積極的に
黒庭勇者さん勇者様との冒険はいつもスリルがいっぱいです。その理由は単純明確で、勇者様が好奇心旺盛で元気がいっぱいだからです。
「水遣いっ、お宝見つけたよ!」
「あぁ、待ってください勇者様っ」
宝箱を見つけると即座にそれを開いて……
「はれ? なんだかあたまがふわふわー?」
罠に引っ掛かってしまうことも多いです。
「えっと、こういうときは治す呪文を……!」
「ふわふわマシュマロ、はっけーん!」
むにゅ。
「ひゃんっ」
混乱した勇者様が私のお胸を大胆に触ります。混乱してても行動力が高くて、その、困っちゃいます。
「しっかりしてくださいっ」
状態異常を治す魔法で元通りにすると、勇者様は照れた表情になりながら、私を見つめます。
「うぅ、失敗失敗」
「だ、大丈夫ですか? 勇者様」
「うん。……それにしても、水遣いのおっぱいって大きいんだね」
「ゆ、ゆゆ、ゆうしゃさま!?」
そのまま手が添えられていたことに気がつき、すっと身を引きます。なんていうか、恥ずかしいです。
どきどきした感覚が収まりません。なんていうか、触られて、むにってされて、その、少し興奮してしまったようです。
「顔赤いけど、大丈夫?」
「き、気にしないでくださいっ」
「なら、平気だねっ、冒険を続けよう!」
「次は気を付けてくださいねっ」
「うんっ」
それからなるべく油断しないように勇者様が敵を撃退しながらダンジョンを攻略していきます。
勇者様は実力者。人数制限があるような空間でも安定して戦える力があるのです。
「あれ、部屋がある、入ってみようよ水遣い」
「あぁ、手を引っ張らなくても」
「平気平気、私がいるんだもん」
時々、ぐいぐいしすぎて前のめりになってしまうこともありますが頼りになる勇者様です。勇者様に手を引かれて、私は白い部屋に入りました。
「あれ、なにもない?」
「外れの部屋なのでしょうか」
外に出ようとして扉を開けようとします。
ガチャガチャ。
今通った場所の扉は開きませんでした。施錠されてしまったみたいです。
「閉じ込められてしまいましたね」
「仕掛けを解けば平気なはずだよ。ほら、ここに紙がある」
「紙……」
そこにある内容を確認してみます。
『舌を絡ませるようなキスをしないと出られない部屋』
「ふぇっ!?」
その文章を見た瞬間、頭が真っ白になります。つまり、私と勇者様がキスをする? 同性同士で、甘いキスを?
想像しただけで、ドキドキしちゃいます。
「なるほどね、キス」
「ゆ、勇者様はいいんですか」
「へ? 水遣いのこと好きだからいいよ」
「あ、あわわ」
心の準備ができていないのは私だけみたいです。むずむずするような、そわそわするような感覚にどうすればいいのか悩んでしまいます。
「あっ、あそこにベッドがあるよ」
白い部屋に真っ白なベッド。まるで、致す為の部屋のようです。それを把握すると頭が真っ白になってしまいます。
「ねね、あそこで一緒にイチャイチャしようよ」
「いちゃいちゃ、ですか!?」
「今は二人きりだし、魔物もいないからね。ほら、いこいこ」
「ゆ、勇者様っ」
手を引っ張られて、そのままベッドまで運ばれていきます。そして、ブーツを脱がされて、ベットに運ばれてしまいました。
「あ、あぅ……」
「恥ずかしいの? 水遣い」
「だ、だってぇ」
「だって?」
「……どきどきしちゃいますから」
「それは私も同じだよ」
つーっと、私のふとももに指がなぞられます。
「ひゃあっ」
ブーツがないと見えてしまう部分が多いのもあって、それだけでびくっと反応してしまいます。
「水遣いは女性らしさいっぱいだし、甘く蕩けたらどんな感じになるか、気になってたんだよね」
そっと私の胸元にも手が添えられます。大胆な勇者様の行動に、どきどきが止まりません。心臓の音が高鳴っていきます。
「ふふっ、ばくばくだね」
「そ、その、本当にキス、するんですか?」
「舌を絡ませるやつ、するよ?」
「あぅぅ……」
恥ずかしくて、顔を背けます。
勇者様とキス。
まるで王子様とお姫様みたいです。今の私たちの場合、お姫様とお姫様かもしれませんが。と、とにかく、キスです。きす、きす……
「ファーストキス?」
「は、はい」
「私でもいい?」
「も、勿論です。勇者様なら……」
「じゃあ」
頬をそっと触りながら、勇者様が顔と顔を正面にして……
「ん……っ」
私に、大胆にキスをしました。
甘く蕩けるような、優しい唇。そして、優しく導くようにリードしてくれる勇者様。
「は、むっ」
私も、一生懸命勇者様と唇を合わせていきます。
すると、勇者様は次の行動に移りました。
「ん、あむっ、あむっ……」
舌を絡ませるキスに移っていったのです。
頭がひりひりします。
勇者様の唾液と私の唾液がまざりあってる。勇者様の舌が私の舌を突っつく度に力が抜けてふわふわになっていきます。
「ひゅうひゃ、ひゃま……♥️」
もっと勇者様を感じたい。
たっぷり、唾液をもらいたい。
そう思った私はぎゅっと身体を抱き締めて、勇者様を誘います。
それで、わかってくれたのか、身体と身体も重ね合ってさらに大胆なキスをしてくれました。
くるんと舌が私の舌を撫でて、喘ぎ声も聞こえて、勇者様がリードする。
身体もふわふわしてきました。
「ふふっ、とろけてるね」
「すき、ですから」
「私のこと?」
「だい、すきです」
とろんとした表情のまま、勇者様に抱きつきます。ただ、それだけで幸せでした。
「だったら、もっともっと、幸せにしてあげるね」
「もっと、導いてください……っ」
「じゃあ、いっぱい感じさせてあげる」
鍵のことも、もう関係ありません。今は勇者様のことだけで頭がいっぱいです。
積極的な勇者様、私のはじめてのキスを貰ってくれた勇者様、素敵な、私だけの勇者様。もう、頭が勇者様でいっぱいです。
……きゅん。
身体も疼いてしまっているみたいです。興奮も収まりそうにありません。
「いっぱい、導いてあげる」
「よろしく、おねがいします」
勇者様にリードされ続ける。それも素敵です。くいっと、身体を抱き寄せられながらキスをされる感覚はとても幸せで、この時間がずっと続いたらいいのに、と思っていました…