種火

種火


無駄に長文です。

誤字脱字はご容赦くだされ

歴史赤点スレスレ人間がふわっと知識で書きました




「ふむ、地右衛門とやら。歳はいくつだ?」

「…たぶん、十三か十四になります、お侍さま」

検分するように男が地右衛門の頭から足元までジロジロと無遠慮に見る。その視線に居心地悪くなり、地右衛門は着物の裾をぎゅっと握りしめた。

「たぶんというのは?」

「この子が幼い時、戦の巻き添えで村が焼かれたらしくて、歳がはっきりわからないのでございます」

地右衛門のかわりに茶屋の女将が答えた。

半年程前、地右衛門がこの茶屋に雑用として拾われたときにした身の上話だ。

「地右衛門は読み書きも計算もできますし、このとおり器量も悪くないですから、いかがでしょうか、旦那さま」

「…そうだな、では屋敷に来てもらうかな。よいか、地右衛門」

「はい、お侍さま」


茶屋の女将に、上客の一人が屋敷の雑用係を探しているようだから奉公してみないかと言われたのは昨夜のことだった。

島原を出て数年、久方ぶりに穏やかな日々を過ごしていたが、神は地右衛門に安寧を認めてはくれないらしい。

連れていかれた侍の屋敷でまず最初に身体を洗われ、案内されたのは屋敷の主の寝所だった。

(なにが雑用だ。最初から玩具にするつもりで探していたんだろうが)

茶屋で会った時から、侍はずっと地右衛門をそういう目で品定めしていた。

女将は純粋に、地右衛門にもっといい暮らしをと思って斡旋してくれたのだろう。

「地右衛門」

主が質の良さそうな寝具の上で胡座をかき、盃を片手に手招きする。

「旦那さま、失礼いたします…」

内心舌を出しながら、地右衛門は主の望む少年を演じた。品があり従順で、そしていかようにも扱える帰る場所のない子供。

(この下衆野郎は、そういうガキを慰みものにしては使い捨ててきたんだろうよ)

辟易すると思いつつも表情には出さず、柔らかな敷布におずおずとあがってみせる。

男は杯を置き、地右衛門の腰を抱きよせ着物の袷を開き小さな胸の飾りを吸い上げた。

「あぅ…ッ…旦那さま、何を…」

「ウブなふりも可愛らしいが、初めてではなかろう?この身体は男に慣れている身体だ」

耳元で囁かれ、ぞくりと悪寒がはしる。

男の手が着物の裾から入り込み、まろい尻を撫で上げた。息を詰める地右衛門の姿に嗜虐的な笑みを浮かべる。指が後孔の縁をくるくるとなぞった。

「何をされるかわかっていて、湯殿で用意をしてきたな?柔らかくなっている…すぐにでも入れられそうだ…」

笑いながら、つぷりと地右衛門の孔に指を差し込んできた。何度経験しても慣れない感覚に身を震わせ、地右衛門は目をつむる。

一本の指がすぐに二本、三本と増やされ、中でバラバラと拡げるように蠢く。

ただ痛くて苦しい行為だが、息を荒げ目の前の男にすがり付けば、相手は喜んで無駄な前戯をやめさっさと突っ込んでくるものだ。

目の前の男もごくりと喉を鳴らし、嬉しそうに笑った。指を引き抜き、地右衛門を寝かせるといきり立つ自身を取り出し後孔にあてがう。

「旦那さま…お慈悲を…」

泪目で男を見上げる。茶屋でみた時とは別人のような獣じみた男の顔に、これは手酷くされるなと、地右衛門は小さく嗤った。




ぱち、と目を開けて、自分が男の腕のなかで微睡んでいたことに気が付き、地右衛門は小さく舌打ちをした。

身体中が痛むうえに、胸や腕に噛み跡がいくつもある。体は清められているが裸のままで落ち着かず、脱ぎ捨てられた着物に手を伸ばした。

「……どこへいく、地右衛門」

男が目を覚まし、地右衛門を再び腕の中に引き戻す。太もものあたりに少し固くなり始めたモノが当たって悪寒が走った。

「あの、着物を…」

「まだよいではないか」

男の唇がせまってきて、地右衛門は思わず顔を反らした。ふと床の間に飾られた刀が目にはいった。田舎侍が持つにしては、不似合いな程立派なものに感じる。

地右衛門の視線に気が付いたのか、男が自慢げに笑った。

「ああ、刀が怖いか?珍しいか?」

「…少し怖いです…」

「あれはな、その昔戦の働きに対する報酬として上官より賜ったものだ」

「戦…」

「何年前だったか、ここから南、島原の戦いに馳せ参じて…」

地右衛門の体が強ばる。心臓が早鐘のように激しくなり、指が震えた。

「どうかしたか、地右衛門」

「戦の話は、少し怖いです…」

震える声を怯えからと信じたのか、男は優しく地右衛門を抱き締めた。

「そういえば地右衛門も戦で故郷を離れたのだったか。怖いことを思い出させてすまなかった。」

「いえ…」

男が顔を再び寄せてくるのを、今度は大人しく受け入れる。

だんだんと熱を持ち始めたモノを腹に押し付けられながら、地右衛門は気付かれないように嗤った。

胸の奥で燻る火種が、音を立てて業火にかわる。


(せいぜい今を楽しめよ外道…終われば何もかも、燃やし尽くしてやる…!)





茶屋の女将が屋敷の主が焼け死んだと知ったのは、地右衛門を見送ってから一月ほど経ってからだった。

火傷を負いながら助け出された少年が、「床の間の刀が突然燃えだした」と話していたそうだが、真偽はわからないまま少年は姿を消したという。

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