【エッチ注意】積もり積もれど白々しけり
サクラコの目の前にいる人は、妙なところで奥手で、勝手に相手に幻想を抱いて、彼女の想いを知りながらも踏み出してこなかった酷い人だ。さすがのサクラコも言いたいことの10や20はあった。
けれど、いざ実際に告白をされてしまうと、結局のところ、サクラコはただただ嬉しかった。
「……レン、その……」
レンもここにきて逃げるのを止め、漸く責任を果たさんとしていた。
「今夜は帰りたくありません。………いい、ですか?」
「もう……。言わせないで……ください……」
サクラコは頬を染め、涙を湛えながらはにかんだ。
「では、まず……えっと……」
「……まず、バスタオルを敷きましょう。その……私の、部屋ですから」
もぞもぞしながら服を脱ごうとするレンに、サクラコが彼女らしい生真面目な提案をする。
「あ、はい……!」
レンは同意し、一人用のベッドに薄桃色のバスタオルが広げられた。
「……で、では。その、服が汚れても、いけませんから………」
歯切れの悪いレン。
「………」
そんなレンの言いたいことは分かっていたがサクラコが何も動かないのは、レンを尊重しているのだろうか。それともレンに言って欲しいのだろうか。
「……脱ぎましょう、その………全部…………です」
「………はい」
「じゃ、じゃあ私はあっち向いてますので!」
レンはサクラコに背を向け意を決して服を脱ぎ始める。
背を向けなければ意を決せない辺りが彼の若さであり、そしてまたサクラコもレンに背を向けなければ生まれたままの姿にはなれなかった。
「……終わりました。そちらは?」
後から脱ぎ始めたサクラコが背中合わせのレンに問いかける。
「……はい、終わりました。その、せーの、で向かい合いましょう」
「分かりました」
レンは一息ついて
「せーの!」
レンの掛け声に合わせ、2人は生まれあった姿のまま向き合う。
サクラコの肌は白磁の様に美しく、しかし頬にさす赤みは彼女の人間性を象徴していた。
レンの薄い胸板と僅かに浮き出た肋骨はその顔立ちや髪形からすれば倒錯的であった。
「……綺麗………」
敬語も忘れレンが呟く。
「……貴方こそ」
二人は半歩ずつ歩み寄り、レンは少しサクラコを見上げ、サクラコはわずかに俯いた。
「んっ……」
二人の唇が重なる。
「ちゅっ……んっ……」
一度。離れてもう一度。
「ん……ぷぁ……」
「はぁ……んちゅ……」
何方ともなく舌を絡め合い、口内を味わい合う。
「ん……ぷぁ………はふぅ…………」
互いの口元が互いの唾液塗れになったころ、ようやく2人は離れる。
唾液が2人の唇をつなぐ透明な糸となり、ポツリと切れた。
「……サクラコ、私、もう我慢できません…………避妊具は、ありますか……?」
ここはムードをぶち壊したレンを責めるのではなく、流されなかったレンを褒めるべきだろう。
「………ふふっ。はい」
サクラコもそれを理解し、収納の一角からコンドームを取り出す。
"思いあう二人が正しい性知識の元愛し合うことは健全である"──二人の仲を思い遣るミネ団長からの彼女らしい贈り物だ。
「それにしても……ふふっ。レンもなかなか悪い子ですね……」
避妊具をあくせくしながら装着するレンを、サクラコがクスクスと笑う。
「避妊するなんて………これからすることは、ただ気持ちよくなるために?」
「なっ///!?違います!これは……愛を確かめ合うんです!!私と、サクラコの!!」
「……ふふっ」
サクラコをよく知るものが見たら卒倒するかもしれない程度には意地の悪い問いかけであり、欲の深い確認であった。
「もうっ……!」
レンもそのことには気づき、"お返し"とばかりにサクラコをバスタオルの魅かれたベッドの上に押し倒す。仰向けになったサクラコの足の間にレンが入り、覆いかぶさるようになった格好、つまりは正常位の姿勢だ。
レンの男性器がサクラコの女性器に触れる。
くちゅり。
「……リラックス、できていますか?」
レンがサクラコに問いかける。緊張で膣のうるおい不足になるという情報をどこからカレンは入手していた。
「…………どうでしょうか。胸は高鳴っていますから……確認してくださいますか?」
「か、確認って……?」
「手を当てて、ほら……」
サクラコは自分の胸に手を当て撫でる。サクラコの胸は滑らかに形を変える。
「……ど、どこでそんなこと……」
レンは生唾を飲み込み、おずおずと片手を伸ばす。
因みにサクラコにこんなことを教えた人物に、レンには心当たりがあったがこの場で他人の名前を出すほど愚かでもなければ余裕もなかった。
「し、失礼します……」
ふにっ。
「んっ……分かりますか……?」
「す、すごくドキドキしてます………私の方が……」
「ふふ……それは良かったです……」
「サクラコ、ごめんなさい……もう、我慢できません……」
顔を真っ赤にするレン。男性器は天を仰いで硬直していた。
「………ええ、来てください……」
「はい……!」
じゅぷっ……
「んっ……」
「サクラコ……」
挿入したままの姿勢で固まりレンは身を案じる。
「……ありがとうございます」
「予習はしてきましたから……」
「もう、レンのえっち……」
顔を顰めるレン。もちろん獣性を抑え込むのに苦労してのことだ。
「大丈夫そうですね……少しずつ、動かします、から」
「はい……」
まずはサクラコの膣の浅いところをマッサージするようにレンは腰を動かしていく。
2人の吐息と水音だけが部屋に広がり消えていく。
やがて、二人はまた唇を合わせる。
ちゅ、ちゅく……じゅる……ぷぁ……ちゅ……
もう言葉は要らなかった。
サクラコの純潔をレンが散らす。
二人の結合部から溢れる体液に赤いものが混じる。
「ぷはぁっ……サクラコっ……サクラコっ!」
「はあっ……んっ、あっ、あぁっ……!」
いつの間にか水音はパン、パン、パンと腰を打ち付ける音に代わり、
レンの男性器とサクラコは限界近く震えていた。
「サクラコ、愛してます……好きです!大好きです!!」
「レンっ、レンっ!私もっ、ですっ……!あ、あぁぁっ……!」
サクラコはレンを抱きしめ、レンがはサクラコの最奥に突き入れる。
「「~~~~~~~!!」」
二人は同時に絶頂した。
それから数分、互いに息が整ってきたころ。
「……サクラコ……大丈夫ですか……?」
繋がったままレンが話しかける。
「………いえ、幸せです」
「そうですか……良かった」
レンは安心したように男性器を引き抜き…
「んっ……」
コンドームの先に溜まった精液の量に思わず苦笑する。
「………ありがとう、サクラコ……うん?んっ……!?」
起き上がったサクラコが古いコンドームをはずし、新しいコンドームを装着させる。
「さ、サクひゃあっ!?」
サクラコの白く美しい指がレンの乳首を弾いていた。
「……幸せとは与え、与えられるものだと、そうは思いませんか?」
かり、かり、かり……
「それは、そう、んんっ……ですけどっ……まさかっ……!?」
「……きっと想像の通りですよ、レン」
2年間待たせた代償は、それなりには重かったということなのかもしれない。