんの!」
あ〜もう恥ずかしい、こんな時代錯誤な関係性とか言えるわけなかったのだ…
「なるほど、道理でおふたりの距離が近いわけですね」
聞いてきた本人はしれっとそう言い放ちお茶を啜る
「…そこまで驚かないんだな」
「まぁ私の頃はそういったことはよくありましたし」
「そうだった…ライダーはそんな貴族関係云々が盛んな頃の人だったわね」
「ええ、ですが今尚そのような事があるのですね」
「お家事情ってやつよ、こればっかりは仕方ないわ」
「俺の家はもう半分やめてるみたいな感じだからな 、入婿になっても問題ないからな」
ある意味win-winの関係なのだ、俺の家としては処分したいがもったいない礼装なんかがまだ蔵に残っている、ただ家の血が入ってないと使えない代物が多いため入婿なんかで相手の家に押し付けてしまおうという算段がある
「まぁ、魔術師ならよくある感じよ」
「なるほど…美作殿なら主殿を託しても問題なさそうですね」
「おまえ何目線だよ…」
「従者視点ですかね?主殿はなんというか、肝心なところで運が悪いですから」
「んなわけ…いや悪いわ」
冷静に考えたらこの聖杯戦争に巻き込まれたのも、学校でアサシンに襲われたのも運が悪いのだろう、多分
「ま、あくまで私たちが大学に進学あとの話よ、もしこの聖杯戦争で勝者になれば2人で時計塔に行くこともできるでしょうし」
「そうなったら俺はお前の弟子としていくからな?俺の才能なんざカスみたいなもんだろ」
「…そうね、"貴方"の才能はね」
「嫌味ったらしいなおい…」
そんな、くだらない話をしながらゆっくりと時間は流れて行った。
神永 side out