私の親友
「ひぐっ、うぇっ、うっ」
死臭の漂う街の中、ある家の部屋の中で一人の少女が泣いていた。
(私だ……)
少女は、物心がついた時から自分に特異な力があることを理解していた。
物の怪が見え、不思議な力も使える。
それは何も悪いことばかりでは無い。
走るのは早くなるし『自分にしか見えない友達』も出来た。
そんな少女だからこそ理解してしまう。
(私が……殺したんだ……)
家の中の、周りの、そしてこの街の人たちを殺したのは、自分の力だと。
自分と同質の力によって死んだのだと。
『……蘇我ちゃん?』
窓から、一人の少年が入って来る。
「鏖……華?」
この街で生き残っているのは、その少年と蘇我だけだった。
『どうしたの?気分が悪いの?最近いつもの公園に来てくれないけど……』
蘇我の元に近付く。
「鏖華……私、ダメなの……全部、私が……壊しちゃって……隣の家のおじさんも、水族館の館長さんも、公園で遊んでくれてたお姉さんも……私が」
なんとか絞り出した声を聞いて、鏖華は近寄る。
『大変だね……でも大丈夫。君は輝いてるから』
『どんな人よりも輝いてる。太陽ってやつだよ。君は、ずっと、一生光っていられる人間だから。このことは気に病まなくていいよ。君が無事で良かった』
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「懐かしいよね。確かあっちにある公園でしょ?僕らが最初に会ったの」
鏖華が廃墟となった家の上で指を指す。
「二十年って長いよね。人が住みつかなければ、二・三十年で家は瓦礫になる。それに」
顔を蘇我の方に向ける。
「君も随分変わった」
少女は、二十年前泣いていた頃とは別人だった。
「鏖華は変わらないよね。二十年前から、ずっと」
少女も、家も、街も
何もかもが変わったこの場所で、ただ一人、鏖華だけが二十年前から変わらない。
(これは、精算だ)
二十年前に自分が犯した罪の
自分にしか見えなかった友人との
「周りは気にしなくて良いよ。この結界で生き残ってるのは僕達だけだから」
「そう、安心したよ……それじゃあ」
泳者情報をちらりと見ると、すぐに蘇我は向き直る。
「ここで終わりにしよう、鏖華」
「僕はまだまだ続けたいんだけどね、蘇我ちゃん」