私を救った手(太陽)

私を救った手(太陽)


私はバカだ…!

ナミは誰もいなくなったココヤシ村の大通りでへたり込んでいた。




一年前にフーシャ村から旅立って初めて自分の育て親の故郷を見て愕然とした。魚人と呼ばれる種族の海賊団に村を占拠され非道が続き、なぜか海軍も動かず放置されてる有様だった。それを見ながらブルブルと血が出るほど握り拳をするナミは10年前のことを思い出す。

テーブルに置かれた手紙を前に項垂れて頭を抱えて座るベルメールの姿を…

そして旅立ちの準備の際にその手紙を見つけたことを…

村が襲われたことそして子供のことを考えてバカな真似はするなと母となったベルメールのために自制を促す内容の手紙を…

ナミは自分たちが母の重荷になっていたのではとその夜思い悩んだ。

そして、独り立ちをし、実際に母の故郷を見て、我慢できるわけがなかった。きっと自分の幼馴染たちもこれを見たら同じことを考えたはずだ。

そしてナミは、行動した。母の故郷を海賊たちから取り戻すために。

近場の海賊たちから宝や海図を奪い、それらを魚人海賊団に献上して彼らに取り入って仲間になり、自分の功績を認めさせ幹部にまで上り詰めた。海賊相手の泥棒は危険を伴いある時は知り合った同じ新米の女怪盗と共に捕まって殺されかかったこともあった。それでも、ナミは実績を残し彼らにどんどん取り入った。

そして、その裏で海軍の大佐と手を結び、彼らの情報を流し続けた。

これで海軍が動けば、もし海軍の英雄であるガープさんの耳に入れば、村は救われる!

そう信じて危険な活動を続け、ついに民間人救出のために軍艦が派遣されるまでこじつけた。


「決行は3日後よ…頼んだわよ?」

「ああ任せろあとは我々海軍の仕事だ。」

ナミはその言葉を信じて海軍が指定した密会場所から出て行った。











「チチチチ…おい、基地にこのプリンプリン准将の予定座標を送れ。平文でな…」

「は?しかしそれでは盗聴の恐れが…」

「構わん。」



裏切りに気づいたときには手遅れだった。海軍の軍艦は待ち伏せしていた幹部たちに沈められ、自分も裏切り者として殺されかけ傷を負いながらもなんとか村に辿り着き、子供たちが独り立ちした後、村の抵抗運動に参加するためにやってきたベルメールと再開したが突然やってきた海兵たちと裏切り者の大佐に海軍の情報を売ったと身に覚えのない罪を着せられその場で口封じされかけ、咄嗟に彼らの銃撃からナミを庇ったベルメールは腕に怪我をした。

口封じが失敗して海兵たちが逃げ出した後、村人たちは絶望していた。そして、もう耐えられないと武器をとって立ち上がり出した。頼みの綱の海軍にも裏切られたのがトドメになったのだ。それはナミ自身が引き金を引いたのも同然だった。

必死に止めようと立ち塞がるも、怪我の手当てを終えたベルメールに抱きしめられ、今すぐフーシャ村に逃げるよう言われた。ベルメールは抱きしめたまま語る。

ナミが手紙を見たことを知っていたことを…

自分の代わりに村を救おうとしていたことを…

もしものためにフーシャ村の人たちやガープには頼んであるから頼りなさいとも語る…

母は全て知っていたのだ。

そして娘たちのことを重荷なんて思わず心から愛していることを知った…

そして母や村人たちがたとえ自分たちが死ぬことになっても未来の希望である娘たちを守るつもりなのも…

それに気づいたナミは衝動的に、ベルメールにナイフを向ける。

ここで止めなきゃ…みんな死んじゃう…⁉︎

だが、ベルメールは黙って傷つくことも気にせず刃先を握る。

「そこを退きなさいナミ!」

ベルメールの怒声にナミはナイフを離してたじろぎ、その場にへたり込んだ。

「ナミ、ノジコにも伝えて…『大好き』って…!」

そして、ベルメールを筆頭に村人は斧や鍬など武器になるものを手に取ってアーロンパークへと死出の旅を開始した。




シャハハハハハハハ!




一人残されたナミに憎いあの男の嘲笑が聞こえた気がした。


「アーロン…!」

ギリッ…

ナミは憎々しげに自分の肩を握りしめる。魚人海賊団に入団する条件忠誠の証として刻まれた印。刻まれている最中薄汚いものに犯されたような嫌悪感に耐えながら信用を勝ち取るために刻んだ彼らのマーク。

「…ッ⁉︎アーロン!アーロン!」

ザシュッガリッ!

突然ナミは狂ったように自分の肩に刻まれたマークにナイフを突き立てる。

ナミは悔しかった。

「アーロン…!」

自分の浅はかな考えで母や村人たちを死地に追い込んだことを…

「アーロン…!!」

本心を隠すために、家族の問題に巻き込まないために、大切な幼馴染にひどい言葉を投げつけたことを…

「アーロ…!」

ガッ!

突然肩にナイフを突き立てていた手が動かなくなる。

振り返ると、そこには身に覚えがある麦わら帽子を被った少年が…自分が散々裏切った幼馴染がそこにいた。


「ルフィ…?なによ…何も知らないくせに…!」

「うん、知らねぇ。」

「あんたには関係ないから…!島から出てけって言ったでしょうが…!出てけぇ…!」

「ああ、言われた。」










「…………ルフィ」




助けて…




「当たり前だ!!!!」


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